東アフリカの物流と安定の「要」をサポート

2019年9月23日

北部回廊に新しく完成した「ナイル川源流橋」は東アフリカの経済活性化の一翼を担う

その自然の美しさからチャーチル元英国首相が「アフリカの真珠」と呼んだウガンダは、ケニア、ルワンダ、コンゴ民主共和国、南スーダン、タンザニアの5カ国と国境を接する、東アフリカの交通の要衝です。

JICAはウガンダで、これらの国々を結ぶ国際幹線道路「北部回廊」に架かる新しい橋の建設を支援し、ウガンダはもちろん、東アフリカ地域の物流の円滑化に貢献しています。

またウガンダは、地域の交通の要衝であると同時に地域の安定の要でもあります。JICAは世界最大規模ともいわれる南スーダンなどからの難民を受け入れているウガンダ北部地域のコミュニティへの支援を通じて、東アフリカ地域の安定を図っています。

一方、2018年に協力開始50周年を迎えた産業人材育成協力の拠点となったナカワ職業訓練校は、ウガンダ国内にとどまらず、ケニアやタンザニアなど、周辺国の技術者育成も担い、東アフリカの産業界に貢献しています。

重点分野は「成長」と「格差解消」

首都カンパラのオールドタクシーパーク。ワゴン車の乗り合いタクシーは市民の足

内陸国のウガンダは、貨物・旅客輸送の9割以上を陸路に頼っていますが、道路整備の遅れや渋滞に悩まされています。医療面に目を向けると、母子保健や感染症分野は今も改善が必要な状況にあります。一方、北部地域は、1980年代から続いた内戦の影響で、開発から取り残されてきました。ウガンダでは「都市と農村」に加え、このような「北部とその他の地域」の格差への対応も課題となっています。

こうした状況を踏まえJICAは、「経済成長を実現するための環境整備」「農村開発を通じた所得向上」「生活環境整備(保健・給水)」「北部地域及び難民受入地域における平和構築」の4項目をウガンダ支援の重点分野とし協力を行っています。

これらは、2019年に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で日本が表明した支援の優先分野「イノベーションと民間セクターの関与を通じた経済構造転換の促進及びビジネス環境の改善」「持続可能かつ強靭な社会の進化」「平和と安定の強化」に合致したものです。

地域物流の要、ウガンダに完成したナイル川源流橋

美しさからウガンダを代表する観光スポットにもなっている

2018年10月、JICAの資金援助でウガンダに東アフリカ最大クラスの橋が完成し、2.5キロメートル上流にあるナイル川の源流にちなんで「ナイル川源流橋」と命名されました。

「ナイル川源流橋」は、ケニア・モンバサ港からウガンダ、そしてルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国を結ぶ東アフリカ地域の国際幹線「北部回廊」上にあります。60年以上前に架けられた旧橋が片側1車線で老朽化も進んだため、新しい橋の建設が必要になり、JICAは橋とアクセス道路の建設を援助しました。橋の完成により、ウガンダはもちろん、東アフリカ地域全体の物流の円滑化と貿易活動の活発化が期待されています。

「ナイル川源流橋」は橋そのものの美しさでも話題になっています。橋の完成を記念してJICAで「夢の橋」をテーマにした児童画コンテストを開催したところ、ウガンダ全国の子どもたちの豊かな発想から生まれた作品約130点が集まりました。

産業人材育成は国境を越えて

ナカワ職業訓練校の卒業式

内戦による中断はありましたが、JICAはウガンダで1968年から50年にわたり職業訓練を支援してきました。その協力の拠点となったのが、首都カンパラにあるナカワ職業訓練校です。同校は、ウガンダ国内の職業訓練校だけでなく、2004年以降は、ケニア、タンザニアなど東アフリカ諸国から職業訓練校の指導員を招いて研修を行い、協力の成果を周辺国に拡大しています。

ナカワ職業訓練校はこれまで、電子、電気、機械、自動車、木工、板金、溶接の7分野で、5,500人以上の卒業生を輩出してきました。JICAは同校で指導員の指導能力の向上を図り、彼らを通じて確かな技術を持つウガンダ人の技術者を育成してきました。

ナカワ職業訓練校を拠点とした協力に当たった多数の日本人専門家が、帰国の際に敷地内に植えた記念樹が、今は長い並木道となり、半世紀にわたるJICAとナカワ職業訓練校の絆を象徴する存在として、訓練校と学生たちを見守っています。

「難民に寛容な国」ウガンダへの支援

西ナイル地域の道路。改修時には地方政府職員や地域住民へ道路維持管理の技術移転も行われる予定

ウガンダ北部のアチョリ地域は、1980年代後半から20年以上続いた内戦の舞台となったため、社会・経済インフラが破壊されて、多くの国内避難民が生まれました。JICAは内戦終結直後からこの地域への支援を続けてきましたが、2016年からアチョリ地域に隣接する西ナイル地域に、国境を接する南スーダンなどから難民が流入し始め、2018年4月には、受け入れた難民は世界最大規模の120万人以上に達しています。

ウガンダは内戦で自国民を周囲の国に流出させた経験から、流入してくる難民に移動の自由を認め土地を提供したり、教育などの基礎サービスを提供したりしています。しかし、こうした寛容な政策は、難民を受け入れているコミュニティの負担増にもつながります。

JICAはウガンダでの内戦復興支援の経験を生かし、地方行政能力強化を通じた、地方政府・コミュニティならびに住民間の信頼関係再構築を目的とした技術協力プロジェクトや、コミュニティや難民居住区の物流を支え、地域の安定につながる道路の改善にも取り組んでいます。