【実施報告】教育から考える多文化社会-第1回国際教育研修会-

2023.07.11

2023年7月1日(土)の13時から16時、教育の視点で多文化共生を考えるセミナーを会場参加とオンラインのハイブリッド形式で開催し、全国から計166名もの方がご参加くださいました。
地域で生活する外国の人たちが増えるにしたがい、教育現場でも海外につながる子どもたちが増えています。このような子どもたちが、自分らしく学校生活を送ることができるために、学校でできること、地域の人たちができることは、どのようなことなのでしょうか。
それぞれの場所で活動されているゲストからお話をお聞きし、トークセッションを行いました。

ゲストの皆さんのトークセッション

小学校の教師時代の体験が、活動の原動力に

最初にご講演頂いたのは、東京外国語大学多言語多文化共生センター長で准教授の小島祥美さんです。
先生は、今から30年ほど前に、小学校教諭をされていました。その時であった、外国の子どもたちに何もできなかったという思いが、その後の先生の活動につながっていきました。
神戸市長田区で1996年、阪神淡路大震災の翌年に被災した外国人住民のサポートをされていたころのお話や岐阜県可児市で行政と地域活動している人と協働で外国籍の家庭をすべて訪問。聞き取りして、調査したことなどの事例のお話を聞きました。そして、クラスに外国の子どもたちがいるからできる教育について、また、子どもたちの理解度を測る方法などを事例を交えて、具体的にお話しいただきました。

具体的な事例を交えた小島先生の講義

学校でできること、地域でできること

後半はそれぞれの現場で課題に取り組む2名の方に、事例を基にお話頂き、そのお話をもとにトークセッションを行いました。
まず、元広島市立中学校理科教諭で、日本語学習教室を担当されていた菊池厚子さんよりお話をお聞きしました。日本語学習教室では、母国で習わなかった教科の補習や各教科の指導の実施、放課後を利用した総合的学習の支援やクラスのみんなと一緒にやりたがっている合唱祭の歌の練習など行事に参加するための支援を行っていたこと。それに加えて、何かがあって、日本語教室に子どもが来たときに、居心地の良い場所にしておくことが大切等、運営するうえで先生が気を配られていた点をお話しいただきました。
また、教員同士でも細かく情報交換したり、担任だけでなく、他の教員にも子どもたちに関心を持ってもらえるように、学習教室の通信を教員向けに出して、そこで国際交流関係のイベントや本を照会するなどの工夫も教えていただきました。

学校での取り組みをお話ししてくださった、菊池厚子先生

次に、呉市の「ひまわり 21」「ワールド・キッズ・ネットワーク」代表の伊藤美智代さんから、日々の活動のお話を中心にお話ししていただきました。現在、色々な機関や人と連携することを大切に運営されていること、子ども日本語教室では、参加者の子どもだけでなく、お母さんと下の子どもも一緒に来るので、それをチャンスととらえ、3~4歳のころから色々なことをしていく。自宅では、どうしても母語が多くなるので、遊びながら日本語や鉛筆に慣れる体験をするなどの工夫を教えていただきました。
また、参加者のお母さんたちが翻訳や写真提供をして、外国で初めて日本の学校に行く子どもと保護者に向けたガイドブックを作成したこと等もお話しいただきました。

これらの事例を踏まえて、トークセッションを行いました。
途中から、伊藤さんの地域日本語教室に子どもを通わせている中国出身のお母さんも参加されて、体験をお話ししてくださいました。
母語も大事、日本語も大事と先生たちから言ってもらえると、お母さんたちは嬉しい、1時間でもいいので自分たちのルーツのある国について学べる時間があるといい、ということに加えて、一人でできることには限界があるが、仲間ができるとできることは広がっていく、連携する意味はそこにあると思う、といった意見が出ました。

地域での活動の様子をお話しくださった、伊藤美智代先生

参加者からは、
・(学校で週に1時間、外国の子どもたちの授業をしている)時間でできることは限られていますが、その子の自己肯定感を高めたり、かかわっていくだけでも意義があるなあと感じています。
・(一般社団法人で)異文化理解の活動を進めております。日本人の意識が少しでも前に進むよう努力を続けていきます。
・若手のボランティアが減っていることから、私たち学生が積極的に日本語教室やボランティアに関わっていきたいと思いました。
などの感想がありました。

「多文化共生」と言うと堅苦しく感じられますが、本当は一人ひとりが繋がっていって、当たり前に地域に存在し、活動していることなのではないかと先生方のお話をお聞きして思いました。これからもJICA中国が地域のつながりの大きなハブになれるように、皆さんと連携し、よりよい地域づくりをお手伝いしていきます。
(報告:JICA中国 市民参加協力課 黒崎尚子)

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