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【鳥取県:実施報告】鳥取県教育センター主催「ESD、SDGsの視点から多文化共生を考える」研修

#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.12.16

異文化疑似体験ゲームを終えて意見交換

人口減少が加速する日本の中でも、人口最小の県として知られる鳥取県は、地域の活性化に強い意識を持ち、持続可能なまちづくりに取り組んでいます。そのため、県はSDGs未来都市として選定されるなどSDGs先進県としても注目されています。

また、鳥取県が公表している外国人住民数の推移(2023年12月時点)を見ると、県内の外国人住民の人口は、過去最高となっていることが分かります。学校現場でも外国につながる子どもたちが増え、先生方にとっても、「多文化共生」を目指すべく異文化理解や国際的な視野を持つ人材を育てることが課題の一つになっています。

こうした背景から、2024年11月26日、持続可能な社会の創り手や地球市民の育成に向けて、ESDの視点を生かした国際教育の意義や進め方を学ぶことを目的とした教員対象の研修を鳥取県教育センターが開催し、JICAが講座を担当させていただきました。

シミュレーションしてみよう!-もし異文化に出会ったら?-

最初に、先生方には異文化を疑似体験していただくためのカードゲームをしていただきました。異文化に出会った時、人はどんな対応をするのか、どんな気持ちになるのかを想像をするきっかけを作るためのゲームです。ゲームの途中、突然手を止めてじっとテーブル上のカードを見つめる先生や、混乱して思わず顔を見合わせる先生たち、「?」が止まらない先生がたくさんいる中、淡々とゲームを続ける先生など、いろいろな先生方の姿を見ることができました。

ゲームをしている間の気持ちを共有していただいたところ、一番多かったのは「なぜ?」という疑問でした。「どうすれば伝わるだろう?」「私が正しいと思うのになんで?」という混乱、また、違和感がありながらも「まあいいや、放っておこう」と思った、というような少し冷めた意見もありました。外国人だけではなく、日本人であっても全く違う価値観を持った身近な人に対して、同じように感じることはあるのではないでしょうか。このゲームをもとに、日常生活にあふれる異文化をグループ内で掘り起こし、色々な立場の人の状況や気持ちを想像して意見交換していただきました。

体験談「外国につながる子どもを持つ保護者の視点から」

異文化を疑似体験をしていただいた後は、外国につながる子どもを持つ保護者の体験談を聞いていただきました。現在の鳥取県国際協力推進員は外国で生まれ育った二人の子どもを持つ保護者です。本研修では、JICAスタッフとしてではなく、保護者の立場で登壇し、自身や子どもたちの異文化体験をご紹介しました。外国で生まれ育った子どもたちにとっての「常識」について、日本で暮らし始めた瞬間、「あれもダメ、これもダメ」だらけになり、「なんで?」、「私の何が間違っているの?」の質問を家で繰り返す日々だったこと、その後、日本文化に順応する一方で子どもたちの中で少しずつ失われていっているように見える自己肯定感や個性について、お話しました。

体験談の後、グループ内で自由に話し合っていただきました。印象的だったのは、外国につながる子どもたちが日本の子どもたちとある程度同質化するのは日本で暮らす限り仕方がないといった意見は全くなく、むしろ児童生徒全体の問題として、多様性や自己肯定感について考える必要があると思っている先生方ばかりであったことです。例えば、「なぜいけないことなのかを説明することができないルールが学校にはたくさんあり、子どもたちは不満があっても言わないし、そんな自分に蓋をしているような状況では、自分のことを好きになれないのではないか」、「そもそも生徒たちは日々の宿題や厳しい校則に疲労している部分はあると思う」などの意見が出ていました。授業のサポートについても、同様です。「外部からのサポートが充実すれば、外国につながる子どもだけではなく、どんな子どもにもしっかり対応できる学校に近づくことができるのでは」という学校全体を良くすることを意識した発言がありました。

持続可能な社会を目指して

「外国人労働者に選ばれる国」を目指す日本では、先生たちへの負担が今後さらに重くなることが容易に想像されます。通常業務に加えて、特別なサポートが必要な生徒への対応、そんな中で生徒の多様性や個性の尊重も意識することを先生たちだけに求めるには限界があります。先生たちが余裕を持って子どもたちに寄り添い、持続可能な世界を作る視野の広い人材を育むことができるよう、JICAとしても可能な限り協力や連携の形を探っていかなければならないと、改めて思いました。

(報告:鳥取県JICAデスク 首藤 あずさ)

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