紛争後の国の再建・復興を支援

2019年5月10日

人々の生活はコンゴ河と森の豊かな自然の恵みに支えられている

国土面積は日本の6倍もありアフリカ大陸第2位、人口は約8千万人と同4位、そして9カ国と国境を接し、アフリカ大陸の中心部に位置する大国、コンゴ民主共和国。弧を描くように流域面積世界第2位のコンゴ河が流れ、国土の多くは熱帯雨林に覆われ、ボノボやオカピなどの固有種が多く生息する生物多様性の宝庫でもあります。
コバルトやタンタル、銅、ダイヤモンドなどの世界屈指の埋蔵量を誇る資源大国ですが、それ故、1960年の独立時から諸外国の介入を受け、さらには1990年代には近隣諸国が同国東部の資源利権を奪い合うコンゴ大戦も発生しました。この紛争では実に500万人以上の犠牲者が生まれ、極めて深刻な人道危機に陥りました。激しかった争いも2002年に和平合意が結ばれ一応の終息を迎えましたが、国の再建の道のりは険しく、安定と持続的な発展のためには、まだまだ解決すべき多くの課題を抱えています。
JICAはコンゴ民主共和国の再建・復興に向け、インフラ整備、職業訓練、保健行政、森林保全・気候変動対策、警察改革の5分野で協力を行っています。これらはいずれも、2016年に開催されたTICAD VIで日本が表明した支援の優先分野でもあります。

アフリカ最大の人口規模が見込まれる首都の交通機能改善に協力

キンシャサの都市交通計画作成のための現地調査

コンゴ民主共和国の首都キンシャサの人口は、すでに東京都区部を上回る1千万人超に達しています。今後も急速な都市化が進み、2030年には2千万人に、そして2050年には人口規模でアフリカ最大の都市になるといわれています。

JICAはキンシャサ市の中心部と空港を結ぶ幹線道路の一つ「ポワ・ルー通り」を整備しましたが、そのときの道路整備の質や施工時の交通渋滞を防ぐ手法が現地で高く評価され、2016年に通りの名前が「コンゴ・日本大通り」に改称されました。「コンゴ・日本大通り」は、1970から80年代に日本の協力で整備された、コンゴ河にかかる唯一の橋として知られる「マタディ橋」と並んで、「質の高いインフラ」として、日本の協力を象徴する案件になりました。

また、JICAは「キンシャサ市都市交通マスタープラン策定プロジェクト」を通じて、2030年時点を想定した都市交通計画作りにも協力しています。今後はこの計画に沿って、他の援助国・機関とも協力して公共交通指向型のまちづくりに取り組んでいきます。

世界有数の熱帯雨林を守れ

樹木の種類や分布を把握するための調査

アマゾンと並んで地球の片肺と称されるコンゴ盆地の熱帯雨林。その約6割がコンゴ民主共和国に属しており、同国の森林の保全は、コンゴやアフリカの人たちのためだけでなく、グローバルにも待ったなしの課題になっています。

商業伐採や農地・鉱山開発で年間30万ヘクタール以上の森林が消失しているとされるコンゴ民主共和国で、JICAは2013年から2017年まで、環境・持続的開発省と協力して「持続可能な森林経営及びREDDプラス促進のための国家森林モニタリングシステム強化プロジェクト」を実施。パイロット州で、国家森林モニタリングシステムの構築や、環境・持続的開発省森林官の能力強化に協力しました。

また2018年からは環境・持続的開発省へ政策アドバイザーを派遣して、関連する政策の立案・実施能力の強化にも協力しています。さらに2019年以降は、気候変動の代表的な緩和策の一つであるREDDプラス(注)の活動にも本格的に取り組む予定です。

(注)REDDプラス/REDD+: Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries(レッドプラス。途上国における森林減少・森林劣化に由来する排出の抑制、ならびに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強)

感染症の脅威に立ち向かう

エボラ出血熱の蔓(まん)延を防ぐため国境地域での啓発活動に協力

エボラ出血熱は、これまでアフリカを中心に10回にわたる断続的な流行があり、流行地の社会や経済に大きなダメージを与えています。エボラウイルスを流行地域で封じ込めることは、国内はもちろん、国境を越えた流行を防ぐ上でも非常に重要です。

コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行した2018年、JICAは国際緊急援助隊・感染症対策チームを派遣するなど、二度の緊急援助を行っています。

また、より長期的な支援として、「保健人材開発支援プロジェクト」を通じて、保健行政サービスの基礎を支える看護師、助産師、検査技師などの保健人材の育成に協力してきました。今後も、「保健人材育成」と「感染症対策」の二つの側面にフォーカスし、コンゴ民主共和国の保健行政サービス改善に力を注いでいきます。

「平和と安定」の鍵を握る治安セクター改革と若者の雇用改善

研修初日、警察学校まで行進する研修員たち

1990年代のコンゴ大戦とそれに次ぐ混乱期を経験してきたコンゴ民主共和国では、2000年から派遣された国連PKO(MONUSCO)が、現在も武装勢力が残る東部を中心に活動を続けています。本来であれば自国の治安当局が市民の安全を守るべきですが、コンゴ民主共和国の警察は、1997年に不安定な政情の下で設立された、旧反政府武装勢力や旧国軍兵士、一般市民を束ねた組織であったため、警察としての治安維持機能を十分に発揮できていませんでした。

そのため、JICAは2004年から国連PKOと協力して、警察官へ研修の機会を提供してきました。また2015年から2018年にかけて、コンゴ民主共和国警察自身の警察官育成能力を高めるためのプロジェクトも行いました。

また治安と並んで「平和と安定」の鍵を握るのが若者の雇用です。コンゴ民主共和国はアフリカの中でも特に出生率が高く、2040年には人口の半数が労働人口となり、そのほとんどが若年層になるという予測がある一方、若者の就業率は非常に低く、実質的な失業率は70パーセントにも上るといわれています。

JICAは全国に30以上の拠点を持つ国立職業訓練機構(INPP)に対して、特に若年層の就業につながり産業界のニーズに合った職業訓練ができるよう協力しています。