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【島根県】 日系社会研修:「心の色」で紡ぐ成長と異文化理解

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2025.01.16

自分の気持ちを色で表現!

異文化が繋ぐ新しい学びのかたち

JICAが展開する研修制度「日系社会研修(多文化共生推進/日系協力型)“日系サポーター”」は、中南米地域の日系人や日系社会と日本の連携において主導的な役割を果たす人材を日本国内の日系人集住都市に受け入れ、自治体、NGO、教育現場などで研修を行う取り組みです。このプログラムでは、研修員が日本国内で実践的な経験を積むだけでなく、その経験を帰国後に活かし、現地の地域開発に貢献することを目的としています。

その一環として、外国につながる子どもが多数在籍する島根県出雲市立塩冶幼稚園に派遣されたのが、ペルー出身の幼稚園教諭で、特別支援教育に関する経験も豊富なホニグマン・モラ・ワルキリアさんです。ワルキリアさんは、ペルーでは日系幼稚園にて長年従事され、現地で日本人児童を受け入れた際、子どもが規律を重んじる姿に感銘を受け、日本の幼児教育現場で如何にそのような意識が醸成されているか学びたいと考え、この研修に応募しました。約4ヶ月に渡る研修期間を通して、同市の幼稚園が大切にしている心身の健やかな成長の促進、社会性と自立心を育む教育、基礎的な生活習慣と学ぶ力を育む取り組み等を学んでいます。

子どもたちの「心の色」を可視化する取り組み

ワルキリアさんの数ある活動の中でも特に注目されるのは、情操教育のひとつとして導入された絵本教材『カラーモンスター』を活用した取り組みです。この絵本は、まだ感情のコントロールが難しい子どもたちが自分の感情を把握し、気持ちを整理して表現することをサポートしてくれる教材として世界各国の教育現場で活用されています。

ペルーでの幼稚園教諭時代に活用していたこの絵本のアイデアを基に、研修初月の担当クラスに「今日の気持ちを色にして瓶に入れるコーナー」を設置しました。これにより、子どもたちは「今日は嬉しかったから緑!」「穏やかな気持ちだからピンクかな?」といったように感情を客観的かつ視覚的に捉えられるようになり、自分の心の動きをより深く理解するきっかけを得ています。保育士の先生方からも「子どもたちが自分の感情を意識するきっかけになりそう」という前向きな声が聞かれ、この取り組みは保育の現場に新たな可能性をもたらしています。

ペルー文化を伝える取り組み

普段の教室では、ペルー文化を伝える活動にも積極的に取り組んでいます。昨年末には、担当するクラスでペルー流のクリスマスを紹介しました。教室内は鮮やかな色彩と温かみのある雰囲気に包まれ、ペルーの伝統的な飾りつけを子どもたちと一緒に作りながら、異文化に触れる楽しい時間を提供しました。「ペルーでは家族が集まり、色とりどりの飾りつけで祝います。日本と似ている部分もあれば、異なる部分もあることを子どもたちと共有できて嬉しかったです」とワルキリアさんは話します。こうした取り組みを通じて、子どもたちは異文化に自然と親しみ、多様性を受け入れる感覚を育んでいます。

研修活動を通じて得る未来への展望

研修は折り返しを迎え、ワルキリアさんは残りの期間もより多くの経験を積みたいと意欲を見せています。「子どもたちと一緒に新しい発見をしながら、この時間を大切にしていきたいです。そして、この経験をペルーの地域社会に持ち帰り、多文化共生や教育の分野で活かしていきたい」と語ります。

JICAの日系サポーターは、研修員本人と受け入れ地域の双方にとって、新たな学びと成長をもたらす貴重な機会となっています。彼女の活動は子どもたちや地域社会と異文化の架け橋となるだけでなく、子どもたちの心に未来への希望を灯しています。

(記:島根県JICAデスク 小波津 チアゴ 明)

ペルーのクリスマスシーズンの飾りつけ。教室全体がカラフルに彩られていました。

多様な背景をもつ子どもたちが在籍している同幼稚園。多言語での読み聞かせなども行われていました。

初月担当でのクラスの様子が記された学級だより。園児たちと良好な関係を築いていることが伺えます。

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