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長期研修員(インドネシア)インタビュー 2026年3月23日
アジア地域投資促進・産業振興プログラムの研修員として、広島大学 大学院スマートソサイエティ実践科学研究院 博士課程に在籍中のSIREGAR Melanton Hendra(ヘンドラ)さんに、日本での生活について教えていただきました。
日本に来る前のお仕事や、日本に留学することを決めた理由を教えてください。
日本に来る前は、インドネシアへの国内外からの投資を促進・調整する省庁(Ministry of Investment&Downstream Industry)に所属し、インフラ計画部門で勤務していました。主に、インフラ開発に関する政策分析・計画立案、投資の調整、そして長期的な開発戦略の策定に携わっていました。
この業務を通じて、インフラ計画が経済成長や地域の発展に直接影響を与えることを実感していました。そして同時に、制度的な枠組みの中ではさまざまな制約が生じることにも気づきました。
日本で学ぶことを選んだ理由には、個人的なものと職業的なものの両方がありました。個人的に日本で生活し学ぶことが長年の夢でした。日本の教育制度だけでなく、日常生活の中に規律や継続して取り組む姿勢そして学ぶことを大切にする風土が、見られる点にも惹かれていました。
一方、職業面としては、日本では学生・研究者・教授がアイデアに真剣に向き合い、常に自らを高めようと挑戦を続ける環境があると思いました。私にとって日本で学ぶことは、専門性を高めるためにも、一人の人間としても成長するためにも、自然なステップだと感じていたからです。
大学院での学習や、勉強以外でも取り組んでいることについて教えてください。
以前、私は日本で修士課程を修了し、日本の鉄道開発が都市構造や地域間のつながりにどのような役割を果たしてきたのかを研究していました。この研究を通じて、よく設計された交通システムが、経済活動や日々の移動をどのように支えているのかに強い関心を持つようになりました。研究内容は学部内でも高く評価され、この分野をさらに深めたいという思いが強まりました。
現在は博士課程で学んでおり、これまでの研究を基盤にしつつ、その範囲を広げています。博士論文の研究は引き続き、鉄道を核とした都市開発に軸足を置きながら、より広い視点から都市モビリティを検討しています。特に、交通システムの中核を担う鉄道と、「ライドヘイリング」のような新しい移動サービスとの相互作用に着目しています。
私の研究では、交通需要管理の政策がこれらの手段をどのようにより良く統合し、都市の効率性とアクセシビリティを高められるのかを探求しています。 博士課程でこの研究を続けることで、日本の鉄道を基盤とした都市発展から得られる知見を、インドネシアが抱える課題の解決に結びつけたいと考えています。また、急成長する都市地域にとっての政策立案に生かせる知見も生み出すことを目指しています。
日本に来たばかりの頃と今とでは違いはありますか?
はい、日本での以前の経験と現在の滞在にははっきりとした違いがあります。修士課程の学生として初めて日本に来たときは、すべてが新鮮に感じられました。
博士課程の学生として日本に戻ってきた今は、以前とは違って感じられます。ライフステージや研究面での責任が変わり、そのことが人との関わり方や時間の組み立て方にも影響しています。初めての滞在以来、私は日本の方々と関係を築くときが最も心地よいと感じており、その思いは今も変わりません。
日本への愛着はこれまでと変わりませんが、日本での過ごし方は以前よりも落ち着いた、より内省的なものになりました。今では、日々のリズムや季節の移ろい、そして日常のささやかな出来事にこれまで以上に目を向けるようになり、そうした一つ一つが、日本で暮らすことの理解や味わいを深めています。
日本での最高の瞬間は何でしたか?
日本で過ごしたなかでも、最高の瞬間の多くは、修士課程の学生としての経験にあります。日本人の友人たちとの深い交流を通じて得られたものが大きかったと感じています。日本人の学生と一緒に過ごす中で、授業の枠を超えて、彼らの価値観や文化、生活のあり方について学ぶことができました。
友人たちとはよく旅行にも出かけ、友人のご家族と一緒に広島カープの試合を観戦したり、一緒に北海道を訪れたり、ゴルフやカラオケといった日常的な活動も共に楽しみました。また、ホームステイプログラムにも参加し、日本の家庭で一日を過ごし、親御さんやお子さんとともに日常の暮らしを体験しました。そして、特に印象深かった出来事は、修士論文が評価されたことであり、それは日本での学びの集大成を象徴する瞬間でした。
東広島での滞在はまだ長くありませんが、最近、JICAの方々や留学生仲間とともに西条町の酒まつりに参加し地域のパレードに加わり、地域の雰囲気を味わうことができました。こうした時間が、私と日本との個人的なつながりを強めてくれています。
日本滞在中に日本人と交流することはありましたか?
