JICA研修員と話すHIROSHIMAピーストーク ~なぜ?繰り返される内戦 世界で一番新しい国・南スーダン~
2021.12.06
2年ぶりの開催となるHIROSHIMAピーストークを、11月27日(土)、広島市竹屋公民館で開催しました。今回は、世界で一番新しい国・南スーダンを取り上げ、何度も繰り返される内戦の原因について理解を深めました。コロナ感染防止対策のため人数を限定しての開催となりましたが、大学生から退職された方まで、幅広い年代の方々18名が参加されました。
ゲストスピーカーは、広島大学大学院 国際平和共生プログラムで学ぶカミスさんです。南スーダンは、日本人にはあまり馴染みのない国なので、まずは国の紹介から開始。英語が公用語であるとともにすべての原住民語が国語として認められていること、国土の70%で農業が可能であるものの、その80%以上がまだ手付かずのままの自然豊かな国であること等を学びました。
南スーダンの紹介「紛争地という情報しか知らなかったが,豊かな自然,人々がいることが分かった。」
(参加者の感想)
特に参加者の心に刺さったのは、大人の識字率が34.5%という事。識字率が低いのはなぜなのか、何とか対策がとれないのかという質問に対するカミスさんの回答では「教育も確かに大切だけど、それが最優先事項ではないんです。」という言葉にハッとさせられました。それだけ南スーダンの状態は深刻だということなのです。
お国紹介の後は、ワークショップ「風船取りゲーム」を行いました。参加者が4チームに分かれて、出来るだけ多くの色の風船をなるべくたくさん集め、それを3回繰り返す簡単なゲームです。まずは全員が目を閉じてイメージを膨らませます。「皆さんは今、日本ではない、ある貧しい国の国民です。限られた資源や土地、食糧で暮らしています。目の前にある風船は、土地や水、食料、天然資源です。家族や同じ部族の仲間のために、少しでもたくさんのもの、風船を集めなくては生きていけません。」
1回目、誰とも言葉をかわさないで風船を取り合いました。グループごとに風船の数に大きな差が出ました。他のグループの風船を奪ってきた人もいて恐怖を感じたという感想もありました。
2回目、グループ内で話し合いをした後、風船を取り合いました。グループごとの風船の数の差が小さくなり、奪う人もいなかったようです。
3回目、グループを超えての交渉や話し合いをOKとしました。他のグループと交渉して持ってない色の風船を得るグループがあり、風船の色や数が平均化されました。もちろん他のグループから奪う人もありませんでした。
「風船取りゲーム」で一斉に風船を取りに行く参加者。恐怖を感じた人もいました。
このゲームを通して、カミスさんは3つのポイントを挙げました。コミュニケーションの大切さ、相手を理解することの大切さ、そして人間の心に潜む欲。
3つのポイントを心に置いて、3度の内戦についてのプレゼンが始まりました。第一次内戦は独立前、スーダンだった時。北部の大多数を占めるムスリムにより、イスラム化・アラビア語化政策が実施され、キリスト教徒の多い南部スーダンとの内戦へと発展。その状況が1972年のアディスアベバ和平合意まで17年間続きました。「お互いの宗教を理解することやコミュニケーションが不足していたことが分かりますよね。」とカミスさん。
11年後、スーダン大統領が和平協定を破棄したことで第二次内戦が勃発、21年間の内戦へと突入します。その後、2005年の南北包括和平合意を経て2011年、南スーダン共和国が独立しました。
約半世紀にわたる内戦を経て、平和な南スーダンが誕生すると誰もが思ったに違いありません。しかしそのわずか2年後、かつては独立を目指して共に戦った大統領と副大統領の争いが、ディンカ族とヌエル族の民族間の争いに発展し三度目の内戦となったのです。これにより400万人以上の人が難民または国内避難民として自宅を追われることになってしまいました。
カミスさんは言います。「国の指導者であるなら、国民のためにまず考えるべきだが、南スーダンではそれができていない。指導者が第一に考えているのは自分の利益なのです。これが風船ゲームでの”欲の心”なんです。」
2016年7月、杖をついた老女と孫たちが、戦火に追われ逃げてくる光景を目の当たりにしたカミスさんは、この日を境に戦争に関するいかなることにも反対する決意を固めたと語ってくれました。彼の将来の目標は、よりよい南スーダンを作るための学習施設を作ることです。
プレゼン終了後、参加者から多くの質問や感想がありました。その中の1つに「紛争や内戦の原因について知り、この問題が普段の生活でも必要な事だと感じました。」という感想がありました。紛争は遠い世界の出来事ではなく、世界平和は身近な小さな平和の積み重ねにより実現できるのかも知れません。カミスさんだけでなく、この日参加してくださった皆様全員が、世界平和への一歩を踏み出してくださることを願っています。ご参加いただきありがとうございました。
感想を発表する参加者。「体験することで紛争の原因をより実感できた。」(参加者の感想)
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