- トップページ
- アフリカひろば
- TICAD7に向けた各国における取り組み
- 物流立国への道を並走
アフリカ南西部に位置するナミビアは、1990年に南アフリカから独立したアフリカで2番目に若い独立国家です。国名の由来であり世界自然遺産にも登録された大西洋岸のナミブ砂漠をはじめ、国土の約4割が国立公園や自然保護区に指定されており、太古からの雄大な自然が広がっています。
また、南アフリカと並ぶアフリカのラグビー国としても知られています。今年9月に日本で開催されるワールドカップに、ナミビア代表は6大会連続で出場します。
ナミビアの首都ウイントフック
日本の約2倍の国土に人口約260万人と世界で最も人口密度が低い国の一つであるナミビアは、ダイヤモンドやウランなどの地下資源に恵まれ、国民の平均所得は5,000ドルと高中所得国に位置付けられています。しかし豊かな富裕層と、高い失業率に苦しむ大多数の貧困層とに二分化されているのが現状です。
鉱物資源に依存するナミビアの産業構造を発展させることで、国内の経済格差を解消しようと、JICAはナミビアの立地を生かした「物流立国構想」を提言し、継続した協力を行なっています。また、ボランティアによる教育現場支援も積極的に進めています。
ソフト面の支援国・日本への期待
2007年に来日したポハンバ・ナミビア大統領(当時)は、緒方貞子JICA理事長(当時)と会談し、日本に対して資金協力よりも国家開発への戦略的な助言を求めると話しました。
早速JICA内に設置されたタスクフォースからは、ナミビアの物流インフラを整備し、南部アフリカ地域のハブとなることで国内の産業振興や雇用創出を実現し、ひいては地域全体の経済成長につなげるという「物流立国構想」が提言されました。この提言は、JICAによって「ナミビア国際物流ハブ構築マスタープラン」(2013年〜2014年)、「ナミビア国際物流ハブ構築促進プロジェクト」(2016年〜2019年)へとつながっています。
国際ハブ港として整備が進むウォルビスベイ港では新しいコンテナターミナルが完成に近づいている
物流インフラを整え地域経済を活性化するというアプローチは、2013年に開催された第5回アフリカ開発会議(TICADⅤ)や2016年に開催された同TICADⅥで提唱された開発方針を先取りするものです。また、このナミビア国際物流ハブ構築マスタープランはナミビアの国家開発計画に反映され、JICAのマスタープランが国家開発計画に反映された代表的な事例の一つになっています。
物流立国を後押し
大西洋に面するウォルビスベイ港は、欧州、米州へアクセスしやすい天然の良港であり、貨物の積み替え港として栄えてきました。現在、2020年の運用を目指してコンテナターミナルの拡張工事が進んでおり、完成すればアフリカ西岸随一の大型コンテナ船の 寄港地となります。
ウォルビス・ベイを南部アフリカ地域のハブとするためには、内陸地域との間の道路・鉄道のインフラ整備や民間事業者との連携が欠かせません。JICAは2016年に技術プロジェクトを開始し、専門家を派遣。ナミビア国内、周辺国とも意見交換を行いながら、実施体制や枠組みの整備、関連プロジェクトの具体化案づくり,国際機関や他ドナーによる支援活用の推進、民間企業に対する誘致などさまざまな面でサポートを行いました。
国際ハブ港として整備が進むウォルビスベイ港
その成果は着実に表れています。内陸国との間の物流は増加しており、大手自動車メーカーがウォルビスベイで地域拠点工場を操業するなど、民間企業からの注目も集まっています。
JICAの技術プロジェクトは今年2月上旬に終了しましたが、日本の支援はナミビア政府に高く評価され、物流立国戦略は引き続いて国家プロジェクトとして進められています。
全国算数大会に参加
ナミビアの物流立国構想には、国内の産業振興も含まれます。既存産業の高付加価値化、新産業振興には、質の高い人材育成が不可欠であり、特に理数科教育や技術教育の強化が求められています。JICAは、「ABEイニシアティブ」(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ)などさまざまな人材育成支援を行っていますが、その中でも基盤となる初等・中等教育の現場に、海外協力隊を継続して派遣しています。
ナミビアの教育現場で活動する4名の協力隊員は、2018年5月にナミビア教育省主催の第13回全国算数大会に国内の約300名の教員や教育関係者とともに参加し、算数の模擬授業を発表しました。
全国算数大会で模擬授業を行う大島隊員
参加者の一人、大島隊員は、ナミビア北部のブンヤ村で小学校4年生の理科と5年生の算数を担当しています。模擬授業では、普段の授業で取り入れているゲーム教材や机間巡回による指導などを実演。「自分なりに試行錯誤してきたことをナミビアの先生方に紹介し大きな反響をいただけたことは、大変嬉しく励みになった」と語っています。
JICAは来年以降もこの大会に参加する予定で、ナミビアの教育現場のレベルアップに向けて支援を続けていきます。
半乾燥地に適した農法を
乾燥地帯が広がるナミビアでは、干ばつと雨期の洪水という不安定な水環境が食糧確保の障害となっています。特に人口の約3分の2を占める北部地域の小規模農家は貧困に苦しみ、ナミビアの経済格差の大きな原因となっています。
ナミビアの水環境に強い農法を考案しようと、JICAは2012年から「半乾燥地の水環境保全を目指した洪水‐干ばつ対応農法の提案プロジェクト」をスタート。ナミビア大学農・自然科学部に専門家を派遣し、新規導入した洪水耐水性の高いイネと現地の主食である耐乾性のあるヒエを混植し、 洪水年でも干ばつ年でも対応が可能な農法の開発実験を行いました。また、ナミビア大学とともに農民に対するワークショップを開催して農具の使い方やメンテナンスの講習を行ったり、フィールドデイと称し大学周辺の農民を招いてプロジェクトの説明を行ったりと、さまざまな取り組みを行いました。2017年10月には同学部初主催の国際会議に国内外から多くの関係者が集まるなど、JICAの技術協力プロジェクトが終了した後もその成果が引き継がれています。
ナミビア大学の圃場での田植えの様子
JICAは、今後もナミビア北部農業開発支援を行うべく、マスタープラン策定調査、課題別研修などを進めています。
scroll