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【岡山県:出前講座レポート】文化の違いを体験し、外国人の声を直接聞く

#16 平和と公正をすべての人に
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2025.08.19

文化の違いを体験する「バーンガ」を行う参加者と留学生

文化の違いをゲームで体験して

2025年7月22日(火)、倉敷市役所にて、倉敷市教育委員会人権推進室主催の第2回人権教育課題研究委員会の研修会が開催されました。JICA国際協力出前講座を活用して行われたこの研修会には、10人の教員の方々が参加されました。当日は講師として、JICA岡山県デスクと、岡山大学に留学中のケニア出身のJICA留学生の2人が登壇させて頂きました。

研修の冒頭では、「バーンガ」と呼ばれるワークショップを行い、参加者は異文化との接触を模擬的に体験しました。このワークショップを通じて、参加者同士が打ち解けることができました。今回は、「ゲーム中は話さない」「ジェスチャーはOK」というルールを活かし、留学生も一緒に体験し、ルールが異なる文化に入る、もしくは異なる文化の方を受け入れるという疑似体験を参加者とともに行いました。

ルールの異なるグループに入った際、新しいグループのメンバーがジェスチャーで助けてくれたことや、ルールの違いに戸惑いながらもそのルールに従ったことなど、参加者は様々な気づきを共有しました。

また、興味深い出来事として、留学生が入ったグループで「かば」を水中で暮らす生き物か、陸上で暮らす生き物かを考え、カードを並べる場面がありました。日本人の参加者が陸の生き物だと想像する一方で、ケニア人留学生は水中の生き物と捉えており、カードが机の上で行ったり来たりしていたそうです。こうした認識の違いは、日本人同士でも起こり得ることかもしれません。同じ説明や単語を見ても理解が異なり、行き違う可能性があることもわかりました。

ケニア人留学生が語ったこと

次に、ケニア人留学生が日本とケニアの文化の違い、日本に来て戸惑ったことや困ったことについて話しました。

彼女は現在、岡山大学大学院の博士課程に在籍し、環境に関する研究を行っており、来日して2年になります。写真を用いて、日本とケニアの文化や生活の違いについて具体的な事例を挙げて伝えてくれました。日本では勤勉さが重視され、物事を正しく行うことが重要視されていること、公共の場が非常に静かであること、食事が非常に重要視されているが量は少ないと感じていることなどを率直に語ってくれました。

また、コミュニケーションの取り方の違いについても触れ、日本では丁寧で間接的な伝え方を好む一方、ケニアでははっきりと直接的に伝えることが重要であると説明しました。ケニアでは、大きな声で話したり、会話に笑いを交えたりしながらリラックスして話すことが好まれるとのことです。日本での暮らしにおいては、時に自分に期待されていることが自身の理解と異なることがあり、自分も最善を尽くしたいと思っているので、遠回しな表現ではなく明確に伝えてもらえると助かる、と話していました。

さらに、日本で手術を受けた経験についても語り、説明書や手術に関連する書類が全て日本語で書かれており、友人に翻訳してもらって乗り越えたこと、手術後に痛みのコントロールを希望することが難しかったといったエピソードを紹介してくれました。他にも、家を借りる際の手続きがケニアと異なり驚いたこと、大学院生活で高度なソフトウェアの扱いが要求され、ケニアで学ぶ機会がなかったため苦労していることなど、生活から健康、学業にわたるまで様々な話をしてくれました。参加者からも多くの質問が寄せられました。

最後に、参加者から「共生社会の実現に向けてどうしたらよいか」という質問があり、留学生は「色々な違いはあるけれど、一人ひとりの人間としてその方のことをよく知ろうとすること、コミュニケーションをとることが大切だと思う」と締めくくりました。

外国人への理解と心の距離を縮めるヒント

参加者からは「バーンガを通じて、異なる文化の中で自分がどのように立ち回るのか、また異なる文化の人が私たちの中に入ってきたとき、自分がどのように接すればよいのか、少しわかった」、「自分の国の文化に従うだけでなく、相手の国の文化を聞いて試してみることで、その人との心の距離が近くなると感じた。研究授業のヒントが得られた」、「留学生の話にもあったように、日本での生活で困っていることや、以前困ったことに直接触れることができてよかった。Indirect(間接的な表現)な部分は日本人らしさかもしれないけれど、“相手に伝える”というコミュニケーションの基礎を再確認することができた」との感想が寄せられました。

さらに、留学生が困ったことだけでなく、日本や日本人の良さについても話してくれたことで心が温かくなったこと、「日本人はとても礼儀正しくて優しいので、あまり心の壁を感じたことがない」というコメントから、「そのように感じてくださっている外国の方もいるのかと嬉しくなった」との感想もいただきました。
温かくお迎えいただいた参加者の皆さま、ありがとうございました。

(報告:岡山県JICAデスク 橋本千明)

3グループに分かれ、異文化を体験するゲームを行いました。1グループは留学生も入って!

ケニアに渡航した経験のある先生もおられ、興味深かった振り返りの時間

体験談を話す留学生

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