豊かな資源を持続的に生かし発展を

2019年12月17日

大西洋に突き出た半島から成る港湾都市コナクリを上空から見る

ギニアは自然豊かな西アフリカの国です。国の西部は大西洋に沿って熱帯雨林が広がり、フータ・ジャロン山地を境に内陸側には広大な草原地帯が続きます。フータ・ジャロンは、ニジェール川、セネガル川などアフリカを代表する大河の源となっており、「アフリカの水がめ」「西アフリカの給水塔」と称されています。

豊かな水と森、ギニア湾の海洋資源、ボーキサイトやダイヤモンドなどの地下資源にも恵まれているものの、クーデターなど不安定な治安状況が続き、その資源を生かした経済発展を実現できていません。さらに2014年からはエボラ出血熱の大流行に見舞われ、隣国リベリア、シェラレオネとともに数千人もの感染者・死者を出し、経済的にも大きなダメージを受けました。

ポスト・エボラの復興を進めるギニアで、JICAは交通や水道などのインフラ整備、水産資源保護や稲作支援などの食料面での協力、また保健システムの強化など、国の基盤強化を目指した支援を進めています。

インフラ整備で市民生活を改善

安全性が向上したカアカ橋

コナクリ市内の配水管布設工事の様子
写真:株式会社日本テクノ

ギニア最大の港町である首都コナクリから内陸へ伸びる国道1号線は、国の東西を結ぶ主要幹線です。この道にかかるカアカ橋が老朽化したため、JICAの支援で新しい橋が架けられました。

山間地の傾斜とカーブが連続した道にかかる橋の建設には、日本の高い技術が生かされました。エボラ出血熱の流行で1年8カ月もの間、工事は中断を余儀なくされましたが、2017年6月についに完成。新しい橋にはソーラー街灯や車両の速度を抑制する段差なども加えられ、安全性が大きく向上しました。JICAは、同じく老朽化で落橋の危険がある国道3号線のスンバ橋の架け替え計画も進めています。

JICAはまた、コナクリの上水道整備の支援も行なっています。コナクリは年間4,000ミリという降雨量にも関わらず、人口増加と給水施設が十分ではなかったため、特に高台地区で水不足が深刻でした。そこでJICAは、配水管の交換や深井戸の建設、給水車の調達のほか、漏水や盗水の対策アドバイザーを派遣した結果、コナクリ市民の安全な水へのアクセスの改善に貢献しています。

多角的産業振興のためのブルーエコノミーを推進

リニューアルを待つ漁業調査船ランサナ・コンテ号

アフリカでは近年、水産資源を守りながら経済発展につなげる「ブルーエコノミー」が注目されています。今年2019年8月に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)でも、テーマ別会合の議題として取り上げられ、日本は漁業、港湾施設管理、海洋安全保障分野で、今後3年間で1,000人の人材育成を行うと発表しました。

大西洋のギニア沿岸には西アフリカ最大の大陸棚があり、水産資源に恵まれています。この水産資源を保護しながら漁業を持続的に発展させていくことは、ギニア国民の安定した食料供給のためにも必須の課題です。

かつて日本の資金協力で建造された漁業調査船のランサナ・コンテ号は、15年以上にわたってギニアの水産資源を調査してきましたが、老朽化が進んでいたため、JICAはコンテ号の改修を行います。オーバーホールし、古い機材や部品を交換して新しくなったコンテ号がギニアのブルーエコノミー推進にますます貢献することを期待しています。

コメ増産・品質向上を目指すプロジェクトに高まる期待

ギニアでの一般的なコメ販売風景

ギニアの主食はコメです。温暖な気候、広大な農地と豊富な雨量など、農業とりわけ稲作にとっては好条件を備えており、コメの供給には高い可能性を秘めていますが、その自給率は7割に留まり、毎年50万トンを輸入に頼っています。

2008年のアフリカ開発会議(TICAD IV)で日本が立ち上げた「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)により、コメの生産量は10年間で倍増しました。TICAD7でも継続して取り組むことが確認され、2030年までに更なる倍増が目標とされました。ギニアは西アフリカの主要な稲作国としてCARDに加盟しています。

JICAは2017年12月から2018年12月までギニアに農業開発管理アドバイザーを派遣しましたが、引き続き特に稲作分野での協力を推進するため、2020年の早い段階で、国産米の品質向上と増産を目指す新しいプロジェクトを開始する予定です。ギニア初の本格的な技術協力プロジェクトとなります。

新たな感染症を防止するために

東レがギニアで普及を目指す使い捨て型のウイルス防護服

西アフリカのエボラ出血熱の流行は、2013年12月、ギニアの2歳の男児から始まりました。フランスのパスツール研究所によってエボラ出血熱ウイルスと確認されるまでに約3カ月もの期間を要し、その間に感染は国内外に大きく拡大していました。

流行の収束後にJICAが行ったギニアの保健セクターの調査の結果、特にウイルス診断で重要な役割を担う国立公衆衛生検査所が検査や研究、研究者の研修など必要な対策を実施できていないことが判明しました。新たな感染症の大流行を未然に防ぐため、JICAは同検査所の設備や機材を拡充するプロジェクトの準備を進めています。

日本の民間企業も存在感を示しています。東レ株式会社は、2017年にギニア政府の要請により、同社が開発したウイルス防護服1万着を提供。さらに、JICAの民間連携事業を通じて、ウイルス防護服の適切な使用法の研修と人材育成を行い、現地での普及促進を目指しています。