【開発教育支援事業:実施報告】ラオスでの学びを教室へ-JICA中国・四国 教師海外研修報告会-



2025.03.04
2025年1月25日(土)、JICA中国・四国教師海外研修の授業実践報告会を行いました。2024年8月にラオスを訪問した10名の先生方は帰国後、現地で学んだことをもとにそれぞれの学校で授業を行っています。その内容を全員で報告しました。
ラオスで同じ場所を訪問し、同じ人に会って話を聞いても、それぞれの感じ方は様々でした。だからこそ、その成果である授業実践も多様だったようです。ある中学校の先生はラオスで英語があまり通じなかった経験から、異なる言語、文化を持つ人とどうコミュニケーションをはかるか、その先にある多文化共生の促進をテーマに、実際に学校の近隣に住む留学生と交流する時間を設けました。また、ある中学校の先生は、様々な援助の現場を視察し、国際協力に携わる多くの人から聞いた話をもとに、開発支援とは、ODAとはなにか、を中学生自身が考える取組みを行いました。その後、JICAラオス事務所とオンラインでつながり、現地のスタッフに、その成果と疑問を発表する授業も展開しました。他にも、ラオスの不発弾の問題から「科学の発展と平和」を生徒とともに考えた高校の先生、食文化から世界を身近に感じるため、調理実習でラオスの伝統的な麺料理を作った高校の先生もいました。
JICAの教師海外研修の醍醐味は、普段なかなか接する機会のない異なる校種や教科の先生方が現地で一緒に行動し、毎日のふり返りで感想や意見を交わすことで、参加者間での学び合いが深まることにあります。この日全員の授業実践を共有できたことで、今後の継続的な取組みについてまた多くのヒントや気づきを得られたようでした。
ラオスで印象的だったテーマをどう授業化したか、解説してくれました
それぞれの先生への質問、コメントも沢山上がりました
授業を経たあとの児童の変容について紹介する様子
翌1月26日(日)には、岡山県はもちろん、中四国各地から来場された一般市民の方を対象に、公開型の報告会を行いました。日曜日にもかかわらず、学生、教員、民間企業にお勤めの方やJICA海外協力隊経験者など、29名の方が参加くださいました。
まずはじめに、7名の先生方が教師海外研修の報告として、ラオスの国の概要や現地で訪問した場所などを説明しました。
その後、参加者にもラオスを通して開発途上国の課題や外国と日本のつながりを考えて頂くため、小学校、中学校、高校の先生による模擬授業形式で報告会が行われました。最初に登壇された高知市立昭和小学校の岡崎麻央先生は、字が読めないとどんな困りごとがあるか、実際にアクティビティを行いました。その後、日本を含むいくつかの国の「幸福度ランキング」とラオスで撮影した写真を紹介し、私たちが無意識のうちに開発途上国へ思い込みを抱いていることを気づかせてくれました。その上で「当事者が幸せを感じていれば、開発途上国が抱える課題は解決されなくても良いんだろうか?」と、開発の意義と豊かさに関して問いかけると、参加者は真剣な面持ちで耳を傾けていました。
中学校の部では、広島県府中町立府中緑ヶ丘中学校の古瀬由紀子先生が、実際に行った数学の授業をもとに、この日のために作成したワークショップを紹介してくれました。グループごとに異なるワークシートが配られ、それぞれのミッションをクリアすると、ラオスに関連するキーワードが浮かび上がるというものです。そのキーワードが、どのようにラオスとつながっているのか、中には難しい数学の内容に参加者は頭を抱えつつも楽しみながら考えていきました。実際の授業では、ラオスという国名は公表されない状態で、生徒自身がタブレットを活用してキーワードを基にどの国のことを示しているのか調べたそうです。担当教科の数学に教師海外研修の知見をどう活かしたのか、生徒の反応とともに報告してくれました。
愛媛県立今治西高等学校伯方分校の玉井日向子先生は、非常に多くの時間を確保して授業実践をされましたが、この日のテーマは「持続可能な観光」をピックアップ。ラオスには「古都ルアン・パバン」として世界遺産に登録された街があり、観光客も増加しています。現地で見聞きした観光開発の現状を、日本のオーバーツーリズムの課題と比較し、「持続可能な観光開発とはなにか」をグループでディスカッションする模擬授業を展開してくれました。実際の授業では、このワークショップののち、学校がある伯方島が観光で活性化し、且つ生活や環境が守られる持続可能なツーリズムとはどういうものか、生徒とともに考えたそうです。ラオスの事例から、日本、そして地域の課題と未来を考える授業の一端に触れ、参加者は様々な気づきを得たようでした。
2024年度教師海外研修はこの日ですべてのプログラムを終了しましたが、参加下さった先生方がラオスで学ばれたことは色あせることはないでしょう。これからも学校、地域での世界と日本をつなぐ活躍を期待しています!
高知市立昭和小学校の岡崎麻央先生
広島県府中町立府中緑ヶ丘中学校の古瀬由紀子先生
愛媛県立今治西高等学校伯方分校 玉井日向子先生の授業発表
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