【実施報告】オンライン開催 2021年度第1回国際教育研修会

2021年7月26日

  • 日時:2021年6月27日(日)12時30分から17時15分
  • 参加者:36名
  • 実施方法:「Zoom」を使ってのワークショップ

ハンセン病からコロナ禍を考える意味

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全国からたくさんの方がご参加くださいました

教員や学生、広く国際教育に関心のある方々を対象に毎年開催している国際教育研修会、今年の第1回はオンラインで開催しました。中国5県はもちろん、東京や神奈川、京都、そしてニュージーランドからご参加くださった方もいらっしゃいました。また、高校生、大学生から教員、地域活性化に取り組み方まで、様々な立場の方が画面越しにつながり、議論を重ねました。

最初のワークショップをご担当下さったのは、盈進中学高等学校の上田智子教諭です。2016年度教師海外研修参加後も継続的に授業実践を行い、昨年度はJICA中国の開発教育教員研修アドバンスコースにもご参加下さいました。そのコースでの学びを活かした学習プログラム(注)として、上田先生が作成されたのが「『ハンセン病問題』から学ぶ-排除や差別はどのようにつくられるのか、という構造を理解し、自分自身の行動を考える-」です。当日はこのプログラムにそって、ワークシートをもとに「新しい感染症」をイメージして参加者に考えてもらいました。政治家として考える感染対策と、感染者本人や家族が考える対策は異なるか、異なる場合に当事者はどのような気持ちになるかなど、グループでの意見交換を中心に考えていきました。上田先生は、過去にハンセン病をめぐって実行された政策やその結果はびこった市民の差別感情など、私たちの身近な場所で起こった歴史を解説しながら、なぜこのプログラムを作りたいと思ったのか、今後の課題などもお話下さいました。

参加者からは「ハンセン病での経験をコロナ禍でどう生かすか、過去の経験から改善していくには、知見を広げ、それを人と共有することが大事だということを学んだ」「上田先生の『差別はつくられるもの、つくるのは私たち』という言葉が心に響いた」などの感想や、「立場を変えてみることで視点が変わる、というコンセプトはとても興味深かった」といったワークショップの方法に関するコメントなど、たくさんの気づきの声が上がりました。

多様な人々が共生できる社会とは

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「誰ひとり取り残されないまち」をつくるには?

川崎医療福祉大学の山中信幸先生には、ご自身が作られた「ニッコリ駅周辺再開発計画」というワークショップを展開して頂きました。架空のまちをイメージし、どのような開発計画であれば良いまちになるのか、そもそも自分にとって望ましいまちとは何だろう、優先されるべき計画はどれか、を考えていきました。これらの問いに「正解」はありません。年齢や職業、立場が異なることで望むものは変わってきます。しかし、その優先順位に少数派の意見は入っているだろうか、声を上げられない人への配慮はされているだろうか…。さらに、外国につながる子どもが巻き込まれたトラブルをシミュレーションすることで、学校とはなにか、友人関係とは、地域とは、そして多様性とはなにか、を考えていきました。画面越しの参加者は、眉をひそめたり頭を抱えたり、首を傾げたり。その表情から、難しいテーマに悩む様子が見えましたが、「街づくりを通して、こぼれ落ちてしまう人々に寄り添って考える時間を持てたことは、自分にとって非常に有意義だった」「自分の心に無意識に根付いている差別や偏見を取り除いていくことが大事だということを学んだ」といった感想があがりました。さらに「困った子が安心して『先生、学校おもしろくないねん』とつぶやける存在でありたい」「マイノリティを尊重した教育展開に向けて、留意すべきことについて今一度考えてみたい」など、学校の先生方からの心強いコメントもたくさん寄せられました。

人も物も国境を軽く超えていく今のグローバル社会では、地域の身近な課題も世界共通の問題と深くつながっています。足元を変えることで、日本も、世界も変わっていく。JICA中国はそう信じて、行動につながる学びの機会を、これからも発信していきます。

(注)本研修会で実施したワークショップの資料、ワークシート等は以下からダウンロード頂けます。ぜひご活用ください。