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イブラヒム・ダウダ・ダウダさん

長期研修員(ナイジェリア)のインタビュー 2026年3月24日

食料安全保障のための農学ネットワーク(Agri-Net)プログラムの研修員として、広島大学 統合生命科学研究科 博士課程に在籍中のMr.IBRAHIM Dauda Dauda(ダウダ)さんに、日本での生活について教えていただきました。

日本に来る前のお仕事や、日本に留学することを決めた理由を教えてください。
 ナイジェリアでは、連邦首都地区庁(Federal Capital Territory Administration、FCTA)の獣医官として、首都に暮らす約500万人の食の安全、特に肉の安全を守っていました。私の日常業務では、牛やヤギ、そして鶏(1,000羽以上)の安全性を確認する検査を行っていました。
 私の転機となったのは、2024年に北海道で参加したJICAの研修でした。6名の参加者の中で、私は最年少であり、唯一のアフリカ出身者でもありました。
 日本の食の安全基準がいかに徹底されているかを目の当たりにしたことは大きな刺激となり、この卓越した日本の仕組みを母国へ持ち帰りたいとの思い、博士課程を目指す決心をしました。

広島大学大学院での学習や、勉強以外でも取り組んでいることについて教えてください。
 現在、私は広島大学でウシの生殖補助技術(Bovine Assisted Reproductive Technology)を専門に研究しています。人工授精、胚の培養、移植といった “生命のはじまりに係わる科学” に携わっています。これらのバイオテクノロジーを最適化する方法を探究し、家畜の遺伝的改良や生産性向上をめざしています。そして、従来型の畜産から、データに基づく科学的アプローチへと進化させることを目標としています。

日本に来たばかりの頃と今とでは違いはありますか?
 日本に来た当初の私はただ見ているだけの“観察者”でしたが、今は“参加者”になってきたと感じています。変わったのは、言語だけではなく、私自身の考え方もです。日本の「規律のある」文化が私の生活にも深く浸透し始めてきています。
 文化的な違いに圧倒されていた状態から、静かで秩序ある日本の社会を心から尊重するようになりました。かつて日本を“ハイテクの国”として見ていた私の視点は、意図的に生活を過ごしている人々がいる国として捉えるよう変化しました。

日本での最高の瞬間は何でしたか?
 私にとって最高の瞬間は、Africa-Japan Youth Campでグループリーダーに選ばれたことでした。「フードバリューチェーン」をテーマに議論を導く中で、ナイジェリアでの現場経験と日本のイノベーションを結びつけることができたのです。そのとき私は、自分が単なる留学生ではなく、二つの大陸をつなぐ存在なのだと実感しました。

日本滞在中に日本人と交流することはありましたか?
 頻繁に交流しています。研究室の仲間以外にも、JICA中国での様々なプログラムを通じて地域の方々と積極的に関わっています。こうした交流はとても重要だと感じています。いわゆる“外国人の殻”を破り、本当の意味での相互理解を生み出してくれるのです。 私自身がナイジェリアの文化を地域の方々に紹介する一方で、日本の「おもてなし」の精神についてもより深く理解することができました。

国際理解のためのイベントを実施してみたい気持ちはありますか?
 東広島のコミュニティへの私なりの恩返しをしたいと考えています。公衆衛生に興味のある日本の若い世代と、ナイジェリアとをつなぐ“生きた架け橋”をつくるイベントができれと考えています。参加者には、「近所に住むナイジェリアから来た研究者が、地域の大学で学び、より良くより安全な世界をつくろうとしている」ということを心に刻んでもらえるようなイベントを実施してみたいです。

ご自身についてのことや、現在住んでいる町(東広島市)での普段の生活などについて教えてください。
 東広島での暮らしは、まじめさと楽しさがちょうど良く混ざり合っています。時間があればバスケットボールをしたり、旅や料理を楽しんだりして、心のバランスを保つようにしています。
 日本の食べ物は大好きですが、ナイジェリア人としての心もしっかり残っていて、いつも自分用のスパイスを欠かさず持ち歩いています。なぜなら、日本の味にはどうしても“あの辛さ”が足りないと感じてしまうからです。ここで暮らす中で学んだのは、新しい文化を受け入れながらも、自分自身の“スパイス”を失う必要はないということです。

( 少し先のことですが2029年3月末の)卒業後、日本で学んだことを仕事にどのように活かしていきたいと思いますか。また、日本のコミュニティや人々と連絡を取り合う予定はありますか?
 私はナイジェリアの勤務先であるFCTAに戻り、国家レベルの家畜繁殖センターの設立を提案し、その実現に向けて取り組むつもりです。私は単に獣医でありたいわけではなく、家畜分野の改革者になりたいと考えています。そして広島大学やJICAとのつながりを今後も維持し、将来のナイジェリア人獣医師たちが日本で研修できるようなパイプライン(絆)を築いていくつもりです。

今後来日するJICA長期研修員へのメッセージをお願いします。
 あなたの人生はもう新しいステージに入っています。その変化を受け入れ、自分のペースで進みながら、ぜひ楽しんでください。どんな背景を持つ人でも、この道を歩んでいけば、きっと大きな成功につながると私は信じています。自分に優しく、芯をしっかり持ち、この経験そのものを楽しみながら、誇れる自分へと成長していってください。