新たな可能性を広げる挑戦

2019年8月22日

新たな可能性を広げる挑戦

モザンビークの南端にある首都・マプト市はインド洋の港町として18世紀にポルトガル人に建設され発展した

モザンビークはアフリカ南東部のインド洋に面した国です。2,700kmの長い海岸線が南北に延び、マプト港、ナカラ港などの貿易港から「回廊」と呼ばれる物流ルートが内陸へとつながっています。中でも、北部のナカラ回廊は、2016年にナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)で「アフリカの優先3地域」の一つと指定され、大きな発展が期待されています。

モザンビークの首都マプト市は、国の南端、南アフリカとの国境近くに位置します。この地域では今後大きな電力需要の増加が見込まれており、JICAはマプト市で100メガワット級のガス複合式火力発電所の建設プロジェクトを進めています。

また、アフリカのゴミ問題解決を目指す「アフリカのきれいな街プラットフォーム」は、2017年にマプト市で発足しました。マプト市ではJICAが以前から廃棄物管理支援を行い、青年海外協力隊員も現地で環境啓発活動に取り組むなど、環境意識が徐々に高まっています。

ナカラ回廊地域の活性化を目指して

インド洋のナカラから内陸へ伸びるナカラ回廊はモザンビーク第3の都市ナンプラを通り隣国マラウイへと通じる

ナカラ回廊のある北部地域は、首都マプトから離れていることもあり、開発が遅れていましたが、ナカラ回廊は、この地域の豊富な鉱物・エネルギー資源の輸送路として、またマラウイやザンビアなど内陸国と外洋をつなぐ大動脈として、大きな可能性を持っています。

JICAはこの地域の適切な開発・投資と持続的な経済発展のための戦略作り段階から支援に携わり、道路、港湾、電力などのインフラ整備を支援しています。今後の開発を担う教員、看護師、技術者などさまざまな分野の人材育成支援も行う計画です。

この地域は雨量に恵まれ、農業に適した広大な土地が広がっていますが、ほとんどが小規模農業で低い生産性・生産量に留まっています。JICAは持続可能な農業開発を通じて地域住民の生計向上を目指す「プロサバンナ事業」を通してこの地域の農業開発を支援しています。また、教育分野や給水設備の支援なども行いながら、回廊地域全体の活性化を目指しています。

首都圏へ電力を安定供給

マプト・ガス複合火力発電所。2本の高い建屋は、ガスタービンからの高温排気を取り入れて蒸気を発生させるボイラー

JICAが整備を支援しているマプト・ガス複合式火力発電所はマプト市の近郊にあります。現地で産出される天然ガスを利用し、ガスと蒸気の二重で発電を行う南部アフリカ初の複合火力発電所です。

ガス複合火力発電は、天然ガスの使用量も抑えられ、石炭火力と比較すると二酸化炭素排出量も半分で済みます。化石燃料を使用した発電としては最も環境に優しく、また高効率の発電方式です。

モザンビークは近年、アルミ精錬事業などにより好調な経済成長を続け、また天然ガスや石炭などの資源開発も進んでおり、電力需要の増加が見込まれています。特に人口約120万人の首都マプトを含む南部地域では、電力不足が懸念されています。

この発電所によって、マプト首都圏を含む南部地域の電力供給は、約2割アップしました。これにより、停電時間の減少や、より多くの消費者への電力供給が可能になり、地域の円滑な経済活動や住民の暮らしに貢献するものと期待されています。

日本の高い技術とノウハウを移転

マプト火力発電所は、マプト市から南アフリカ、エスワティニへ向かう幹線道路沿いに建ち、車窓からも大きく見える

マプト・ガス複合火力発電所は、サブサハラ(サハラ砂漠以南)で初の円借款によるガス複合火力発電所です。2018年8月の竣工式には、モザンビークの大統領をはじめとして多数の閣僚が出席し、国の期待の大きさをうかがわせました。

この発電所の建設は、住友商事、IHIといった高い技術力を持つ日本企業が行いました。工期管理や安全面でも日本企業の経験と知見が生かされ、計画通りの日程で無事故で完工しました。また、建設と並行して、発電所を運営する国営モザンビーク電力公社の技術者30名が来日し、IHI社で技術研修を受けました。その4割が女性技術者です。技術者たちは、2カ月間にわたって運転・保守技術を学びました。

IHI社は、モザンビーク電力公社と遠隔監視や技術者派遣を含めた長期保守契約を締結しており、今後もマプト・ガス複合火力発電所への支援を継続していく予定です。

マプトから広がるアフリカの環境教育

小学校でゴミ問題について啓発活動を行う青年海外協力隊員

第6回アフリカ開発会議(TICADVI)でアフリカの廃棄物問題論議を契機として、2017年4月に日本の環境省とJICAがアフリカ24カ国、関係国際機関、横浜市と共に「アフリカのきれいな街プラットフォーム」をマプト市で発足させました。

遡ること4年前から、JICAはマプト市で廃棄物管理能力の強化のための支援を行なっていました。また、青年海外協力隊もマプト市役所廃棄物管理・衛生局で環境のための啓発活動を継続して実施しています。

「学校ではリサイクル工作や植樹など子どもが楽しく学べる環境教育を行っています。また市場など人の集まる場所でも啓発活動をしています。『ポイ捨てはなぜいけないか?』『リサイクルとは』など、日本では当たり前のことが現地ではまだ新鮮に受け取られています」と協力隊員は話しています。

JICAはマプト市において廃棄物管理能力強化の後続プロジェクトも計画中です。モザンビークを中心に、アフリカのゴミ問題への取り組みが続きます。