持続可能で強靭な社会に向かって

2019年12月18日

ブルンジの観光名所の一つルタナ県の深い森の中にあるカレラの滝

ブルンジは、国全体が標高1,000メートル以上の山岳国で、起伏の激しい高地が多く、「アフリカのスイス」とも呼ばれます。アフリカ大陸を切り裂くアフリカ大地溝帯に位置し、国の西側は全長650キロの細長いタンガニーカ湖に面しています。四国の約2倍の国土面積に対し、人口は1,000万人以上で人口密度の高い国です。
山が自然の要塞となって外部からの侵略は防がれてきたものの、1962年のベルギーからの独立後に民族衝突が繰り返し発生。長期にわたって内戦状態に陥りました。

JICAのブルンジ・フィールドオフィスは、治安が安定化し本格的な二国間協力を再開した2006年に開設。しかし再び情勢が悪化したため、日本人スタッフは2015年に隣国ルワンダに退避し、今年2019年7月、4年ぶりにブルンジに戻ることができました。市民の生活環境の改善を柱として、運輸交通インフラ整備、農業、母子保健強化などの支援を行っています。

TICADパートナーシップでSDGsの達成を

ブルンジの伝統芸能であるドラム演奏のタンブリネール(鼓手)
写真:ブルンジ観光省

ブルンジは長期の内戦によって経済基盤が荒廃、飢餓や貧困、大量の帰還民など依然として多くの問題を抱えています。2007年に東アフリカ共同体に加盟し、東アフリカ諸国との関係を強化しながら、貧困削減と経済の安定を目指しています。ブルンジの周辺国であるコンゴ民主共和国、ルワンダ、ウガンダは、ブルンジ同様紛争の影響を受けた国々で、現在も不安定な要素を抱えており、ブルンジの復興は地域全体の安定にも寄与します。

今年2019年8月に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、技術革新とビジネス環境の改善、持続可能で強靱な社会、平和と安定の強化を3つの柱に、アフリカ諸国、日本、国際機関、市民セクターから成るTICADパートナーがアフリカの発展のために力を合わせることが改めて確認されました。TICADの目標、そして持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、JICAはブルンジの復興と周辺地域の安定を後押ししています。

ABEイニシアティブ研修員が母国で活躍中

香川大学の大学院で観光マネジメントを学んだダンシル・ニゼイムナさん

ブルンジのJICA日本人スタッフが国外に避難している期間も、ブルンジからは日本や第三国でのJICAの研修に約150人余りが参加してきました。その中には「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(ABEイニシアティブ)の研修員10名もいます。

ABEイニシアティブは、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)を契機に2014年にスタートし、5年間で1,200人以上のアフリカの若者たちが日本の大学院で学び、日本企業でインターンシップを経験しています。ブルンジからは2019年11月現在、5名が来日中で、法律、経営、IT技術などを学んでいます。

ダンシル・ニゼイムナさんは、ABEイニシアティブ3期生として日本で観光業を学び、現在はブルンジ観光局にアドバイザーとして復職。ガイドの研修やマーケティングを担当し、ブルンジ観光局を代表して国際会議に出席するなど活躍しています。「観光の振興を通じてブルンジの発展に貢献したい」と話しています。

妊産婦と乳幼児50万人を守る

母子手帳を手にしたブルンジの母親たち

ブルンジの内戦による影響は医療分野でも大きく、医療施設の設備不足や医療スタッフの能力不足は深刻です。特に母子保健については、産前産後の検診受診率が低く、妊産婦死亡率や5歳未満児死亡率はサブサハラ諸国の平均を上回ります。出生登録システムが未整備のため、乳幼児の検診も行き届いていません。

JICAはこれまでに、ブルンジの母子保健のケアの質の改善と妊産婦・新生児死亡率の低下を目指して、一部の県において、医療スタッフへの産科・新生児ケア研修や病院の業務環境の改善活動、出生証明書を兼ねた母子手帳の普及活動などを行い、それらの活動の全国展開を期待するブルンジ保健省を支援してきました。

その成果が認められ、現在、地方部の4県での母子保健サービス強化へと支援を広げています。国連児童基金(UNICEF)との連携で、医療施設の整備、医療品の調達、医療スタッフへの研修、母子手帳25万部の配布などを行い、妊産婦と乳幼児合わせて50万人の健康への貢献を目指しています。

首都ブジュンブラの渋滞を解消した「日本通り」

JICAの支援で整備された「日本通り」

ブルンジの運輸交通網は未整備で維持管理が十分ではなく、首都ブジュンブラ市でも道路や公共交通は劣悪な状況でした。JICAは、首都の交通事情の改善計画を作成し、公共交通公社に大・中・小型バス86台を提供しました。これにより、市民の通勤や通学の交通手段が確保され、市内だけでなく主要都市間やブルンジと近隣国を結ぶ公共交通網が再生されました。

また、一部未舗装だったブジュンブラ市内の環状線と南北幹線の計4.4キロメートルの道路を整備し、交差点、歩道、街灯などを設置。安全確保、渋滞の解消、輸送コストの削減につながりました。完成から5年余り経っても損傷がほとんどなく、質の高いインフラはブルンジの公共事業の中でも群を抜いています。整備された道路の一部は「日本通り」と名付けられ、市民に広く知られています。

現在は、ブジュンブラ港湾改修計画を進めています。湖上輸送の強化により、ブルンジをはじめとする大湖地域の経済発展への貢献が期待されています。