【広島県】2024年度JICA研修員と話すHIROSHIMAピーストーク~パキスタン編

2024.12.12
アッタさんから「パキスタンとアフガニスタンの関係」の話を聞く参加者の皆さん
JICA中国では、「JICA研修員と話す HIROSHIMA ピーストーク」として、毎年、世界各国の研修員が日本の市民に対して自身の紛争経験や平和に対しての思いなどについて話してもらう機会を設けています。
2024年11月30日(土)、広島コンベンションホールでJICA研修員と話すHIROSHIMAピーストークを開催しました。今回は、広島大学の国際協力研究科で学ぶパキスタン出身のJICA留学生のアッタさんがスピーカーを務めてくれました。HIROSHIMAピーストークでは、今までパキスタンの話を取り扱ったことがなく、この度初めてパキスタンについて語るスピーカーとなるため、アッタさんは張り切って会場へと向かいました。
この日のために、美しいパキスタンの伝統衣装、サルワール・カミーズを着て登壇したアッタさんが最初に紹介したのは、パキスタンの国歌です。国家と共にあわせて美しい山々などの自然、賑やかな都市の様子や、そこに暮らす人々がスクリーンに映し出され、パキスタンのイメージがつかみやすくなりました。次に、地図を指し示し、パキスタンの位置や、パキスタンにある4つの州それぞれの地理的な特徴、宗教、伝統的な工芸品、食べ物など文化を紹介してくれました。「パキスタンに四季があることや、4つの砂漠があることを初めて知り、パキスタンへの理解が深まった」、「パキスタンのことを全然知らなかったので、直接生の声を聞いて、より深く知れたと思います」といった感想が多く寄せられました。広島の皆さんにパキスタンを知ってもらうことが、アッタさんも嬉しいとのことで、双方にとてもよい機会となりました。
アッタさんは、地理的状況から来る、隣国のアフガニスタンとの関係について、またインドとのカシミール問題について、なぜ問題になっているのかを、わかりやすくまとめてくれました。「国境を接しているということは、日本にはない感覚です。これが国と国との緊張を生むし、問題を難しくもしています。どちらの国との関係においても度々出てくる国境や管理ラインにより、資源を持つ地域、教育の問題、家族離散の問題などが、なかなか解決に至らない問題となっています。国と国が争って軍事費をどんなに積んだとしても、その土地に住む人たちのことは考えられているのでしょうか?本当は領土問題などではなく、その土地に住む人々が運命を選択する権利があるはず。」とアッタさん。「紛争により、その地域の不安定が続く限り、経済の発展もなく、教育も安定せず、そこに住む人々は安心した生活を送れません。平和を促進させるために、世界的な協力と支援をパキスタンのためにお願いします。」と訴えました。
また、パキスタンもインドも核兵器を持つ国であるが故に、もし核兵器を使えば、大変な事態になることにも触れ、パキスタンは、平和的な解決に向けて努力しなければならないことを改めて強調しました。そして、パキスタンだけではなく、世界に目を向け、問題の起こっているパレスチナなど、人道的に支援が必要な国や地域には、日本の皆さんに協力をお願いしたい、と国際協力の意義を訴えました。参加者の皆さんも、漠然としたイメージだったパキスタンから、アッタさんの国としてのパキスタンの話を聞き、紛争がもたらす一人一人の生活について知ることで、より具体的に、平和な日本に住む事のありがたさについても、感じられるようになったようです。
今回のピーストークでは、休憩にティータイムを設けました。アッタさんが朝早くから、3つもポットを用意して準備してくれたのは、パキスタンのミルクティー。カルダモンを加えて紅茶を煮出します。美味しく入れるコツは、煮詰め過ぎないこと。日本人の味覚に合わせて、甘すぎないように砂糖を調整してくれました。おかげで、「とても美味しい」と参加者の皆さんにも大好評です。
アッタさんと同じ広島大学で、パキスタンの教育について研究している方が参加者の中におられ、追加情報をみなさんに披露してくださいました。パキスタンでは、宗教上お酒を飲む習慣はありませんが、その分、お茶とお菓子をふるまってコミュニケーションを深める、お茶の文化が浸透しているそうです。国境を挟んだ紛争の話の間にほっと一息、貴重なチャイの時間となりました。
最後に、アッタさんがなぜ広島に来たのか、会場から質問がありました。アッタさんは、小さなころ、広島と長崎で核兵器が使われたことについて知り、何故このようなことにならなければならなかったのか、と心に残っていたこと、その後、JICAの研修に応募する際に選択肢に広島大学があったことで、広島に行きたいと考えたと話しました。現在は東広島に住んでいますが、自身の子どもたちにも、広島の地で何が起きたかを知ってほしいと思い、広島平和記念公園に何度も家族で足を運んでいるとのことでした。今回の参加者は、平和について常に思いを馳せるアッタさんから話を聞くことでパキスタンを知り、チャイを飲むことでパキスタンを感じることが出来ました。まずは知ること、身近に思う事が一つのスタートになります。小さな積み重ねで、人がつながり、今回、参加してくださった人から、世界の平和につながっていく事を願っています。ご参加いただきありがとうございました。
会場からの質問に答えるアッタさん
アッタさん手作りのカルダモンのチャイ
終了後、アッタさんと参加者(高校生)の交流(通訳を介して)
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