平和と復興へ粘り強く支援

2019年5月27日

南スーダンの首都ジュバ。2度の紛争を経て、市内は平穏さを取り戻しつつある

南スーダンは、2011 年にスーダンから分離独立してできた世界で一番新しい国です。2011年の独立後も南スーダン国内には混乱と民族間の対立が残り、2013年と2016年には大規模な衝突が勃発。今も人口の3分の1が国内外で避難民となっています。半世紀以上にわたる対立と不安定な治安のために、多くの国民は平和な状態をほとんど知らずにいます。

JICAは南スーダン独立直後から首都ジュバに事務所を設置し、一からの国づくりに協力してきました。治安が悪化するたびにJICAの日本人関係者は国外退避を余儀なくされましたが、JICAは、これら退避期間を含めて一貫して南スーダンの開発を支援してきました。

2年間にわたる隣国ウガンダからの遠隔支援を経て、昨年8月にようやく日本人スタッフが南スーダンに戻り、本格的な支援を再開したところです。支援の重点分野は、①基礎経済・社会インフラ整備、②石油に代わる産業として農業開発・食料安全保障を目指す代替産業育成、③基礎生活及び生計向上支援、④ガバナンス及び治安能力向上支援の4つとなっています。

南スーダンはアフリカの安定の鍵

「国民結束の日」スポーツ大会の開会式で披露されたアフリカンダンス。その踊りに平和への希望があふれている

石油資源や農業に適した土地など、大きな可能性を持ちながらも、紛争によって発展が妨げられてきた南スーダン。今でも半数以上の国民が貧困に悩まされ、食料、安全な水や住居、教育、保健などあらゆるものが不十分なままです。

そのような現状にあって、避難民への緊急支援を含む人道支援と、国づくりのための開発支援とを並行して進めていくことが求められます。JICAは、国際機関や各国の援助機関、NGOとも協力しながら支援を行っています。

アフリカの社会安定化は、2016年に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)のナイロビ宣言で掲げられた3つの柱の一つです。JICAは、この地域の安定がアフリカ全体の安定につながるという認識のもと、三度目のスタートラインに立った南スーダンの復興を粘り強く支援していきます。

復興の象徴「フリーダム・ブリッジ」

建設工事の再開を待つフリーダム・ブリッジ

南スーダンでは、もともと限られていたインフラの多くは紛争で破壊されてしまいました。内陸国のため物資の多くを輸入に頼っていますが、国の東西を二分するナイル川に架かる唯一の橋は老朽化が激しく、交通渋滞も発生し、物流の大きな妨げになっています。

ナイル川に新しい橋を架けることで、ウガンダやケニアにつながる国際回廊の一部として物流を円滑化し、経済の活性化を図ろうと、JICAは2012年に橋の建設プロジェクトを開始しました。現地では「フリーダム・ブリッジ」と呼ばれ、日本の復興支援の象徴として大きな期待がかけられていました。しかし、度重なる紛争で工事は中断を強いられました。

昨年8月に日本人JICA関係者の南スーダン常駐が再開された際、南スーダン側の関係者から最初に依頼があったのがこの橋の工事再開でした。2年以上放置されていた橋にはサビが生じ、工事再開までにさまざまな準備が必要です。1日も早く工事が再開できるよう、南スーダン政府そしてJICA関係者一同が日々、懸命な努力を続けています。

安全な飲み水を届ける

工事中のジュバ市給水施設。安全な飲み水提供に向け、工事再開が待たれる

フリーダム・ブリッジと並んで現地で認知度が高いJICAの支援は、ジュバ市の上水道を改善するプロジェクトです。

ジュバ市では、内戦中に上水道施設の維持管理がほとんど行われなかったため、老朽化した配水管網から漏水するなど、上水道がほとんど機能しておらず、また人口増加に浄水能力が追いついていません。多くの住民にとって頼みの綱である給水車も、浅井戸や河川から水をくみ上げているものが少なからず存在するため、劣悪な水質が原因でさまざまな病気にかかってしまうなどの問題が発生しています。

JICAは、2013年に浄水施設の拡張および送配水管網と給水施設を新設するプロジェクトを開始しましたが、フリーダム・ブリッジと同じく、内戦で中断状態にありました。このプロジェクトが再開されれば、8カ所の給水ステーションと120カ所の公共水栓が新設され、40万人の人々に安全な飲料水を届けることができます。

生きる上で欠かすことのできない安全な水を南スーダンの人々に提供できるよう、プロジェクトの再開に向けて関係者の努力が続いています。

スポーツで国民の結束と国際社会への参画を

対立を越え結束へ。スポーツの持つ力は大きい

長年にわたる民族間対立を繰り返してきた南スーダン。国民の心を一つにすることが重要な課題です。

スポーツの力で民族間の融和を図ろうと、JICAは南スーダン政府に全国スポーツ大会の開催を呼び掛け、2015年より支援を続けています。「国民結束の日」と名付けられたこの大会は、サッカー・陸上などの競技、啓発セミナー、選手と市民の交流デーなど、約2週間にわたって繰り広げられる一大市民イベントです。

2019年1月の第4回大会には、全国12の地域から約300名が集まりました。競技を戦い、合宿生活で一緒に行動することで参加者の一体感が深まり、関係者や一般市民の心にも着実な変化が見られます。また、女性にも参加しやすい競技を加えるなど、男女平等への配慮も重視されています。

スポーツを通して、国際社会への参画も進んでいます。南スーダンは、2016年リオデジャネイロ五輪に、JICAの支援で初めて3名の選手を送りました。2020年東京大会にも参加する予定です。前橋市が合宿を含めた長期滞在受け入れを表明し、渡航・滞在費用をクラウドファンディングで集めるなど、2020年に向けた準備を行っています。代表選手が2020年に東京で活躍する姿が、南スーダン国民の勇気と結束につながることを、私たちは信じています。