【岡山県:実施報告】JICA海外協力隊帰国隊員2名が、倉敷市活動報告会で報告を行いました!
2026.03.06
報告会の様子
JICA海外協力隊は、開発途上国で現地の人々と共に生活し現地の生活に溶け込みながら草の根レベルで活動し、途上国が抱える課題解決への貢献を目的に派遣されます。長期派遣は2年間の派遣が基本となっています。JICAといえば「JICA海外協力隊」をイメージする方も多いのではないでしょうか。岡山県からはこれまでにのべ800人以上が海外協力隊として派遣されており、帰国後も国内外のさまざまなフィールドで活躍されています。そして本日のトピックスである倉敷市からの派遣者累計はおよそ190人です。
倉敷市国際交流協会は、倉敷市に縁を持ち海外協力隊として活動された隊員の活動報告会を一年に一度開催しています。活動報告会は、幅広い年代の方々に帰国したばかりの隊員のお話を直に聞いて頂ける貴重な場となっています。今年は2026年2月11日、ライフパーク倉敷で開催され、40名の方に参加いただきました。報告者は2025年にガーナ共和国から帰国した千田里奈さん(職種:手工芸)と、ホンジュラス共和国から帰国した下浦隼一さん(職種:野球)でした。
最初に報告を行った千田里奈さんは、ガーナの首都アクラから北西に約370km離れたボノ州にある職業訓練校に配属されました。900名の生徒が10のコースで学ぶ訓練校で、千田さんはファッション科で活動しました。そして、着任当初から壁にぶつかったことが報告されました。実は、職業訓練校にとって、千田さんは初めての海外協力隊員の受け入れだったこともあり、ボランティアではなくビジネス目的で来たのではないかと誤解されたり、ボノ州では公用語の英語よりも現地語を使う習慣があることから、同僚からは現地語での会話を求められたりしました。「役に立ちたい」との思いで現地に行ったものの、自分がいなくても学校は回っているように感じ、無力感を覚えることもあったといいます。
そのような中、自分のできることを「見える形」で示すことから始めた千田さん。手縫いの基礎として、赤ちゃん用小物、布小物作成や様々な刺しゅうの技法など、学年に合わせたものづくりを学べることを示すことで、自分の役割が周囲に伝わるようにしました。
英語や現地語によるコミュニケーションの難しさ、計画通りに進まない授業、大人数で細部まで目が行き届きにくいクラスの状況、一人一人の縫製技術の向上を図る難しさなど、課題は尽きない状況でしたが、千田さんが出来ることとして、欠席した生徒が授業についていけなくなる現状から、授業後や実習の時間に復習できるよう、作業手順のパワーポイントや見本ブックを作成しました。
また、現地で販売されている飲料水が丈夫なビニール袋に入っておりその袋が、ごみとして放置されている現状や、実習後に出た端切れが捨てられていたことに千田さんは目を向け、「アップサイクル品」として廃棄物を再利用し、小物づくりへと活用する取り組みを行いました。
ガーナでの2年間を振り返り、千田さんは「理解すること、そして理解してもらうことの難しさと楽しさ」、「探求する楽しさ」、「自己理解の深まり」を語っていました。何よりも、今ではガーナが「地元のように感じられる場所」になり、家族のように思える人たちができ、帰国後も連絡を取り合えることを嬉しく思っているそうです。
二人目の報告者である下浦さんが協力隊員を志したきっかけは、大学3年生の頃、就職や大学院進学を目指す周囲の同級生を見て「このままで良いのだろうか」と疑問を抱いたことだったそうです。思い切って1年間の休学を決意しアフリカを旅して回りました。岡山県内で野球監督を務める元JICA海外協力隊員とも出会い、それらの経験から、まずは「根本から社会を支える仕事」に携わりたいと考えるようになり、ものづくりを通じた社会貢献を志して企業に就職しました。
5年間の社会人生活を経てJICA海外協力隊に応募。しかし新型コロナウイルス等の影響で派遣は2度延期となったことから、将来、海外協力隊での経験に教職が役に立つと考え、教員として働きながら派遣を待ちました。「3度目の正直」でようやく派遣が実現。派遣先はホンジュラス・チョルテカ県の教育事務所です。ここで子どもたちに野球を広め、学校対抗野球リーグの企画運営に取り組みました。本業の野球隊員としての活動は順調に進んでいましたが、赴任して間もなく参加した「女子児童の保護」をテーマにした多職種参加の会議が下浦さんにとって大きな転機となります。
ホンジュラスでは、貧困や教育格差などさまざまな背景から女子児童が、暴力や虐待、薬物、若年妊娠といった問題の被害を受けやすい状況について深刻視されていました。活動先の教育担当官から「スポーツを通じて少女たちの課題を解決できないだろうか」という相談を受けました。また、女子児童たちからも「なぜ私たちは野球の練習に参加できないのか」との声を受けていました。
これこそ現場で求められていることだと感じた下浦さん。自身も小学生の頃に入ったソフトボールチームでスポーツの楽しさや仲間との絆を知った経験が原点にあったことを思い出します。ホンジュラスにはこれまで、女子ソフトボールチームは存在しませんでしたが、新たにチームを作ることを決意し、警察とも連携して安全で信頼できるチームづくりを目指しました。
子どもたちやチームは次第に成長し、女子児童たちはスポーツで活躍する夢や希望を語るようになりました。そうした成長を受けて下浦さんは、日本の選手との交流試合や練習を経験してもらいたいと思うようになりました。しかし、下浦さんの活動していた地域は治安の問題があり、日本から現地に指導者を呼ぶことは容易ではありませんでした。そのため、まずはホンジュラスから一時的に監督や選手を日本に呼びよせる形で、日本との交流実現を目指すことにしました。2025年7月、下浦さんの2年間の任期が終わり本帰国した際、ホンジュラス・ソフトボール協会の会長を連れて帰国し、帰国時に会長とともに東京・岡山などのソフトボール関係者を回り、ホンジュラスの女子ソフトボールチーム応援の協力を求めたところ、岡山県のソフトボール協会、企業、大学などから賛同を得ることができました。そして、2026年2月中旬から3月下旬にかけて、ホンジュラスの女子ソフトボール選手2名と監督1名を日本に招き、日本人女子ソフトボール選手との合同練習や試合を経験してもらう予定となっています。下浦さんは、これまでの倉敷市を含む様々な方の協力への感謝と共に、夢は大きく、「ホンジュラス女子ソフトボールチームの2032年オリンピック出場」を見守ってもらいたいと語りました。
2名の発表の後には、世界各地へ海外協力隊として派遣された経験を持ち、現在は岡山で活躍している協力隊OV(通称OV:Old Volunteers)と参加者が直接交流できる時間も設けられました。岡山県には青年海外協力隊岡山県OV会があり、そのメンバーを中心に今年は、モロッコ、マラウイ、ベトナム、ブルキナファソ、モンゴル、フィリピン、ガーナ、タンザニアの協力隊経験者が参加しました。
「そもそも、どうして協力隊に行こうと思ったのですか?」、「現地の人はどんな反応でしたか?」といった疑問にOVは「今のようにインターネットで情報収集することは難しい時代に派遣されたが、だからこそ世界を見てみたいと思った」、「現地の人に本当に優しくしてもらった」など、笑いが起きたり、皆で考えたりと、和やかで充実した時間となりました。
ご準備いただいた倉敷市国際交流協会の皆様、参加者の皆様、協力隊経験者の皆様、本当にありがとうございました。
熱心に質問する中学生に答えるJICA海外協力隊員経験者
会場後方には、2人の発表者の活動写真や関連する品々が並び、会場を彩りました!