【草の根技術協力事業】ラオス世界遺産の街ルアンパバーンの観光ガイドトレーナーが、インタープリテーション手法の研修を実施しました。


2024.08.26
(一社)エコロジックにより研修を受けてきたラオス世界遺産の街ルアンパバーンの観光ガイドトレーナーが、インタープリテーション手法の研修を行いました。その様子をご紹介します。
静岡県富士宮市に拠点を置く一般社団法人エコロジックは、JICA草の根技術協力事業(パートナー型)を受託し、2022年2月から2025年1月までラオスにて「ルアンパバーンの公認ガイドの技術向上を目指したインタープリテーション(※1)トレーナーの養成事業」を実施しています。
約2年間に渡りエコロジックからインタープリテーション手法を学んできた10名の観光ガイドトレーナーが、今度は実際にトレーナーとして、ルアンパバーンの公認ガイド60名に対しその手法を教えました。
3日間の日程で、1日目は理論を中心とした座学、2日目は10名ずつのグループに分かれての現場実習(世界遺産の街のカルチャーエコツアーと少数民族の暮らす村でのビレッジエコツアー)、3日目はインタープリテーションで重要なテーマ(メッセージ)を意識したアクティビティのデザインワークショップを行いました。
今回、8月10日と11日にフィールドでのトレーニングを見学しましたのでその様子をお伝えします。
※1インタープリテーションとは、心に残るメッセージを相手に伝えるためのコミュニケーション手法です。自然、文化、歴史を単なる情報として伝えるのではなく、その背後にある大切なメッセージを、解説や展示、教材、書籍などを通して伝え、楽しみや感動、気づきを人々に提供するガイドの技術です。
8月10日午後は、ロンラオ村(カム族の方が住む村)でのビレッジエコツアーの現場実習を見学させていただきました。今回のツアーには、JICA中国・四国が主催する教師海外研修(※2)に参加している小中高の教員も旅行者役として参加しました。
ロンラオ村のビレッジエコツアーでは、公認ガイドのファシリテートのもと、旅行者に対して、ビレッジガイド(村の住民であり、村を案内するガイド)が自分たちの村の伝統的な生活等を実体験や解説などを通じて案内するというものです。公認ガイドは村に旅行者を連れてきたり通訳をしたりしますが、もっとも大切なのは、ビレッジガイドを含め村の住民が伝える村の生活等をより魅力的により分かりやすく旅行者に伝えることです。
今回のツアーでは、ガイド協会のブンレーさんが公認ガイド役を務め、ロンラオ村の村長がビレッジガイド役を務めました。ビレッジガイドは、刃物を作る鍛冶や、鳥やネズミを捕る伝統的な罠や弓の使い方、もち米の蒸し方等を旅行者に教えてくれました。そのときブンレーさんは、この村の人々(カム族)がどのような生活を送ってきたのか、他の民族とはどのように違うのかを補足説明してくれ、またトレーニングの参加者に積極的に罠や弓を試してみるように声掛けをしてくれました。ビレッジガイドや村の住民の方から、直接カム族の伝統的な生活を見せてもらうだけでなく、公認ガイドが上手にサポートすることで旅行者の満足度が高いビレッジツアーを実現させていました。
このように村の住民を巻き込むビレッジツアーを実施することで、村の人々が自分たちの文化に誇りをもち、村の経済にも貢献することができるようになります。このことが、村の伝統や生活を守るイニシアティブとなり、サスティナブルな観光につながります。公認ガイドには、このような観光を促進していく役割も期待されています。
※2教師海外研修について
教師海外研修 | JICA四国 - JICA
鍛冶職人の仕事を紹介
カム族伝統の罠を紹介
カム族伝統の弓を体験
もち米の蒸し方を説明
8月11日の午前は、マイ寺をスタートして、お菓子屋さんを通り、シェントーン寺などに行く、世界遺産の街のカルチャーエコツアーの現場実習を見学させていただきました。
ガイド協会のヴィエンさんが、今回の公認ガイド役を務め、マイ寺ではお坊さんの語りによって、お菓子屋さんでは店員さんの語りによって、ラオスの仏教文化や伝統的なお菓子作りについて旅行者が分かるようなツアーを実現させていました。特にお菓子屋さんでは、お菓子の作り方やお店の歴史について、ヴィエンさんが店員さんから上手に話を引き出し、ツアーを盛り上げてくれました。
シェントーン寺では、お坊さんはいるものの旅行者に話をしてくれるお坊さんはいません。このような場所でのインタープリテーション手法は、『ダイナミズム』を意識してガイドすることとなります。お寺のどの場所で話すのか、どのような話をするのかなど、旅行者がお寺の文化や歴史を身近に感じることができるように工夫します。ヴィエンさんは、お寺の本堂にある罪を犯した人々が描かれている壁画を紹介し、壁画が意味するものだけでなく壁画の修復がどのようにされるのかなど、長い歴史を持つお寺がどのように維持されているのかを話してくれ、参加者の興味関心を引き出してくれました。
お菓子の作り方を説明
お菓子を作っている様子
マイ寺でお坊さんにお話を聞く
シェントーン寺の壁画を説明
今回のトレーニングでは、エコロジックが養成したトレーナーの大きな成長を見ることができました。約2年前のトレーニングでは、インタープリテーション手法を頭では理解しているものの、いざガイド実習をすると自分の持っている知識を観光客に一方的に伝えることに終始していました。しかし、今回のトレーニングでは、村の人の語り、お坊さんの語り、店員の語りを上手に旅行者の方に伝えることができるようになっており、トレーナーとして公認ガイドにインタープリテーション手法とはどのような手法なのかを実践を通して伝えることができるようになっていました。
ルアンパバーンでは、今後も今回のプロジェクトで養成したトレーナーが引き続き公認ガイドの養成やトレーニングに関わり、インタープリテーション手法をルアンパバーンに広めていきます!!
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