【実施報告】島根県の「外国にルーツをもつ子どもの学習支援事業」に連携しました

2023.09.05

島根県は全国でも外国人増加率が高い県です。同地で長く多文化共生の地域づくりに取り組んでいる公益財団法人しまね国際センターは、昨年から「外国にルーツをもつ子どもの学習支援事業」を展開しています。これは、県内に暮らす外国につながる子どもを対象に、学習言語習得や学校の授業参加、受験勉強にハードルを感じている外国にルーツをもつ子どもへの学校外における学習支援や居場所づくり等を通じ、外国にルーツをもつ子どものキャリア形成に寄与することを目的とした連続事業です。今年度はJICA中国も参画し、2つの企画を協働で実施しました。

センパイと話す、学校のこと、勉強のこと、将来のこと…

2023年7月29日(土)、「外国にルーツをもつ子どもの交流会『先輩に聞こう!-勉強のこと、仕事のこと、夢のこと-』」が開催されました。島根県の中でも最も外国人住民が多い出雲市をメイン会場に、浜田市、松江市の3か所に会場を設け、県内に暮らす外国につながる中高生が会場から3名の先輩とオンラインでつながりました。
交流会に参加してくれた先輩は、中国ルーツの張睫新さん、ペルーとパキスタンにルーツをもつ星玖 藤原 愛紗さん、元JICA日系サポーター研修員で2022年10月から2023年1月まで出雲市内で活動した井出リエさんの3名です。それぞれが子どもの頃のことや高校生活、現在の暮らしなどをそれぞれ率直に語ってくれました。特に参加者も気になる高校受験では、学校選びに迷ったことや、教員から地域で最も学力の低い高校を推薦された悔しさから1日3時間の睡眠で猛勉強し、第一志望の高校に入学したエピソードなど、感情豊かに日本語で話してくれました。
全体で体験談を聞いた後、参加者は同じルーツ、言語の先輩と個別に話す時間を持ちました。ここでは母語で趣味のこと、将来の夢などを話し、自由に交流してもらいました。
外国にルーツをもつ子どもが日本で暮らすとき、日本語を習得すること、そもそも日本の学校で学ぶことそのものにモチベーションが上がらないことが多々あります。自身の夢のために来日した留学生や、経済的理由などから日本で働くことを決めた大人と異なり、自分の気持ちとは別に日本で暮らさざるを得なくなった彼らが、少しでも明るい将来像を描くために必要なのは憧れの先輩ではないでしょうか。同じ環境に身を置いた3名の方の言葉や今も夢を追う姿から、参加してくれた中高生が少しでもパワーをもらえたなら良いな、と思った1日でした。

先輩の話を聞いてみよう

母語で先輩と話してみよう

外国にルーツをもつ子どもを支える地域とボランティア

2023年8月5日(土)、「外国にルーツをもつ子どもの学習支援ボランティア養成講座」が開催されました。しまね国際センターは年間を通じて外国にルーツをもつ子どもを対象にした学習支援教室を主宰しています。そこでの活動を希望するボランティアが、支援の在り方や支援方法について学び、活動に活かせるようになることを目的に行われたのが本連続講座です。
初回のこの日、JICA島根デスクの舛本推進員は浜田会場へ、JICA中国職員は出雲会場へ出向き、ワークショップを行いました。これから接する子どもたちの気持ちを少しでも実感できたら、と、言葉が通じない環境で伝えたいことが伝わらないもどかしさ、相手のやっていることが理解できない不安などを簡単なゲームを通じて疑似体験して頂きました。
その後、外国にルーツをもつ3名の方が自身の体験談を話してくれました。交流会にも参加下さった星玖 藤原 愛紗さん、中国ルーツの姚 藝さん、そしてこの日もブラジルからオンラインで参加してくれた元日系サポーター研修員の井出リエさんです。井出さんは、小中高校それぞれの年代で場所や相手によって言語を変えて過ごしてきたこと、日本とブラジルそれぞれで様々な仕事に就く中で見えてきたこと、2つのルーツをもつ自分が日本のボランティア希望者に伝えたいことなどを正直に話してくれました。また、参加者からも「日本の良いところ、問題だと思うところはどこか」、「外国にルーツをもつ子どもが安心して暮らせる地域にするには、どんな取り組みが効果的か」など沢山の質問があがり、双方向の交流となりました。
その後、島根県教育委員会、出雲市教育委員会の方からそれぞれの取組みを伺い、行政ができること、市民一人ひとりができることを考える機会にもなりました。

島根県に暮らす外国人住民の4割がブラジル人となっており、また、ベトナム、フィリピンにつながる方も増えています。そして、外国にルーツをもつ子どもは支援が必要な存在であると同時に、今後の日本の地域社会の強力な担い手でもあります。
JICAが多文化共生に取り組んでまだ日は浅いですが、各国に拠点を持ち、事業を展開しているJICAができることがきっとあるはず。そう信じて、私たちは開発途上国での経験という強みを生かしながら、これからも地域の皆さんと連携してまいります。

異文化理解ワークショップの様子

当事者による体験談

元日系サポーター研修員の井出さんもブラジルから参加

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