【実施報告:広島県】2025年度 JICA中国・四国 教師海外研修授業実践 広島市立観音小学校
2025.12.25
2025年12月15日(月)、広島市立観音小学校5年2組の総合的な学習の時間の最初に、川崎悠先生は一枚のスライドを子どもたちに見せました。「『ラオスは世界で一番( )な国』。さあ、( )には何が入るだろう?」
今夏、JICA中国・四国 教師海外研修に参加し、ラオス人民民主共和国を訪問した川崎先生は帰国後、廊下に現地で入手したラオス語の教科書を並べたり、現地の食事や町の風景といった自身が撮影した写真を掲示したりと、校内の児童がラオスという国に触れることのできる工夫をしてきました。そして5年生の子どもたちには、ラオスと日本の違うところや同じところを見つける授業を行い、子どもたちから「もっとラオスのことを知りたい!」という声を引き出していました。
ラオスについて学んだ子どもたちからは「世界で一番小さい国?」「世界で一番やさしい国かな?!」と意見が出されましたが、川崎先生が示したのは「世界で一番行きたい国」、そして「世界で一番爆弾を落とされた国」という衝撃的な言葉でした。
世界遺産を有するラオスは、欧米からの観光客に人気が高く、訪問したい国1位になったことがあります。他方で、ベトナム戦争時に大量の爆弾が投下され、現在もラオス国内に多くの不発弾が残っていること、今も多くの子どもがその被害にあっていることなどを、実際に不発弾の処理現場を訪問したときの写真と爆破処理がされたときの音声を使って、子どもたちに説明していきました。
続けて川崎先生は、広島への原爆投下によって被爆した語り部の方の写真を見せました。5年生の児童は、今年7月に語り部の方から直接被爆体験を聞き、戦争や平和についてもっと知りたい、という想いから、11月には平和記念公園も訪問しました。「危険を伴う不発弾の処理現場で働くラオスの人、辛く悲惨な思い出を伝える広島の語り部の皆さん。国や歴史は違うけれど、戦争と平和について発信してくれる人たちの話を聞いて、みんなはどう思うかな?」と川崎先生が問いかけると、子どもたちからは「語り部の方は、自分が原爆にあったことを次の世代に伝えてくれた」、「戦争はとっくに終わっているのに、今も不発弾の処理を頑張っているラオスの人はすごいと思う」、「ラオスも日本も、伝えてくれる人がいるから戦争を知らない自分たちが知ることができた」など、様々な感想があがりました。
5年2組の児童は、ラオスのことも戦争や原爆のことも「もっと知りたい」と常に関心を持っているそうです。そんな子どもたちに川崎先生はさらに問いかけました。「みんなはいろいろなことを沢山知ったけれど、『知る』ことの先には、何があるだろう?知るだけで良いのかな?」。
大人にとっても難しい質問に、児童は頭を悩ませながらも「知るだけでは平和にはならないね」、「いや、知ることで平和は作れると思う。相手の国のことを知ることで、相手の気持ちが理解できる。そうすれば戦争にならないんじゃないかな」など、たくさんの意見が上がりました。そして「知ることで、自分も頑張ろうという強い気持ちにつなげていける」という感想が上がると、続けて多くの児童から「自分たちが知ったことを他の人に伝えるのはどうかな?」、「他の学年とか、家族にも伝えられる!」と、自分自身ができること、そして5年2組のみんなでできそうなアイデアが次々と飛び出してきました。
ラオスから帰国後、授業のテーマや流れについてずっと考え続けてきた川崎先生でしたが、「世界のこと、戦争や平和に関すること、どんな内容も子どもたちに『自分事』としてとらえてほしい」という想いだけは変わらなかったそうです。その想いを受け止めた子どもたちの「知ることの先にあるもの」を探す活動は、これからまだまだ続きそうです。
( )には何が入る?
様々な意見が次々に上がりました
現地で入手したラオスの教科書
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