BE THE CHANGE YOU WANT TO SEE —世界に変化を望むなら、自分がその原動力となれー

【写真】ホバレ・デニ・モハレさんJICA長期研修員
ホバレ・デニ・モハレさん

JICA新入職員4人でインタビューを行いました

「この世界をサステナブルなものにするために、母国に限らず国際的に活躍したい」
JICAの長期研修制度で南アフリカから来日し、名古屋商科大学におけるグローバルリーダーシッププログラムで Master of Business Administration (MBA) コースに通うモハレさんにインタビューを行いました。エンジニアとしてのキャリアを広げるため経営学を学ぶモハレさん。エンジニアとしての枠に留まらず、将来この世界をより良くするために国際的に活躍するという、壮大で素晴らしい将来像を描いています。
(聞き手:JICA新入職員)

自己紹介と、来日の背景

南アフリカでの仕事の様子の写真

○簡単な自己紹介をお願いします。
ホバレ・デニ・モハレといいます。ホバレは苗字、デニは英語の名前、モハレは母語の名前です。モハレは「戦士」という意味を持っています。南アフリカには11の公用語が存在しており、名前を見ればどの言語グループなのかが分かるんですよ。

○南アフリカではどんなことを学び、どんな仕事をしていたのですか?
ヨハネスブルク大学では、電気工学を専攻していました。学位取得後、11年間Eskomという大手の電力会社に勤め、発電電力を小売業者に送電する部門でエンジニアとして働いていました。さらに働きながら大学院で物的資産管理を研究する機械工学の修士を取得しました。この分野に興味を持ったのは、既存のネットワーク機器を最適化するための技術を理解したいと思ったからです。

○JICAの長期研修にはなぜ参加しようと思ったのですか?
会社からの案内で、JICAという組織の制度を通じて日本で勉強できることを知りました。これが、私にとってJICAとの初めての出会いでした。自分の知識を深め、キャリアを広げるきっかけになると感じました。私は、「チャンスがあれば掴みたい」と考える人間で、この機会を逃すまいと思いました。他の奨学金制度も検討しましたが、JICAの制度が最も魅力的に感じました。

日本での生活

日本での留学生活の写真

○日本ではどのようなことを学んでいるのですか?
私は、名古屋商科大学の経営学修士(MBA)コースで、グローバル・リーダーシップに焦点を当てて学んでいます。

○日本で滞在する間に行いたいことはありますか?
インターンシップを通して、学術的な理論だけでなく、実践を通して日本式のビジネスを学びたいです。実践は理論通りにはいきません。理論上は物事がすべて上手く機能しますが、実践となるとそうはいかないですからね。実践によって理論を見直す機会を作りたいです。

今後の展望

インタビュー風景

○南アフリカに帰国後、MBAでの学びをどのように還元しようと考えていますか?
 私は留学生であると同時に会社員であり、常に「会社に何を還元できるのか、母国をより良くするために何が必要なのか」を自問自答しています。現時点では、教育とビジネスの分野で学びを還元できるのではないかと考えています。私の国では、MBAの授業は大学側によって既に決められていますが、日本では必須履修科目に加えて、自分の興味に基づいて授業を選択でき、柔軟性が高く興味深いです。南アフリカでも、もちろん教育制度の改編もしないといけないですが、各々が興味のある授業やコースにアクセスできる場所を作り出すことはできるかもしれません。
また、ビジネスの面では日本における家族経営とガバナンスの関係性も大変興味があります。日本の家族経営ではガバナンスにそこまで重きを置いていませんが、ガバナンスを導入することで多くの利点を得られるのではないかと考えています。なぜなら、ビジネス上の意思決定は感情的な観点からではなく、よりガバナンスを重視した合理的な観点から為されるべきだからです。私は11年間、政府系企業で働いていましたが、技術的なことが中心でビジネス戦略について考える機会がありませんでした。しかし、日本に来て家族経営や大企業等様々なビジネスの形を学ぶようになり、とても興味深い分野だと感じています。これらの知識を母国に還元していきたいと考えています。


○人生を通した夢はありますか?
特に経済分野において、南アフリカに留まらず、アフリカ、アジア、ヨーロッパ等、グローバルに持続可能な発展に貢献できる人間になりたいと考えています。不利な立場に置かれていた人たちが、持続可能な社会で活躍できる舞台を作ることで、地域レベルと世界レベルの経済成長に貢献したいと考えています。私の大切にしている言葉があります。「Be the change you want to see」というフレーズです。自分が世界に望む変化の、その原動力でありたいと、常に願っています。

母国と日本について

最後に集合写真の撮影

○南アフリカの魅力はなんですか?
南アフリカはとても素敵な国で、私は母国を愛しています。多様性に溢れ、美しい自然があり、食べ物も美味しいです。食べ物では特にshisa nyama(バーベキュー)ですね。なんと200グラムや400グラムのお肉を焼くのが普通なんですよ。日本の焼肉も好きですが、南アフリカの焼肉は別次元です!


○日本についてどんな印象を抱きましたか?
私は建築や自然がとても好きです。日本の建築は、歴史あるものから、その歴史を守りながら現代の技術革新を取り入れつつ改修されたものまであり、さらにその建築物が、色とりどりの紅葉が魅力的な秋の景観によって、印象付けられていました。
最後に触れたいのが日本人の構造的かつ保守的なコミュニケーションについてです。私自身は周りの人に対してオープンなタイプですが、日本人の方はシャイな方が多く、少しギャップを感じました。しかし、その違いが面白いのです。文化や接する人が異なれば、世界の見方も違いますし、異なる考え方を持つはずです。ですので、私は異なる考え方・信仰・文化を尊重していますし、その多様性に触れることはきっと人を成長させてくれると信じています。

インタビュアーの所感

非常に深い知見を持つ聡明なモハレさん。エンジニアとしてのキャリアを積んできた一方で、全く分野の異なる世界経済に関心を抱き、その知識の幅を更に広げ、そして深めていることが分かりました。また、自分の専門分野で自分の活躍の場を限らず、世界全体をより良くするために最適な形を見出したいという姿勢に、私たち自身も、自分が所属する組織に囚われず、一人の人間として何ができるかを考えたいと思いました。まさに世界を引っ張っていくリーダーになる可能性を大きく秘めたモハレさんが、日本で勉強し、日本を好きになってくださることは、私たちにとっても非常に幸運なことと感じます。世界各国のリーダーたる方が来日する長期研修の意義も大きく感じたインタビューでした。