【草の根技術協力事業】 カンボジア地方行政・中央政府職員が来日し、日本の公営水道を支える仕組みを学びました
2026.08.03
一般社団法人名古屋環未来研究所がカンボジアの地方行政と中央政府研修員を対象に本邦研修を行いました。その様子をご紹介します。
カンボジア・シェムリアップ州のイン副知事をはじめとする4名の研修員が、日本の上水道事業を学ぶため来日しました。
カンボジアでは、首都プノンペンなど都市部を中心に安全な水道の整備が進んでいます。一方で、地方や農村部では依然として安全な水へのアクセスが十分ではない地域が残されています。
シェムリアップ州でも、水道公社による給水が行き届いている地域は限られており、その他の地域では、地域住民が運営する小規模な「村落水道」に頼っているのが現状です。
こうした課題に対応するため、一般社団法人名古屋環未来研究所はシェムリアップ州チクレン市ソンワイ町で村落水道支援事業に取り組んでいます。
イン副知事は、「ソンワイ町では2,902世帯が事業の恩恵を受けています。住民からも感謝の声が寄せられており、私たちにとって非常に重要な事業です」とその成果を語りました。
事業の実施過程では、井戸水からヒ素やフッ素が検出されるという予想外の問題も発生しました。しかし、実施団体による技術的な支援や関係機関との連携により対策が講じられ、安全な水を供給する体制づくりが進んでいます。
イン副知事をはじめとする4名の研修員は、国土交通省、愛知県企業庁、名古屋市、長野県木祖村、愛知県幸田町などを訪問しました。
研修員たちは、日本の公営水道が国、都道府県、市町村の役割分担によって支えられていることを学び、それぞれの自治体における水道運営の現場を視察しました。
本研修を実施した名古屋環未来研究所は、水道を住民生活を支える重要な公共サービスとして捉え、日本の公営水道の制度や運営手法について理解を深める機会を提供することに重点を置いて研修を企画しました。
今回の学びを、今後のカンボジアの水道行政に生かすことを期待しています。
名古屋市鍋屋上野浄水場
木祖村藪原浄水場
幸田町坂崎配水場(ポンプ場)
イン副知事が特に関心を寄せた視察先の一つが、人口約2,400人の長野県木祖村です。
山間部に位置する木祖村では、限られた職員数で水道事業を運営しています。施設管理の一部を専門事業者に委託しながら、水道料金だけでは不足する財源を一般会計で補い、安定した給水を維持しています。
また、木祖村は愛知県や名古屋市の主要水源である木曽川の最上流域に位置しています。森林保全活動が良好な水質・水量の確保につながり、下流域の自治体の暮らしを支えていることも学びました。
水源地域と利用地域が協力して水資源を守る仕組みは、持続可能な水道事業を考える上で大きな示唆となりました。
視察を終えたイン副知事は、「環境を大切にしているからこそ、安全な水が確保されている。カンボジアの村落でも生活環境の改善に取り組んでいきたい」と語りました。
今回の視察を通じて、安全な水を届けるためには、水道施設の整備だけでなく、地域住民による環境保全や生活環境の改善も重要であることへの理解を深めました。
また、日本の公営水道について、「国から県、市町村まで、さまざまなレベルで水道事業を学ぶことができました。日本の水道事業の素晴らしさに感服しています」と振り返りました。
カンボジアでは州政府を中心とした行政運営が基本であるのに対し、日本では自治体がそれぞれの役割を担いながら住民サービスを提供しています。その仕組みの違いも大きな学びとなったようです。
味噌川ダム防災資料館(木曽川源流ふれあい館):約3万分の1の衛星写真を用いて、木祖村にある味噌川ダムの水が木曽川を通じて名古屋市方面へ流れていく様子を確認した
カンボジア政府は「2030年までにすべての国民へ安全な水を届ける」という目標を掲げています。しかし、その達成は決して容易ではありません。
それでもイン副知事は強い決意を示しました。
「より良い村落水道ができるよう頑張っていきたい。今後も日本との協力を通じて、安全な水を必要とする人々へ届けていきたい」
その言葉には、シェムリアップ州だけでなく、カンボジア農村部全体の未来を見据えた思いが込められていました。日本で得た知識と経験が、カンボジアの農村部に暮らす人々へ安全な水を届ける大きな力となることが期待されています。