中所得国への変革に寄り添う

2019年9月30日

ガーナ北部で地域保健サービス改善に取り組む

2017年に日本との国交樹立60周年、野口英世訪問90周年を迎えたガーナは、アフリカの中でも、とりわけ日本と長く深い交流がある国です。2017年に派遣開始から40周年を迎えた青年海外協力隊も、全国で草の根レベルの協力を繰り広げ、両国の信頼関係構築に大きく貢献しています。

安定した政治状況に支えられて順調な経済成長が続くガーナは、現在、低所得国から中所得国への変革の途上にあり、アフリカビジネスの拠点として高い関心を寄せる日本企業も少なくありません。

JICAは、ガーナの変革に寄り添い、インフラ分野で国際物流回廊整備のためのマスタープラン策定に協力し、ガーナの経済成長をより確実なものにしたり、保健分野で、10年以上にわたる協力の成果を国内に広げ、地域格差の解消と、保健システムの整備に貢献したりしています。

安定した成長をより確実なものに

首都アクラ市街の様子

西アフリカの民主主義の牽(けん)引役として国際社会から高い評価を得るガーナ。政治的安定を背景に、2010年代に始まった石油の商業生産によって、中期的に安定した経済成長が見込まれていますが、一方で、南北地域間の格差、経済インフラ、社会インフラの未整備といった課題を抱えています。

これらの課題を克服し、ガーナの社会的・経済的発展をより強固なものにするために、JICAは、「インフラ開発」「産業基盤強化」「保健」「人材基盤強化」をガーナ支援の重点分野とし協力を行っています。

これらは、2016年に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で日本が表明した支援の優先分野「経済の多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進」「質の高い生活のための強靱な保健システム促進」「繁栄の共有のための社会安定化促進」に合致したものです。

UHC推進のショーケース

地域保健サービスの要となる地域保健ボランティア養成研修

全ての人が必要な質の保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で受けられることを「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」と呼びます。ガーナは2016年に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)でUHC重点推進国に選ばれましたが、政府は1999年の時点で地域保健サービスを促進する国家戦略「CHPS」を定め、以来UHCの実現に取り組んでいました。

JICAはこれまで、特に母子保健分野の行政サービスが十分でないガーナ北部で、10年以上にわたってCHPS推進に協力してきました。その結果、最も協力期間の長いアッパーウエスト州では、母子保健の状況が大きく改善しました。現在「北部3州におけるライフコースアプローチに基づく地域保健医療サービス強化プロジェクト」を通じて、これまでの取り組みを他の州に拡大しながら、より効果的な地域保健サービスモデルの構築に取り組んでいます。

また、「母子手帳を通じた母子継続ケア改善プロジェクト」では、母子手帳を使うサービス提供者と利用者双方への働きかけを通じ、より多くの母子が質の高い母子保健サービスを継続的に受けられるようになることを目指しています。

経済成長のキーワード「地域経済統合」

【画像】一国だけでは経済や人口規模がそれほど大きくない西アフリカのガーナ、コートジボワール、トーゴ、ブルキナファソの各国を結び、将来的には4カ国の東に位置する大国ナイジェリアの取り込みも視野に入れた回廊開発計画「西アフリカ成長リング回廊整備戦略的マスタープラン策定プロジェクト(WAGRIC)」が、2013年に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で提唱されました。日本企業もこの地域回廊に大きな関心を持っており、西アフリカ成長リング回廊は、2016年のTICAD VIで「総合広域開発重点地域」の一つに選ばれています。

4カ国にまたがる三つの国際回廊とアビジャン-ラゴスハイウエイを西アフリカ成長リングと位置付け、対象地域の開発ポテンシャルや回廊輸送のボトルネックを特定し、沿岸部と内陸部のバランスの取れた経済発展・活性化につなげようというもの。JICAの支援で2018年にマスタープラン策定が終わり、4カ国共同のモニタリング体制の構築や資金調達なども行われ、今後の展開が期待されています。

日本での学びを生かす

学校保健隊員による救急処置のデモンストレーション

ガーナ各地の教育事務所には学校保健教育プログラム(SHEP)コーディネーターがおり、地域の学校保健推進に取り組んでいます。これまで約20人のコーディネーターが日本でJICAの研修を受け帰国していますが、担当地域に戻ってからは活動資金や周囲の協力がなかなか得られずに苦労していました。

そこで、2018年からガーナ教育省主催で、帰国したコーディネーターが日本での学びを共有しガーナに還元する機会として、コーディネーターと、ガーナで活動する青年海外協力隊の「学校保健」隊員が参加するワークショップが開かれるようになりました。コーディネーター同士はもちろん協力隊員とのつながりも深めて協働体制を築き、学校保健の推進を図ろうという試みです。

ワークショップでは、コーディネーターが帰国後の自身の活動を発表したり、協力隊員が自作の教材を使った模擬授業を披露したりと、ガーナ人コーディネーターと協力隊員が連携して学校保健を推進していくための取り組みが行われています。