地域に根ざした多面的な支援

2019年10月23日

2030年には人口1000万人に到達するといわれるタンザニア最大の都市ダルエスサラームでは高層ビルの建設ラッシュが続いている

インド洋に面したタンザニアは古くから交易拠点として発展してきました。最大の都市ダルエスサラームは、今も内陸国と海外をつなぐ重要な中継貿易港です。 JICAは、タンザニアと隣接国との国境に通関施設「ワンストップボーダーボスト」を建設。また、ダルエスサラーム市内に同国初の立体交差点を建設して慢性化する交通渋滞問題を解消するなど、交通と物流の円滑化を支援しています。

タンザニアは120以上の民族から成る国ですが、建国以来、国内に大きな対立もなく、安定した社会を維持しています。日本の多くのNGO団体や企業が、教育やエネルギーなどさまざまな社会問題の解決を目指して、地域に根ざした活動を行っています。JICAはそれらの企業や団体とも協力しながら、タンザニアの社会の発展を多面的に支援しています。また、2017年より女子陸上競技会を開催し、スポーツを通してジェンダー平等にも取り組んでいます。

ボトルネック解消で交通・物流をスムーズに

タンザニア初のフライオーバー(立体交差点)ができたことで渋滞が大きく改善したタザラ交差点

ダルエスサラームでは、人口増加・経済成長に伴い交通渋滞が慢性化し、市民生活や経済活動に支障をきたしています。市内で最も混雑の激しいタザラ交差点を立体化する建設プロジェクトが、JICAの無償資金協力、三井住友建設の施工で行われました。昨年9月、美しい弧を描く全長425メートルの橋が完成し、港や空港への交通が大きく改善しました。また、約3年に渡る建設工事は無事故で完工し、日本企業のきめ細やかな安全管理や工種監理は高く評価されました。現地作業員の中には、ここでの経験を買われ好待遇で次の現場に呼ばれた人も多くいます。

渋滞は市街地だけではありません。国境周辺の道路では、出入国の税関手続きを待つ車両が列になり、運送業者に大きな負担がかかっていました。JICAはタンザニアとルワンダやケニアとの国境2カ所に「ワン・ストップ・ボーダー・ポスト(OSBP)」を建設し、通関手続きを簡略化して物流の促進を図っています。JICAは、アフリカ14カ所でOSBPの導入に協力しています。

電気をみんなに届ける

無電化地域でWASSHAのLEDランタンの明かりに喜ぶ子供たち  写真提供:WASSHA株式会社

サブサハラ・アフリカの未電化人口は約6億人と言われています。タンザニアでは特に地方部の電化率が低く、料理には木炭や薪が、照明には灯油ランプなどが使われています。

日本のベンチャー企業WASSHA(ワッシャ)は、タンザニアの未電化地域で電気の量り売り事業を行っています。村落のキオスクに太陽光パネルを設置し、明るく安全で安価なLEDランタンをレンタルするビジネスです。ランタンによって、店舗の夜間営業、子供の学習時間の増加、携帯電話の充電、灯油代の抑制、健康改善などのメリットが生まれています。

JICAは同社に3億円を出資し、事業を支援しています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」では「すべての人に手ごろで信頼でき持続可能で近代的なエネルギーのアクセス確保」が目標の一つに掲げられており、JICAも2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)でクリーン・エネルギーに関するサイドイベントを開催。アフリカのエネルギー問題の解決を目指しています。

タンザニア初の女性陸上競技会「Ladies First」

2017年の第1回「Ladies First」で1万メートル走に参加する女子選手たち

JICAはタンザニア事務所の広報大使である元五輪代表マラソン選手ジュマ・イカンガーさんと協力して、タンザニアの女性アスリートの発掘と、男女格差の是正や女性の活躍に向けた意識啓発などを目的に、女子選手のための陸上競技会「Ladies First」を企画しました。

2017年11月、ダルエスサラームの国立競技場で第1回大会が開催され、全国24地域から105人の選抜選手が集まりました。長距離走、短距離走、やり投げ、砲丸投げなど計11種目がオリンピック公式ルールで実施され、併せてソフトボールのデモンストレーションやJICAボランティア発案のデカパンリレーのほか、性教育の啓発のための読み聞かせなどのサイトイベントも行われ、大会は好評のうちに幕を閉じました。

参加した選手からは「公式大会に出場できて誇らしい」「女子選手にレース出場の機会をつくってもらえて嬉しい」「また出場したい」などの感想が寄せられ、翌年以降も毎年開催されています。

草の根協力を通じてNGOの活動を支援

女子陸上競技会「Ladies First」に招待され、性教育の絵本読み聞かせを聞く近隣の女子学生たち

タンザニアでは約半数の少女が10代で妊娠、出産を経験すると報告されています。若年妊娠は死亡の危険性が高いだけでなく、学生の場合は退学を余儀なくされ、大きな問題となっています。NPO法人Class for Everyoneは、小中学校で若年妊娠予防のための性教育授業を行っています。JICAは草の根技術協力として、この活動の費用を支援しています。また、女子陸上競技会「Ladies First」でも、同団体と協力して啓発イベントを行いました。その様子は全国にテレビ中継され、大きな反響を呼びました。

タンザニアの特に地方では、女子生徒は初等教育までで教育を終えるのが一般的です。やる気と能力がある女子生徒に中等教育を提供し、将来の女性リーダーを育成するため、社団法人キリマンジャロの会が2016年に全寮制のさくら女子中学校を開校。現在約250名の生徒が学んでいます。JICAは外務省や多くの企業とともに、同校の運営を支援しています。