西アフリカ圏の安定と発展の拠点

2019年9月24日

ローストしたピーナッツを粉砕器にかける女性。ピーナッツはセネガルの特産品

アフリカ最西の国、セネガル。日本の世界地図では地図の左端の最果ての国に見えますが、大西洋を中心にした世界地図でみると、欧州と米州、アフリカをつなぐ大西洋の要所であることがよく分かります。パリ・ダカール間の自動車耐久レースのゴールとして有名になった首都のダカールは、大西洋に突き出したヴェルデ岬の先端にあり、アフリカの玄関港として形成されました。現在も西アフリカ圏の経済や商業の拠点となっています。

セネガルは、1960年にフランスから独立して以来、クーデターや内戦が一度も発生しておらず、政治的・経済的な安定を維持しています。一方で、現在セネガルは低所得国に位置付けられており、急激な人口増加に伴う都市化、食料安定供給などの面で、依然として課題を抱えています。

JICAは、西アフリカ7カ国を担当する事務所をダカールに置き、セネガルへの支援を進めながら、西アフリカ地域全体の安定と発展を目指しています。

稲作支援と首都機能の強化

JICAの灌漑稲作支援では農民たちが参加して水路改修が行われた

セネガル政府は、国家経済成長戦略「セネガル新興計画」で、2035年までの新興国入りを目標に、特に都市部の経済基盤の整備と、全人口の約7割が従事する第一次産業の開発を優先課題として挙げています。

セネガルは、西アフリカの中でも有数のコメ消費国ですが、米の自給率は低く、その他にも主要な食物の多くを輸入に頼っています。 セネガル政府は米の自給率100パーセントを目標としていますが、人口増加と所得向上によってコメの需要はますます伸びており、達成に至っていません。JICAは、稲作に適している北部のセネガル川流域で灌漑稲作の技術協力を行い、コメの生産量アップを支援しています。

また、農村地域から都市部への急激な移住などにより生活環境が悪化しているダカール首都圏を対象に、電気・水などのインフラ整備の支援を行い、併せてダカール港の埠頭改修を通して、スムーズな物流をバックアップしています。

コメの自給率100パーセントへ

JICAの技術協力として女性グループへ精米機の運転指導を行った

アフリカでは今、稲作が拡大中です。2008年のアフリカ開発会議(TICAD IV)で日本が立ち上げた「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)により、アフリカのコメ生産量は2018年までの10年間で倍増しました。次の10年で更に倍増させようと、CARDフェーズ2が動き出しています。

JICAは早くからセネガル川流域の稲作のポテンシャルに注目し、1980年代から技術協力や灌漑整備などの支援を行ってきました。現在、セネガル政府が目標とする米の自給率100パーセントの達成には、この地域が鍵となります。

JICAが作成したセネガル川流域全体の稲作開発計画は、セネガル政府にも高く評価され、国の農業計画の一部として採択されました。これに基づきJICAによる円借款事業が、今動き出そうとしています。JICAは、長年にわたる関係各所との信頼関係を基に、灌漑施設の維持管理、稲作技術の指導、機械化の導入、二期作の普及など、きめ細かい稲作支援を続けています。

トマトとコメの生産を拡大

加工用トマトの収穫が進むカゴメのトマト農場
写真:Kagome Senegal Sarl

西アフリカの料理のベースにはトマトが使われています。そこに目を付けたカゴメ株式会社は、JICAの民間連携事業を利用してセネガルでのトマト栽培・加工事業の可能性について調査を行いました。

調査終了後の2017年末には現地法人を立ち上げ、加工用トマトの大規模農業がスタート。農家の栽培技術の未熟さや土壌の質、機材・資材物流など直面する問題は多くありますが、需要が拡大する西アフリカ市場の戦略拠点として大きな期待を背負っています。

一方、調査当初からトマトの裏作作物としてコメが注目されてきました。セネガルの農家が、整備され肥沃な土地でコメを栽培していくことで、国の課題となっている国産米の生産量アップにも貢献できます。カゴメの農業現場は、JICAが実施中のセネガル川流域灌漑プロジェクトの現場に近いこともあり、稲作専門家との情報交換も行われています。セネガルのトマトとコメの生産拡大に、日本の官民がタッグを組んで取り組んでいます。

ダカール首都圏のインフラを整備

改修が行われているダカール港第3埠頭

ダカール首都圏の人口は2017年現在で363万人。2025年には500万を超える見込みです。無計画に拡大した市街地では、インフラ整備が追い付かず、洪水被害や不安定な電力供給などの問題が見られ、安定した生活と経済発展の阻害要因になっています。

JICAは、2018年2月にダカール州配電網緊急改修・強化計画の無償資金贈与契約を締結しました。この計画によって、ダカール市内と新興開発地区、および近郊都市へ安定的な電力供給が実現する見込みです。

また、ダカール首都圏に安全な水を届けるために、海水淡水化施設の建設と配水管網の改善計画も進めています。セネガルで初の海水淡水化施設となるため、多くの注目を集めています。

さらに、今年7月には、JICAの無償資金協力によるダカール港第3埠頭改修の起工式も行われました。9つあるダカール港の埠頭のうち、第3埠頭はセネガル国内とマリ向け貨物を扱っており、物流環境の改善が期待されています。