私はこれまでに地元の日本人と頻繁に交流してきました。修士課程の学生として滞在していた頃は、親しい友人の多くが日本人の学生やそのご家族でした。広島市の若い日本人家庭を訪問し、料理をしたり、子どもたちと遊んだり、日常生活について話したりして過ごしました。家族の家に迎え入れていただき、このようなささやかな時間を共有できたことは、私にとって強く心に残る経験となりました。
少しずつ新しいつながりを築いています。私はできる限り地域のイベントや学校訪問、地域の活動に参加したいと考えています。地元の人々と直接関わることは、日本での学びや生活を理解するうえで、今でも大切な部分です。
ご自身についてのことや、現在住んでいる町(東広島市)での普段の生活などについて教えてください。
日本で生活する中で深く理解するようになったことの一つは、日々の何気ない行動の中に、表面的な意味を超えた価値が込められているという点です。たとえば、日本で食事の際に「いただきます」と言うことは、単に言葉を発するだけではなく、食べ物への敬意、それを作ってくれた人への感謝、そして一緒に食卓を囲む人への思いやりを含んでいます。こうした日々の瞬間を通して、意識を向けること感謝すること、そして主体的に向き合う姿勢が、シンプルでありながら大切なのだと理解するようになりました。
私が印象深く感じているのは、ルールが圧力によってではなく、自身で意識して守られている点です。規制が厳しい場合でも、人々は落ち着いて、そして自律的にそれに従う傾向があります。静かな大学タウンである東広島で暮らす中で、よりゆっくりとした生活のペース、きちんとした日常の習慣、そして地域社会の中での互いを尊重するやり取りを通して、このような生き方を身近に経験することができました。
(少し先の話ですが2029年3月末の)卒業後、日本で学んだことを仕事にどのように活かしていきたいと思いますか。また、日本のコミュニティや人々と連絡を取り合う予定はありますか?
卒業後は、日本で学んだことを、日々の実務の中で生かしていきたいと考えています。私に最も影響を与えたのは、特定の理論ではなく、仕事の進め方そのものでした。たとえば、会議前の徹底した準備、時間を尊重する姿勢、議論のフォローアップ、そして細かく管理されなくても自ら責任を持って仕事に取り組むことなどです。こうした働き方を経験したことで、私自身の職務への向き合い方が大きく変わりました。
学業を終えた後も、日本の同僚や友人、コミュニティとのつながりを保っていきたいと考えています。この関係は、共に積み重ねる日々の習慣や信頼関係、そして時間をかけて重ねてきた交流によって築かれるものです。日本の働き方や日常生活に触れ続けることで、国や職業の枠を越えて強いつながりを保ちながら、学び続けていければと思います。
これからのJICA 参加者へのメッセージをお願いします。
日本での留学をぜひお楽しみください。日本の素晴らしい大学で学ぶ機会はだれにでもあるわけではないです。そして、講義や実験室や教科書以外にも学習できることはあります。もし学びが授業や本だけなら、わざわざ日本まで来る必要はないでしょう。あなたは日本で生活しています。つまり、生活も勉強の一部です。
多くの重要な学びは教室の外で見つかることがあります。自分の居心地の良い場所から一歩踏み出し、母国の人だけでなく、地元の人々と時間を過ごし、日本人学生と友達になってみてください。日常生活も大切にしてください。
そして、戦後の日本がどのようにして自らを再建し、伝統を守りつつ、近代的で綺麗好きで規律を尊重する国として知られるようになったのかを考えてみてください。人々がどのように生き、どのようにルールを尊重し、目立たず静かだけど責任感あふれる行動をとっているかを観察してください。日本での時間を有効に活用してください。