本教材の概要
研修員受入事業(主に課題別研修、青年研修、国別研修)にかかわる関係者向けに、研修員の主体的な学びを促すためのポイントを「ファシリテーション」の観点からまとめました。本教材にまとめられている留意点や手法は、研修事業を実施する上で大変有用ですので、ぜひ活用いただければと存じます。
教材の主なポイントは以下のとおりです。
1.学びの主体は研修員自身
- 「研修員主体の学びを生み出す」ことこそが、研修の大原則であり、成功のカギ
- ファシリテーションの最大の目的は、当事者が自ら「見つける」あるいは「気付く」ことを促す
- 行動変化に最も重要な条件は、「問題の内的な要因」を「自身で発見する=気づく」こと
- それを促すのがファシリテーションであり、「教えたり」「導いたり」するのではなく、「促す」
2.講義にあたって
- 研修員がどんな課題に直面しているのか課題を明確にする
- 研修員自身の体験を語ってもらったり、研修員同士で話し合ったりする場を作る
- 「教えたことが全て学ばれるわけではない」⇒メッセージを明確にする
3.講義における手法
- 集中して聴ける時間は45分が限度⇒質疑応答を頻繁に
- グループ討議で質問を考えてもらう
- 講師の側から質問する
- できるだけ具体例を語る/画像映像も効果的
- 視察や実習と組み合わせる→まず見る/やってみる
- ワークショップと組み合わせる
- 通訳が入る場合は短く切って話す
- 読み上げ原稿は極力避け、パワーポイントでも長い文章を見せない
研修の講義の際のポイント
研修の目的は、研修で学んだことが現場で実践されることです。そのような研修にするためには、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。
1.研修の目的
「教える」というのは「説明する」ことは違います。また、伝えたからといって、相手が学んだとは限りません。研修の目的は「説明する」「伝える」ことではなく、「学び、実践される」ことです。講義に当たっては「伝える」ことではなく、「伝わる/学ぶ、実践につながる」ことに主軸をおくことが大切です。
教える < 伝える < 伝わる/学ぶ < 実践につながる
2.研修の主役は研修員自身
研修で学んだことが実践されるためには、研修員が講義を受け身の姿勢で聞くよりも、能動的に学びに関わり、「自ら学ぶ」ことが大切です。研修の主役は講師ではなく研修員自身です。研修員自身が課題を発見し、解決策を考えることで、帰国後の実践につながります。研修員が主体的に学ぶ講義を実施することが期待されています。
3.相手が知りたいことを話す
現場で実践されるには、まずは学びが重要です。しかし、人は自分が関心のあることしか見聞きしないという特性があります。したがって、自分が伝えたいことだけを話しても相手には伝わりません。相手が知りたいことを話すことが大切です。
そのためには、JICA担当者・研修委託先担当者と事前打ち合わせを実施し、研修員の関心事項、抱えている課題、起こしたい変化などを確認するようにしましょう。
4.メッセージを明確にする
教えたことが全て学ばれるわけではありません。何を伝えたいのかメッセージを明確にして、伝えたいことを絞り込むことが大切です。「全てを伝えたい」と色々と情報を詰め込むと、結果的に何も印象に残らない講義になってしまいます。大切なのは「伝える」ことではなく「伝わる」ことです。
5.「伝わる/学ぶ」ために「伝える」
研修は説明会ではありません。したがって、読み上げ原稿を作成し、原稿を読み上げる講義は極力避けるようにしましょう。単調に原稿を読み上げるだけの講義は、講義のポイントが研修員に伝わりづらいです。研修員の表情を見ながら、ポイントを押さえつつ、講義の内容を伝えることが大切です。また、パワーポイントに長文を書き読み上げることも、講義のポイントが伝わりづらいので、避けるようにしましょう。
6.双方向の講義を目指す
研修員が主体的に学ぶには、講師と研修員、研修員同士の双方向のコミュニケーションが非常に重要です。講師が一方的に話をする講義では研修員は受け身となり、主体的な学びにはなりません。したがって、講師から質問を投げかける、研修員が発言する機会を多く作る、グループ討議やワークショップを組み合わせるなど、研修員が自らの経験や考えを発言できるように講義を進行するようにしましょう。
なお、前半20分は講義で受け身、後半20分はワークショップで主体的とするのではなく、講義の部分においても、研修員の経験・意見を話してもらうなど主体的に参加してもらう工夫が必要です。
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