【開催報告】AFRI-CONVERSE 2024 #01 「アフリカ 2063: 中小零細企業の可能性と草の根の創意工夫」
2024.04.26
2024年3月15日に開催されたAFRI CONVERSE 2024 #1では「アフリカ 2063: 中小零細企業の可能性と草の根の創意工夫」というテーマのもと、TICAD 閣僚会合やTICAD9に向け、地元経済を支える中小零細企業(MSMEs)や起業家の可能性について関係者が議論しました。
近年急速な経済成長を見せるアフリカ。その中で中小零細企業が大部分を占めるインフォーマル・セクターの存在も注目されています。特にサハラ以南アフリカでは、労働人口の約85%がインフォーマル・セクターに従事し、地域の若手労働力の大部分がここに属します。こうした地元に根付いた企業は、地域のニーズに柔軟に対応し、コミュニティの結束力を高めることで、持続可能な成長基盤を築いています。
イベント冒頭、上野修平
JICA
アフリカ部次長(計画・TICAD担当)が、チュニジアでの経験を踏まえ、ローカルビジネスの重要性や可能性を強調しました。その後、上野氏がモデレーターを務め、パネリストにより、地元経済を支える中小零細企業や起業家の可能性に焦点を当てた議論が行われました。
BINA PADS(エチオピア)CEO・共同創業者のファイザ・シェムス氏は、自然由来の素材から生理用品を製造する事業の設立までの過程を説明しました。同氏は、市場に流通している生理用ナプキンは主にプラスチック製であり(地域住民にとって高価な製品)、その廃棄は環境の悪化につながることを指摘しました。シェムズ氏のビジネスは、安価で環境にやさしいナプキンの製造により、地域経済の持続可能な成長に貢献しています。また、労働力の70%を占める女性従業員のビジネススキル向上や、BINA PADSの製品ライン(例:おむつ)を拡大する構想にも触れました。
ボストン・コンサルティング・グループのアンジェラ・アハドメ氏は、JICA、ボストン・コンサルティング・グループ、AUDA-NEPADが推進するHome Grown Solutions (HGS) アクセラレーターについて言及しました。HGS アクセラレーターは、コロナ禍においてアフリカがヘルスケア用品の供給を外部に依存していた点を踏まえて、アフリカのためにアフリカ発の解決策を生み出すことを目指すプログラムです。HGSは、アジェンダ2063の目標に基づき、個別ビジネスに対するニーズの診断、資金調達の支援、各セクターにおけるパートナーとのマッチングの場を提供し、30か国に跨り28の関連企業を支援していると説明がありました。
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の高橋基樹教授は、アフリカ大陸の構造転換と中小零細企業(MSMEs)の創意工夫について説明しました。同氏は、ケニアのインフォーマル・セクターが数的に増える一方で規模が拡大していないという、いわゆる「Missing Middle」の課題に焦点を当てました。特にアフリカでは、工業化の水準が依然として低く、構造転換が適切に進展していないという経済課題への警鐘を鳴らしました。一方で、インフォーマル・セクターでは、特許による技術の保護や利益の獲得よりも、仲間内での技術の伝授や普及を重んじる傾向があることをよく理解したうえで、匠の精神を持つ職人たちの創意工夫を尊重し、これを技術の革新や産業の開発につなげる方策を考えるべきと強調しました。
UNDPアフリカ局チーフエコノミスト戦略・分析・調査長のレイモンド・ギルピン氏は、中小零細企業は所得と雇用の創出に多大なインパクトをもたらしている点に触れるとともに、インフォーマル・セクターへの投資にはコストがかかるといった課題に触れ、エコシステムを再検討し、技術や金融へのアクセスなど政策的介入を通じて潜在能力を引き出す必要性を強調しました。また、中小零細企業のスケールアップを図るには、日本のような技術立国とのパートナーシップを締結することも効果的だと指摘しました。
高橋基樹 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授
レイモンド・ギルピン UNDP アフリカ局チーフエコノミスト戦略・分析・調査長
上野修平JICA アフリカ部次長
その後のディスカッションでは、ローカルビジネスの創意工夫を促進するためには基礎教育が重要である点も強調されました。適切な教育を受けた起業家は地域のニーズに合わせた製品を生み出し、その製品がコミュニティ全体に広まることでビジネスの拡大が望めます。また、中小零細企業の事業拡大には、政府や開発機関による政策や財政支援が必要であることが指摘されました。こうした公的機関とのパートナーシップは、適応技術や市場アクセスを提供し、中小零細企業の成長を促します。さらに、投資家からの資金を通じて商業的なプラットフォームへのアクセスを促進することにも言及がなされ、資金の流動を促し、資金調達を円滑にする法制整備の重要性にも言及がありました。
このように、AFRI CONVERSE 2024 #1では、アフリカの中小零細企業の可能性と地域経済へのインパクトの重要性が強調され、こうした中小零細企業の活躍を通じてアフリカの未来が自身の手で作られていくことに期待が込められました。
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