【岡山県:実施報告】JICA中国 開発教育スキルアップセミナー in 岡山


2025.02.20
グループに分かれ、相手にとって映像で思い浮かぶように話してみる
2025年1月26日(日)、岡山国際交流センターにて、開発教育ファシリテーターの山中信幸氏を講師としてお招きし、JICA中国開発教育スキルアップセミナーを開催しました。当日は岡山県、広島県在住のJICA海外協力隊経験者、JICA教師海外研修に参加した経験のある教員、約20名が参加しました。
このスキルアップセミナーは2022年に初めて開催しました。実施の背景として、JICA海外協力隊経験者(以下OV)が学校から依頼を受けて経験談や異文化理解を伝える「国際協力出前講座」(以下、出前講座)は長年行われてきたものの、次第に学校側のニーズが多様化・複雑化してきたことがあります。OVが日本の子どもたちに伝えたいエピソードやメッセージを、学校からの要望に合わせて効果的に発信するにはどうしたら良いか、このスキルアップセミナーで考えてきました。
JICAとともに異文化理解の促進を担ってくれるのは、OVだけではありません。JICAでは教育現場の先生に開発途上国を訪問してもらい、そこでの学びを授業に還元して頂く「教師海外研修」を長年実施していますが、このプログラムに参加された先生方もまた、継続的な授業実践を通じて、国際教育の担い手として活躍されています。海外との関わり方や立場は違えど、OVと教師海外研修参加教員が国際化する地域の担い手同士としてつながり、JICAとともに国際教育・開発教育を促進してほしい、という想いから、現在ではスキルアップセミナーの対象をOVだけでなく、教師海外研修参加教員にも広げて開催しています。
最初に参加者全員で、アイスブレイクを兼ねた自己紹介と、相手のことを紹介する「他己紹介」を行い、、和やかな雰囲気の中で参加者同士の交流も深まったようでした。その後、同じ物事や出来事、状況でも見方を変えて視点や枠組みを見直す「リフレーミング」という方法を学びました。
山中先生からは、話す相手を意識して「言葉をプレゼントするつもり」で話をすることが大切であること、それでも、そのプレゼントを相手に分かってもらえない場合もあること、自分の話したいことがすべて伝わると考えるのではなく、「伝わらない」場合もあるのだと理解しておくこと、そして言葉は常に「一期一会」であり、「ありがとう」の気持ちを持ちながら話すと良い、などたくさんのアドバイスがありました。
「ナラティブ」の表現の仕方について説明する山中先生
全員での自己紹介の様子
グループ内で各自の経験を話し合い、感想を発表
セミナーの中心となったのは、参加者が各々のエピソードを「物語」として語る、「ナラティブ」と呼ばれる概念と方法、その構造や考え方を学ぶことです。そして実際に「自分の話した言葉が、相手にとって映像で思い浮かぶように話してみる」ことを実践しました。あるグループは4人1グループになり、自身の経験やルーツにまつわるエピソードを語りながら、異文化での生活や言語の違いを体験した中で感じた価値観や感情の変化を共有しました。
例えば、外国語での表現が持つ文化的な背景など、異なる言語が生み出す新たな視点や、異文化の中で生活して驚いた体験、海外での生活を通じて身につけた言語や文化への理解が、異なる人格を形成するように感じられるという興味深い意見も共有されました。
参加者の感想として、
・同じグループの方が、ご自身が感じたもやもやについて話をされるときに、短くタイトルをつけて最初に伝えてくれたことで(タイトルは「お金で解決ってどうなの?!」)、話の内容を事前にイメージすることができた。その後の内容が頭に入ってきやすく、ひきつけられたことで聞くポイントが絞れたことが非常に参考になった。
・言語化するということは、自分の意識に集中すること。そして相手の目線に立つことだとわかった。自分の価値観や考えをそもそも一から問い直してみるアプローチだと思った。自分自身の「ナラティブ」、「ストーリー」、伝える枠組みをゼロから考え直してみたいと思った。
といったことがあがり、それぞれ新たな気づきがあったようです。
本セミナーを通じて、参加者は自身の経験を再認識し、それを他者に伝える力を養いました。教師としてだけでなく、一個人としての成長を促す貴重な機会となった方もいたようです。
今後もJICAは、多様なニーズに応じたプログラムを提供し、国際理解教育の充実に取り組んでまいります。
(報告:岡山県JICAデスク 橋本千明)
scroll