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【島根県: 実施報告】イベント「コーヒーから考える多文化共生―バイアスが隔てる私たち―」を実施しました

#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2025.10.20

講師を努めた島根県JICAデスク

松江市「余白」で“つながり”を味わうセミナーを開催

2025年8月16日(土)、松江市内のゲストハウス兼カフェスペースの古民家宿「余白」にて、「コーヒーから考える多文化共生―バイアスが隔てる私たち―」を開催しました。このイベントは同ゲストハウスが提供するコーヒーを通じて世界や社会の“多様性”を見つめ直す機会となりました。

当日は、大学生や社会人、地域で国際交流に関わる方々など、多様なバックグラウンドを持つ参加者が集いました。夕方の柔らかな日差しの差し込む木造の空間に焙煎したての豆の香りが漂い、穏やかな雰囲気のなか、「私たちは、日々どれほど“多様性”を意識して暮らしているでしょうか?」そんな問いかけからこのイベントが始まりました。

会場となった「余白」は、松江市内で知られる地域密着型の宿泊・カフェスペースで、日々さまざまな国や地域からの旅人が訪れる場所です。「地域の暮らしと世界が自然につながる場」として運営されており、今回のテーマである“多文化共生”との相性は抜群でした。木の温もりと人の声が溶け合うような空間の中で、参加者はゆったりとした空気に包まれながら、普段の生活ではなかなか意識することのない“多様性”という言葉の意味を、静かに自分の中でかみしめていました。

“余白”という名の通り、会場全体には「考える余白」「感じる余白」が漂っていました。コーヒーを片手に、それぞれが自分自身の立場や視点と向き合いながら、世界と地域、そして自分の関係性を静かに見つめ直す・・・そんな夕暮れのひとときとなりました。

コーヒーをきっかけに“多文化共生”を身近に

イベントでは、コーヒーを一杯の「文化の縮図」として捉え、世界各地に広がる文化や価値観の違い、そして人と人とのあいだに生まれる“見えない壁”について静かに思いを巡らせる時間が持たれました。
コーヒーの産地や飲み方の違いを切り口に、私たちが生きる社会に潜む多様性の本質を見つめ直す構成をとり、「身近な日常から世界を学ぶ」というアプローチを採用し、講師は自身の多文化的な背景や海外経験を交えながら、「違いに向き合う」という行為の奥深さについて語りました。
国籍や言語の違いだけでなく、性別、世代、価値観など、私たちの社会にはさまざまな“見えないバリア”が存在します。
その一つひとつに無意識の偏見、いわゆる「アンコンシャス・バイアス」が影を落としていることを少しずつ解き明かしていきました。
参加者は頷きながら耳を傾け、ペアや小グループで意見を交換。
自分の中にある「当たり前」を一度立ち止まって見つめ直すワークを通して、普段は気づかない思考のクセや感情の動きを確かめる姿が見られ、対話も次第に深まっていきました。

後半には、香りや味わいの異なるコーヒーを飲み比べながら、感じたことを語り合う時間が設けられました。
立場や背景の違いを越えて、同じテーブルを囲みながら言葉を交わすことで、自然と笑顔や共感が生まれていきます。

「コーヒーという身近な存在が、こんなにも深いテーマにつながるとは思わなかった」
「違いを否定せず、まず知ろうとすることの大切さを実感した」
といった声が多く聞かれ、会場には温かく穏やかな空気が広がりました。

コーヒーを通して多文化共生を捉えなおしました

カッピング体験を通じて無意識の思い込みに気づくワークも取り入れられました

日常の一杯から、社会の未来へ

今回のイベントは、「日常の中にあるグローバル」を見つめ直す機会を目的として企画されました。
海外と日本をつなぐ大きな国際協力の現場だけでなく、実は私たちの暮らしのすぐそば―たとえば一杯のコーヒーの向こう側にも、多様な文化や人々の営みが息づいています。
その背景に目を向け、身近な体験を通して“多文化共生”を感じてもらうことが、このイベントの狙いでした。

会場に漂うコーヒーの香りに包まれながら、参加者たちはそれぞれの言葉で、自分と社会、そして世界との関わりを語り合いました。そこにあったのは、教科書的な「異文化理解」ではなく、心が動く“体感としての理解”です。
「違う」ことを受け入れることの難しさと、そこにある可能性。
「多様性」とは誰か特別な人のものではなく、自分自身の中にも存在しているという気づき。
そんな小さな発見が、静かに参加者一人ひとりの胸に残ったようでした。

今回のように、地域の中で互いの文化や価値観を共有し、共に学び合う場をつくることは、JICAが目指す「人と人をつなぐ国際協力」の原点でもあります。JICA中国では、今後も行政や教育機関、地域団体などと連携しながら、地域に根ざした形で多文化共生や国際理解をテーマとした活動を展開していきます。

(記:島根県JICAデスク 小波津 チアゴ 明)

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