焼かないレンガの技術を世界に広める~JICA×中部企業の海外展開vol.2

【写真】亀井宏明さん亀井製陶(株) 代表取締役
亀井宏明さん

バングラデシュでJICAの民間連携事業を活用しエコレンガの普及に取り組んだ亀井製陶株式会社。
代表取締役亀井宏明さんにお話を伺いました。

原材料は廃棄物

当社の「無焼成エコレンガ」は下水道汚泥焼却灰や窯業廃土といった廃棄物を原材料に、焼かずに特殊固化技術で作るレンガです。生産を始めた1996年当時、日本ではガーデニングやエコ意識が高まっていたこともあり、公園や歩道の公共の場だけでなく、ホームセンターなど一般向けにも販路を拡大していました。
海外では住宅に多くのレンガが使用されています。とくにアジアでは急激な経済成長に伴う建設ラッシュで、世界の約7割のレンガが生産されています。一般的なレンガの製造は田畑の下の粘土層を掘り起こし、窯で焼き固めます。この過程で多くのCO2を排出するため、エコレンガのビジネス性を感じました。

雨季に国土の半分が沈む

【画像】2012年にJICAの民間連携事業に採択され、バングラデシュで現地調査を開始しました。バングラデシュは雨季に国土の半分が沈む「洪水の国」。居住できる土地は乏しく、人口密度は世界一の水準です。にもかかわらずレンガを焼くために土地をどんどん削っている状況でした。
産業が発展していないバングラデシュではエコレンガの原材料となる廃棄物が乏しかったため、川の氾濫で生まれる大量の汚泥を原材料にすることにしました。
ただ、事業はスムーズには運びませんでした。一番頭を悩ませたのは、日本のビジネスの常識が通用しないこと。エコレンガの製造方法を習得すれば土地を削らず、大気汚染防止、労働環境改善につながります。産業として隣国への輸出の可能性も広がります。しかし、こういった考えは現地の人には理解してもらえませんでした。

若い経営者も海外にチャレンジ

【画像】採択から現地工場の稼働まで、実に7年の歳月が必要でした。首都ダッカのテロの影響もあり、険しい道のりでした。規模の小さな会社が海外で事業を進めるには資金以外にも多くのハードルがあります。プロジェクトを完遂できたのは、優秀なコンサルタントやJICAなどパートナーに恵まれたことが大きい。現地のJICA担当者は青年海外協力隊の経験を持ち、バングラデシュ支援に根気よく取り組んでいましたし、環境に対する意識も非常に高いと感じました。
グローバル化を担う若い経営者にも海外に挑戦して欲しいと思います。苦労が多い半面、その経験は様々な場面で活きてくるはずです。海外事業を始めてからは社長の私が会社を不在にすることも多く、社員が自ら決めて行動する機会も増え、成長してくれたと思います。

(文・写真/中部経済新聞社)

※本記事は、2020年3月18日付中部経済新聞に掲載された内容を再編集したものです。