学校現場に開発教育・国際理解教育を!

【写真】近藤 勝士さん津島市立東小学校 教員
近藤 勝士さん

■写真左:近藤勝士さん

先月に引き続き、「小中学校社会体験型教員研修」としてJICA中部で勤務されている津島市立東小学校教員の近藤先生にお話を伺います。今回は、開発教育・国際理解教育の必要性について伺っていきたいと思います。

開発教育・国際理解教育を通してどんな力が身に付いていくのでしょうか?

前回、開発教育・国際理解教育の大きな可能性と魅力に気づき、実践を行うようになったと紹介しましたが、そもそも開発教育・国際理解教育って何?と思われる方もいらっしゃると思います。簡単にいえば、どちらも「地球や世界が現在抱える課題を理解し、その課題解決を考え、よりよい未来をともに築く力を育む教育」といえます。開発教育は、外務省発信の言葉、国際理解教育は、文部科学省発信の言葉で、目指すところは同じだと捉えてもらうとよいと思います。

そして、地球や世界が抱える課題というのは、地域が抱える課題でもあり、自分たちが住む地域のことを通して、環境問題や人権問題などを考えてもよいわけです。授業の中で外国のことをとりあげないといけないわけではなく、外国語を使わなくてはいけないわけでもありません。逆に言えば、外国のことについて授業で触れたからといって、外国語を使って授業を行ったからといって、開発教育・国際理解教育につながるとは限りません。開発教育・国際理解教育においては、参加・対話・体験型ワークショップと呼ばれる手法を用いることで、自ら考え、協力して創り出していくことを重視しています。なぜなら、人権・環境・平和・共生などの問題は、解決に向けての唯一絶対の回答がないことが多く、学習者が自ら答えを見出していくプロセスが重要だからです。ロールプレイ、ブレーンストーミング、派生図、因果関係図、KJ法、ランキング、フォトランゲージ、シミュレーションなどねらいや状況に合わせて、参加型手法を用いて学習者(参加者)と共に学んでいきます。

単なる知識伝達ではなく、参加・対話・体験型ワークショップを行い、参加者相互の知識や経験、気付きから学びあうことを繰り返し体験する中で、コミュニケーションの力、分析的な思考力、合意形成能力、課題解決への意欲が、少しずつ養われていきます。

開発教育・国際理解教育は必要とされるのでしょうか?

授業実践の報告会

小学校では、2020年度(来年度)より全面実施。中学校では2021年度より、高等学校では2022年度より全面実施となります。小学校の新学習指導要領の前文には、「一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」とあります。

参加型学習で、「わたし(自己)」に関わる力(自己理解、自己肯定感、自己感情)が身に付き、「あなた(他者)」に関わる力(コミュニケーション、他社理解、多様性理解)が身に付き、「みんな(社会)」に関わる力が身に付く。そして、関わる力、参加する力も。まさに、持続可能な社会の創り手となるために必要な力を育てていくためにも、開発教育・国際理解教育が必要だといえると思います。

教育現場でのSDGsはどのように扱われるべきでしょうか?

なごや地球ひろばのSDGs展示

先ほど紹介した通り、新学習指導要領では、「持続可能な社会の創り手となる」など、SDGsに関係する文言が盛り込まれています。2015年9月に世界193か国が国連で同意した持続可能な開発目標SDGs。SDGsは、身の周りの課題を考える上での「ものさし」だといえると思います。子どもたちにもSDGsを知ってもらい、自分の身の周りの日常と結び付けて考え、SDGsを「自分ごと」としてとらえられる人財を育てていかなくてはならないと感じています。大人も子どもが共に学び、共に未来を創っていく教育活動がどの学校でも展開されていくべきです。

今回、こうしてJICA中部で研修させていただけていることを本当に感謝しています。教育関係者と国際協力の関係者が互いに連携する動きが具体化し、活発になっていくことが今後ますます求められるようになっていくはずです。そのために、私自身が潤滑油のような役割を担えたらと考えています。残すところ研修もわずかな期間となりました。最大限の学びや気づきを得て、教育現場に戻りたいと思います。