【研修員インタビュー】 陶芸でつながる日系コミュニティ


2025.08.19
インタビューを受ける研修員たち
本研修は、中南米地域の持続的な経済発展のための重要な要素のひとつである、日系社会における地域資源の再発見、外部への発信力の向上を目的として実施されました。日本の陶芸は、芸術品としてだけではなく、日常的に使用するものとしても、国内外の幅広い世代に人気が高くあります。しかし、中南米諸国では、その製造技術が低く、日系社会においても陶芸のような日本文化への関心は失われつつあります。
今回の研修では、キューバ・コロンビア・ボリビアの日系社会研修員3名が、広島県で活動する陶芸家である吉野 瞬氏のもとで、2025年7月13日から2025年8月8日までの約1か月間、日本の陶芸技術や地域資源の活用方法などについて学びました。
私たちJICAインターン生3名は、8月8日に研修プログラムを終えた3名(ニシザワさん、フンドラさん、マツヤマさん)にプログラム内容や、日本での暮らしに関するインタビューをさせていただきました。
Q1.日本での暮らしはどうでしたか?
ニシザワさん:JICA研修員として生活を送り、地域の人々と交流する機会が多く、観光客として日本で過ごす時間とは異なる体験ができました。
フンドラさん:日本に来ることを夢見ており、日本は私の生きがいでした。その日本で、これまで写真で見てきたものを実際に自分の目で見ることができ、感動しました。
マツヤマさん:日本はとても清潔であり、秩序のある国でした。また、日本の人々は私たちに親切にしてくださいました。
Q2.なぜこの研修に参加しようと思ったのですか?
ニシザワさん:自分の興味のある分野でもあり、日系人として自分のルーツにかかわる日本の文化を学び、それらを自国の日系人コミュニティの人々に伝え、その維持につなげたいと考えたからです。
フンドラさん:日本の伝統文化に興味があり、それらを学びたいとずっと昔から考えていました。そこで、待ちに待ったJICAの研修プログラムがあったため、応募しました。
マツヤマさん:日系人として、自分が持つ日本のルーツについて、陶芸を通して知りたかったからです。
Q3.日本の陶芸技術のどこに魅力を感じましたか?
ニシザワさん:日本の陶器は地域に根差していてかつ、材料が自然由来のものを使っておりとても実用的だと感じています。
フンドラさん:日本の陶器は世界と全く異なっています。技術は他の国には真似が出来ません。
マツヤマさん:陶器は部屋の装飾や茶道にも使われており、食器以外の用いられ方をしているのが魅力的です。また、陶芸研修をしてみて作品を作るには一人でできない、先生や先生の友人の力など様々な人の協力によってなりなっているのだと感じました。
Q4.母国の人に、日本はどんな場所だと伝えたいですか?
ニシザワさん:母国の人もこのプログラムに興味をもっています。今回の経験を伝えることで母国のみんなに日本や陶芸をもっと好きになってほしいと思っています。
フンドラさん:母国のキューバでは日本語学校が無く、インターネットが無ければ日系コミュニティはオンラインで日本語を学ぶことが出来ません。母国では日本の文化に触れる機会がないのです。今回の研修で感じた日本の美しさと整然とした文化を母国に伝えていきたいです。
Q5.また日本に訪れるとしたら、次はどんなことを学びたいですか?
ニシザワさん:バリスタの仕事をしているので、抹茶など日本の茶の文化を学んでみたいです。
フンドラさん:日本はリサイクルの文化が根付いていると感じました。キューバでは食料不足が問題となっており資源の有効活用が重要になっています。日本はリサイクルの技術を学び母国の人々に伝えていきたいと思っています。
マツヤマさん:日本の自然は美しいと感じています。今度日本に訪れる際は牧場などを巡ってみたいです。
〇陶芸研修プログラムに参加した研修員へのインタビューを通しての感想
今回のプログラムはJICA研修プログラムとしては珍しい芸術分野をテーマにした内容でした。研修を通して日本文化に触れることはもちろん、日系として自分のルーツに触れることができ、この経験を母国の日系の方にも発信したいという声をお聞きすることができました。その一方で、彼らの祖国では日本に触れる機会がないという声も聞かれたので、今回のように日本文化を体験する機会を設けて彼らのルーツに触れられる機会が作れたら良いなと思いました。
また、私は日系の方に対する知識が深くなかったのですが、今回のインタビューを機に日系社会の様子を知ることができました。研修員の方々が祖国に日本文化を伝え、インタビューをした私達、インターンシップ生もまた、日本人に日系の方々について発信し、架け橋のような存在になりたいなと思いました。
報告:JICA中国インターン生 広島大学 教育学部 前角彩花/総合科学部 佐藤友哉
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