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【実施報告:鳥取県】鳥取県教育センター・JICA中国連携 国際教育研修

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2026.01.05

講師の藤原先生と参加いただいた先生方の様子

「ESD、SDGsの視点から『誰ひとり取り残さない社会』を考える」研修

2025年11月27日(木)、倉吉体育文化会館において、鳥取県教育センターとの連携で国際教育に関する専門講座を実施しました。昨年に引き続いて本講座を実施する機会をいただき、前回ご参加の複数の先生が「去年の内容が面白かったから」と今年も参加頂きました。
専門講座は昨年度同様、JICA中国の職員と鳥取県JICAデスクが講義やワークショップを実施しましたが、今年はさらに、2023年度JICA中国四国 教師海外研修に参加され、ナミビア共和国を訪問した鳥取県立米子東高校の藤原孝夫先生にも講師として入っていただきました。

今年度も小、中、高校と様々な校種の先生方がお申込み下さり、どの年齢の児童・生徒にも関心を持ってもらえることを意識してプログラムを検討しました。
今回研修の最初に体験いただいたのは「モノはどこからきているの?」カードゲーム。JICA東京センターが作成したオリジナル教材で、私たちの身近にある物品と海外との関係性を知り、世界と日本のつながりを学びながら遊べるカードゲームです。「これは簡単!」と感じるものから、ほんの少し悩んでしまう難易度のものもあり、各グループでの会話も弾んだようで、楽しみながら教材を体験いただきました。

続いて、世界の教育の現状や援助の状況について知るアクティビティを行いました。世界にはいまだに教育を受けることができない子どもが多くいます。世界のすべての子どもたちが教育を受けるために必要な金額を、世界のゲーム市場や軍事費と比較することで、開発途上国への支援について考えるきっかけとしていただきました。教育にかけられる予算が世界的にも少ない現状を知り、先生方は「すべての子どもが教育を受けるための支援は、果たしてそんなにも難しいことなのだろうか?」という疑問を改めて抱かれたようでした。

続いてはJICA鳥取デスクから、アフリカのシエラレオネ共和国での体験談を通して「豊かさとは何か」を考えながら、上記のワークショップの内容とは相反する話をしました。
シエラレオネでは多くの海外援助機関が多分野で支援活動を展開しています。その成果か、教育分野では小学校の就学率は昨今100%を超えています。一方で、JICA海外協力隊経験者を含め、多くの日本人が途上国に暮らすと困惑することがあります。日本には無いその国の良さや文化の豊かさに触れ、「本当にこの国に支援は必要なのだろうか」、「日本の支援は彼らを幸せにできるのか」といった葛藤を抱くこともしばしばです。
そのように考えた実例や現地での生活で得た視点を示しながら、途上国への支援に関する多角的な視点を伝えた上で、参加の先生方には「豊かさについて児童生徒に伝えたい事」、「このような体験談は学校の授業でどのように活用できるか」といったテーマでグループごとに議論していただきました。

教科学習に国際的な視点をどのように取り入れるか

藤原先生には、国際理解の視点を取り入れた日本史の授業を例に、教科で行う国際教育について話していただきました。
藤原先生が授業の導入として取り入れられたのは、桃太郎の話。誰もが知る『桃太郎』を鬼の視点から見たとき、どのようなストーリーが浮かび上がってくるのでしょうか。桃太郎と鬼、両方の視点を意識した上で、「桃太郎は善か悪か?」をテーマに各グループで議論してもらいました。
先生たちは昔読んだ『桃太郎』の記憶をたぐりながら話し始めましたが、議論が進む中で「そもそもなんで鬼ヶ島に行ったんだっけ?」、「鬼は何をしたんだっけ?」、「結果的に鬼は退治されたんだっけ?」など多くの疑問がでてきました。まさにこうした疑問を持ってもらうことが狙いであり、「物事を多角的に見るのは大事だが、様々な角度で見るだけで良いのではなく、物事の前提や背景が分からないと評価できないことがある」と藤原先生は話されました。

目に見えているものだけではなく、その構造を理解する力を生徒たちに付けてもらうため、藤原先生がどのように日本史の授業を行っているのかが紹介されました。その例として取り上げられたのが、明治維新期の北海道開拓とアイヌの人々の歴史、そしてドイツによるナミビア支配の歴史です。一見まったく別の場所で起きた出来事に見えますが、これらの時代を重ね合わせて見ることで、北海道開拓の歴史は日本とアイヌの人々との二項対立のみで捉えることはできず、ヨーロッパ諸国がアフリカ地域で用いた人種主義的な考え方が影響していることが分かります。こうした視点を持つことで、北海道開拓の歴史をより深く理解できるだけでなく、日本の課題と世界で起きている課題は本来切り離して考えることはできないのだということを、あらためて気づかされる内容でした。

本研修の最後には、国際協力とSDGsのつながりにも触れました。国際協力により、途上国の就学率は以前と比べて高くなったものの、卒業後の就職難や農村部の過疎化などの問題が出てきています。この点は、シエラレオネの現状としても同様であることを、体験談の中でお話しました。ここから分かるのは、何かの課題を解決するには、一つの分野だけを見るだけではなく、課題の「構造」を理解し、関係する他の分野とも連携する必要があるということです。現在日本にある多くの課題にも同じことが言えるのではないでしょうか。

広い視野を持って、個々の課題に取り組むことができるような人材を育むために、JICA中国は引き続き、国際教育・開発教育の推進に先生方と一緒に取り組んでいきたいと思います。

(報告:鳥取県JICAデスク)

相互依存カードゲーム

ワークショップの様子

「桃太郎は善か悪か?」

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