海外にルーツをもつ児童・生徒の教育を考えるフォーラム2020

2020年8月13日

【オンラインでパソコンに向かいながらも丁寧に説明をいただきました】

8月12日(水曜)に、海外にルーツを持つ子どもたちの教育現場での課題に長年真摯に取り組んでいる自治体や教育委員会をはじめNPO団体職員、またJICA海外協力隊活動経験を通して幅広い知見で取り組んでいる教員の方々をお迎えし、異なる地域での事例を共有、隣接する地域での協働の可能性を探るフォーラムを開催しました。

今回のフォーラムはオンライン配信にて開催、170名を超える方々に参加いただきました。愛知、岐阜、三重、静岡の中部地域はもちろん、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地の方々にご参加いただきました。

中部地区4県の海外にルーツを持つ子どもたちへの取り組み事例を発表しました!

【ここでしか聞けない現場での悩み、思いが詰まったお話でした】

第1部は「外国にルーツを持つ児童・生徒の受け入れ態勢の現状と課題」の報告です。愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の順番に、海外にルーツを持つ児童・生徒の教育現場における特長や多様化する課題に対する実践事例を紹介していただきました。

【報告者】
報告1
愛知県 神田すみれ氏(愛知県立大学多文化共生研究所 客員共同研究員)
    池田昌代氏((公財)名古屋国際センター職員/JICA海外協力隊経験者)
報告2
岐阜県 小川隆行氏(可児市教育委員会事務局)
    青山岳史氏(可児市教員/JICA海外協力隊経験者)
報告3
三重県 和田京子氏(NPO法人 伊賀の伝丸代表理事)
    藤川純子氏(四日市市教員/JICA海外協力隊経験者)
報告4
静岡県 鈴木恵梨香氏((公財)浜松国際交流協会:HICE)
    髙畠美保氏(浜松市教員/JICA海外協力隊経験者)


はじめに、愛知県での取り組みとして(公財)名古屋国際センターの池田氏から外国にルーツを持つ児童・生徒に対して、名古屋国際センターが行う外国人の子どものための情報提供・相談事業、日本語学習支援、支援者養成事業特に「子どもサポート事業」での具体的な取り組みの説明いただきました。愛知県立大学多文化共生研究所神田氏からは課題を共に認識すること、課題を乗り越えた経験を積み重ねていくことが大切であるとの問題意識が共有されました。

次に、岐阜県可児市教育委員会事務局の小川氏から、可児市の外国籍児童生徒の未就学ゼロ対策と、生活・学習支援の推進方策等の制度面での取り組みについて、そして、可児市教員である青山氏からは、中学校の国際学級で行われている日本語指導、教科指導に加えて、道徳やキャリア教育の時間についてもお話しいただきました。

三重県四日市市教員の藤川氏からは、日本語指導が必要な児童・生徒在籍率が全国で一番高い三重県において、外国人児童・生徒と保護者のための多言語進路ガイダンスについての取り組みのお話をしていただきました。また、NPO法人 伊賀の伝丸代表の和田氏より、オンライン日本語指導の可能性についての紹介がありました。

事例紹介の締めくくりは、静岡県浜松市の報告でした。(公財)浜松国際交流協会の鈴木氏からは、市民の方々との交流会から始まった外国にルーツを持つ若者による中高生向けの支援活動「COLORS:カラーズ」についての紹介、また、浜松市教員の髙畠氏からは、日本語の力が不十分なために日常の学習活動に支障が生じている子どもたちに対して、学習活動に参加するための力の育成を図るためのJSL((Japanese as a second language)カリキュラムの実践方法を事例を通して説明していただきました。

対話を通して考えました!

第2部のパネルディスカッションでは「外国にルーツを持つ児童・生徒の教育においての支援」というテーマで、それぞれ地域における共通する課題を、隣接する地域の協働で超えていけるのか、その可能性を登壇者と考えました。

第1部の振り返りとして海外にルーツをもつ児童・生徒に対する象徴的な取り組みとして「日本語指導」「プレスクール」「進路」「社会参画」「キャリア」「情報提供」などがファシリテーターの神田氏よりあげられました。パネルディスカッションでは、それら取り組みを行うにあたっての課題と対策についてパネリストから意見をうかがいました。

課題としては、限られた予算、マンパワー、日本語指導を支援する側のスキルアップなどがあげられました。これに対し、学校、行政などが単独で取り組みを行うのではなく、地域とのつながりを強化し、連携をしていくことが大切ではないか、他の地域でも行える取り組みを共有することは貴重な財産であり、参考にしていくこともできるなどの意見がありました。

またパネリスト8名のうち4名はJICA海外協力隊の経験者であり、自身も現地では「外国人」として生活をしていました。今の教育現場では、マイノリティとしてのその経験から子供たちの気持ちが理解でき、語学を活かしながらそれぞれの国や国民性、教育に対する考え方を理解できるため、保護者対応に活かされていると報告がありました。

最後にファシリテーターの神田さんより、主体である当事者は子どもたちでありその保護者で、各自が表現する言葉を持ち、現場にいる教員や地域で教育に携わる人々と「一緒にやりましょう!」と地域を超えて取り組む事が連携に繋がり、社会を変えていく力になるのではないか、というお話でフォーラムを終えました。