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【島根県:出前講座 実施レポート】日本とセネガルの医療現場で得た経験を、次世代の看護学生へ伝える -浜田医療センター附属看護学校-

#1 貧困をなくそう
SDGs
#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs

2025.12.08

「ボランティアのイメージは?」柳楽さんの問いに答える学生

実際に体験したからこそ話せる、セネガルと日本のちがい。そして今伝えたいこと

2025年10月30日、JICA国際協力出前講座を初めて活用された浜田医療センター附属看護学校。看護学生3年生が履修する「災害・国際看護」の科目のうち「国際看護」の授業の中で、JICA海外協力隊としてセネガルのカオラック州にある保健センターで助産師として活動した柳楽茉耶(なぎらまや)さんが、ご自身の体験を話しました。

はじめに柳楽さんが「ボランティアってどんなイメージ?」と学生に問いかけると、「貧しい地域に行く?」「無償の活動かな?」「大変そう…」など多くの感想が学生から上がりました。柳楽さんはそこから、医療分野における様々な種類の海外ボランティアについて、そしてJICA海外協力隊の紹介をしていきました。
柳楽さんがJICA海外協力隊員として派遣されたのは、西アフリカに位置するセネガル共和国。地図で見るとライオンのような形をしています。なんと国のシンボルもライオンだそうで、サッカーセネガル代表の愛称にも「ライオン」が使われています。
漁業が主要産業であるセネガルからは、近年タコやマグロが日本にも輸入されており、日本のスーパーマーケットでセネガル産の魚介類を見かけるようになった、と柳楽さんは話してくれました。地図上で最西端に位置する日本から遠い国セネガルと私たちの生活が、実は身近なところでつながっていると知ることができました。

国の概要を説明したのち、柳楽さんはセネガルと日本の医療に関する情報を比較していきました。セネガルの国民の年齢中央値が17.8歳なのに対し、日本は49.9歳(※2023年時点)。セネガルで最も多い人口の年齢は20代前半であり、対して日本は65歳以上であり、学生は改めて日本の高齢率に驚いていました。一方で、セネガルでは妊産婦死亡率や乳児の死亡率が高く、出産の前後に命を落としてしまう女性や赤ちゃんがとても多いという現実にもショックを受けた様子でした。
また、かつてのセネガルでは感染症が原因で命を落とす人が多かったそうですが、医療が発達し寿命が延びる中、日本と同じように生活習慣病に起因する病気も死因のひとつとして増えているといいます。
セネガルの医療現場で見えてくるこの状況は、実は世界の平均値でもある、と話す柳楽さん。世界の保健医療分野における課題を改めて知り、熱心にメモを取る学生の姿が印象的でした。

柳楽さんは、これまで様々な場所で看護の仕事に従事してきました。公用語がフランス語であるセネガルへ渡航するにあたり、日本ではフランス語を勉強して出発した柳楽さんですが、現地ではウォロフ語、セレール語、ジョラ語…など初めて聞く言語が使われていました。同じ地域に暮らす人でも民族が違えば異なる言語を使用していたため、言葉の壁を感じることもあったそうです。
時には、現地の人と自分の考え方の違いに戸惑うこともあったという柳楽さん。セネガルでも日本でも、言葉や文化が違っても、そこで生活する人、働く人の暮らしがあり、対話の中でお互いの考え方を知っていくことが大切だと言います。「相手の文化に染まる必要はない。自分が大切だと思うことは誠実に続けていくことが大事。でも、自分の考えを持ち続けながらも一人一人が医療に関する正しい情報を得ることも重要です。私はその地域に合った医療を提供できる、誰も取り残さない看護師でありたい。」と、これから看護師になる学生の皆さんに柳楽さんの思いを伝えてくれました。

柳楽さんの経験を、これから医療現場で働く学生の皆さんに伝えた今回の出前講座。授業終了後、海外での医療ボランティアに興味のある学生さんが柳楽さんに質問に来ていました。JICA海外協力隊の経験者には、学生時代に協力隊の体験談を聞いたことが関心を持つきっかけになった、という人も少なくありません。
これまで知らなかった世界に触れたこの日の経験が、少しでも視野を広げる機会となったなら幸いです。そして、学生の皆さん一人一人が自分にとって大切だと思うことを持ち続けながら、これからも自身が思い描く道を歩んでいけますよう、願っています。

活動先について紹介している様子

セネガルの母子手帳。識字率の課題もあり、絵を使った説明が多い。

授業後に質問する学生

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