復興後の経済発展で豊かな国づくりを

2019年4月2日

日本で発電所を視察する「電力開発計画策定能力向上プロジェクト」の関係者。経済成長に貢献するプロジェクトとして期待されている

アフリカ南西部に位置し大西洋に面するアンゴラでは、1961年から2002年まで独立戦争と内戦が続き、これらは国土の荒廃と人材の流出など国の発展を妨げる大きな爪痕を残しました。しかし元来同国は、長い海岸線と広大な国土を持つ豊かな国で、石油やダイヤモンドなどの天然資源にも恵まれ、内戦終結後は順調な経済発展を遂げてきています。
JICAは内戦後の復興期を経て経済発展期に入ったアンゴラの持続可能な成長を支援しています。例えば、産業の多角化を目的とした経済開発に貢献する「電力開発計画策定能力向上プロジェクト」や、保健の分野で人間の安全保障を支える「母子健康手帳を通じた母子保健サービス向上プロジェクト」などがその代表格。
また、バランスのとれた成長に欠かせない一次産業の発展に向け、肥沃(ひよく)な国土や豊かな水資源を生かした稲作栽培を支援するほか、輸出入を担う港湾の整備も行っています。加えて、日本や外国でJICAの研修を受け帰国した元研修員が、研修の成果を自国に還元する社会貢献活動を展開し、多くの人々から高い評価を受けています。

脱石油依存を後押し

順調な経済回復をうかがわせる首都ルアンダ。第一次産業の回復を図るなど、バランスの取れた成長を目指している

アンゴラでは1975年の独立後27年間にも及んだ内戦が2002年に終息し、2014年ごろまでは毎年10パーセント近い順調な経済成長を続けていました。しかし、成長をリードしてきた原油価格の下落とともに、経済も低迷するようになりました。そのため政府は、石油に依存した経済からの脱却を目指し、もともと盛んだった農業、漁業の回復や石油以外の資源の開発など、多角的な発展を目指しています。

JICAは、こうした状況を踏まえ、「産業多角化を目的とした経済開発支援」「多様な人材育成」「人間の安全保障」の三つの分野を重点的に支援しています。これらは2016年に開催されたTICAD VIで日本が表明した支援の優先分野「経済の多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進」「質の高い生活のための強靱な保健システム促進」にも該当するものです。

電力分野支援には他ドナーも注目

プロジェクトで作成したマスタープランがJICA産業政策・公共開発部長(左)からアンゴラ水・エネルギー省大臣(右)に手渡された

アンゴラの基礎インフラ分野は内戦による崩壊からの再建途上にありますが、2014年以降は経済の低迷による財政的な行き詰まりから、なかなか思うようには進んでないのが現状です。特に経済発展にも国民の生活にも直結する電力分野で、JICAは「電力開発計画策定能力向上プロジェクト」を実施。電源・基幹送電網を対象としたアンゴラの電力マスタープランを策定するなど、電力の安定供給の実現に向けた協力を展開しています。

アンゴラの経済、社会、環境の状況を反映した包括的な分析を基に作られたこのマスタープランは、アンゴラ全土を対象とした2040年までの電力開発計画で、2018年12月に完成しアンゴラ政府に提出されました。マスタープランは、国家計画として承認される予定で、今後のアンゴラにおける電力開発の方向性を示すものとして、国連諸機関、世界銀行、アフリカ開発銀行など、日本以外のドナーからも注目を集めています。

「アンゴラ仕様」の母子手帳を普及

アンゴラでは、長期にわたる内戦の影響で保健システムが崩壊し、2010年前後には妊産婦の死亡率は日本の10倍、5歳未満の乳幼児の死亡率は世界ワースト8位と、母子の健康状態は非常に深刻な状況にありました。そこで2014年にJICAが導入したのが、日本でもおなじみの「母子健康手帳」(母子手帳)でした。JICAは、導入の成果を定着させるため、2017年に「母子健康手帳を通じた母子保健サービス向上プロジェクト」を開始。現在二つのモデル州で普及活動に取り組んでいます。

配布中の母子手帳は、日本とアンゴラ保健省だけでなく、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(ユニセフ)、 国連人口基金(UNFPA)などと共にアイデアを出し合って作成したもので、現在欧州連合(EU)がアンゴラで実施している保健プロジェクトでも使われています。

アンゴラと同じポルトガル語圏のモザンビークでもこの手帳が注目されたことで、アンゴラとモザンビークとの間で情報や人材の交流が生まれています。

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研修の成果を生かして社会貢献

日本や外国でJICAの研修を終えて帰国した元研修員が2013年に立ち上げたアンゴラ帰国研修員同窓会(ABJA)。約300人の会員が、毎年、教育、環境、保健など幅広い分野でセミナーやワークショップを開催し、研修で得た知識や経験を母国に還元しています。

2014年度から2018年度まで5年連続で開催している「医療メンテナンスキャラバン」は、医療機器保守・整備の研修を受けた元研修員15人がチームを組み、5日間にわたり全国の保健所で医療器材の修理を行うものです。メンテナンスを受けた保健所のスタッフからの評価も高く、テレビなどのマスコミでも取り上げられました。2018年度には、このほか、ごみの分別などを紹介する環境管理セミナーも開催し、リサイクルなどについて紹介しました。

元JICA研修員たちのこうした地道な取り組みは持続可能な開発目標(SDGs)とも連動し、種々のプロジェクトとともに、アンゴラ国内に深く広く浸透しています。