内戦と感染症を乗り越え強い社会を再建する

2019年11月11日

手前の半島は2014年のエボラ出血熱が流行した際に甚大な被害に見舞われた首都モンロビアのウエスト・ポイント地区

アメリカからの解放奴隷によって1847年に誕生したリベリア。「自由」を国名に擁するアフリカ初の共和国です。また、鉄鉱石、天然ゴム、ダイヤモンドなど豊富な天然資源と西アフリカ最大の森林を持つ資源大国でもあります。

リベリアは、14年もの長期にわたって続いた内戦とエボラ出血熱の流行によって、甚大な被害を受けました。現在は平和を取り戻していますが、国はまだ再建の途上にあります。

JICAは、リベリアの首都モンロビアの幹線道路の改修、母子保健分野の支援、多くの人材を日本での研修に受け入れるるなど、リベリアの復興を後押ししてきました。

今年8月に横浜で行われた第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、参加諸国の共通目標の大きな柱の一つとして「アフリカの持続可能で強靭な社会の深化」が掲げられました。この目標に沿って、JICAはリベリアの力強い社会の実現のために支援を続けています。

貧困層を置き去りにしない発展を目指す

今年8月に横浜で開催されたTICAD7の開会式でスピーチするリベリアのジョージ・ウェア大統領
写真:リベリア大統領府

リベリアでは1989年から約14年もの間、断続的に続いた内戦によって15万人以上の死傷者と30万人以上の難民が発生しました。また、道路や学校などのインフラも壊滅状態になりました。2003年に内戦は終結しましたが、2014年にはエボラ出血熱の流行によって再び多くの犠牲者を出し、経済的にも大きな打撃を受けました。

2006年にはアフリカ初の民選女性大統領が誕生、2018年にはサッカーの元世界的スター選手でバロンドールも受賞したジョージ・ウェア大統領が就任し、民主的な枠組みの中で国の再建を目指しています。

しかし、国内状況は依然として厳しく、2018年の国連開発計画(UNDP)の人間開発指数は189カ国中181位です。リベリア政府は2030年までの中所得国入りを目標に、インフラ、教育、保健への投資を進めて経済の構造変革を行いつつ、貧困層を置き去りにしない発展を目指す「プロ・プアー(貧困削減)」政策を進めています。

市民の生活と国の経済を支えるジャパン・フリーウェイ

片道2車線に拡張され舗装工事が進むジャパン・フリーウェイ

首都モンロビアは、帰還難民や地方からの人の流入によって人口が急増し、現在150から200万人が住んでいると言われています。車両の数も増え、市内では渋滞が慢性化しています。

モンロビア首都圏には東西を結ぶ主要道路が2本あります。その一つ、全長13.2キロのソマリアドライブは、片側1車線ずつで舗装も老朽化し、常に交通渋滞が発生していました。JICAはこの道を片側2車線へと広げて、この道にかかる2つの橋を架け替え、修復しました。現在は道路舗装の改修と信号・街路灯などの整備を行なっており、2021年に完成する予定です。

この改修によって、多くの市民の生活が安全かつ快適になります。またこの道路は国内最大の港から地方や隣国ギニアへ抜ける国際回廊の一部であるため、経済活動の活性化にも大きく貢献することが期待されています。リベリア政府は今年3月、日本への謝意を込めてソマリアドライブを「ジャパン・フリーウェイ」と改名しました。

首都圏の母子保健を中心とした医療サービス改善を

保健サービス強化プロジェクトの一環で行われた妊産婦指導

リベリアでは長期の内戦と2014年のエボラ出血熱の流行によって保健医療サービスが荒廃し、国民の健康指標が低下しました。妊産婦死亡率は出生10万人に対して725人(世界保健機関、2015年)、乳児死亡率は出生1,000人に対して56人(世界銀行、2017年)と、世界最低水準にあります。

JICAは、2015年から2018年にかけてモンセラード州の保健サービスを強化するプロジェクトを実施し、基礎的な保健行政システムの構築を支援しました。首都モンロビアのある同州には国の人口の3分の1が住んでおり、特に母子保健分野の指標の改善が急がれています。

こうした状況を受けJICAは、現在、モンセラード州保健局のマネジメント能力強化プロジェクトを準備しています。研修などを通じた州保健局の監理機能強化や、州・郡保健局の各医療機関におけるサービスの総合的評価・指導の実施支援などを通じて、州保健局のマネジメント能力向上を図りつつ、母子保健を中心とした同州の保健医療サービス提供の改善を目指す計画です。

再び動き出した帰国研修員同窓会

モンロビア市内のクリーンアップキャンペーンに参加する帰国研修員とJICA職員

リベリアからJICAの研修に参加した研修員は、総勢650名以上に上ります。内戦で撤退したJICAのオフィスが2009年に首都モンロビアで再開したことをきっかけに、リベリア帰国研修員同窓会が結成されました。その活動は一時期停滞していましたが、「研修員同士で交流したい」や「JICA研修で学んだことを同窓会メンバーと事業化したい」などの声が寄せられ、2017年に再始動することになりました。

現在は定期会合に加えて、モンロビア市公社の市内清掃活動に参加するなどの活動を行っています。モンロビア市は今年、JICAと日本の環境庁が中心となって立ち上げたアフリカの廃棄物管理・環境保護プロジェクト「アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)」に加盟しました。第7回アフリカ開発会議(TICAD7)と並行して開催されたACCP第2回総会に、プレゼンターの1人として参加したモンロビア市公社の廃棄物管理担当者も、帰国研修員同窓会のメンバーです。