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【島根県海士町:実施報告】JICA海外協力隊2023-2次隊のグローカルプログラム元実習生が帰国訪問、現地での活動と海士町への想いを語る

2025.12.16

それぞれ民族衣装を着て海士町来島

JICA海外協力隊2023年度2次隊グローカルプログラム元実習生が島根県隠岐郡海士町を帰国訪問しました。

2025年12月9日(火)、JICA海外協力隊2023年度2次隊として海外に派遣されていたグローカルプログラムの元実習生3名――岸祐花さん(派遣国:スリランカ、派遣期間:2023年11月~2025年11月)、鈴木祥華さん(派遣国:マラウイ、派遣期間:2023年10月~2025年10月)、須藤智也さん(派遣国:グアテマラ、派遣期間:2023年12月~2025年12月)が、派遣先での活動を終えて帰国し、海士町を訪れました。須藤さんは帰国からわずか4日後という忙しいタイミングにもかかわらず、関東から島根県の海士町まで足を運んでくださいました。

表敬訪問や帰国報告会には、3名がグローカルプログラムでお世話になった方々や協力隊に関心を持つ町民が参加し、それぞれの活動の様子や現地での経験談に熱心に耳を傾けました。会場では久しぶりの再会を喜ぶ声があちこちで交わされていました。
当日は、3人がそれぞれ派遣先の民族衣装を身にまとって登場!色鮮やかな布や国ごとに異なるデザインが会場を一気に華やかにし、「さすがJICA海外協力隊。異国の空気まで一緒に持ち帰ってくれたね」といった声も聞かれました。

「Warm Heart of Africa」で感じた人のあたたかさ

マラウイで統計隊員として活動していた鈴木さん。“Warm heart of Africa(アフリカの温かい心)”と呼ばれるマラウイでは、人の優しさに触れる場面が多かったと話します。どんなに貧しくても、見知らぬ人であっても一緒に食事を分け合う“Karibu(カリブ)”の精神に何度も救われたそうです。
派遣中は統計の職種として病院に配属され、保健医療分野のデータ収集やデータ品質の改善に取り組みました。文化や歴史的背景による価値観の違いに悩むこともありましたが、相手を理解しようと努めながら自分にできることを重ねてきました。
さらに、多くの協力を得て学校でのヘルストークやキャリア教育にも携わり、子どもたちと共に学ぶ貴重な機会を得られたと振り返ります。

子どもたちと楽しみながら取り組んだ環境教育

岸さんは、環境教育の職種としてスリランカに派遣され、ゴミの分別やゴミに対する理解を深める活動に取り組みました。スリランカはカースト制度の影響もあり、「ゴミは特定の階級の人が扱うもの」という考え方が根強く残っており、公共の場でのポイ捨てが大きな課題となっていました。大人がそうした行動を取ることで、子どもたちにも同じ意識が引き継がれている現状がありました。
岸さんは学校を巡回し、分別ゲームや工作など、楽しみながら学べる環境教育を実施。子どもたちが主体的にゴミについて考えるきっかけづくりを大切にしました。また、他のスリランカ隊員と協力し、絵画コンクールや環境ソングの制作にも取り組みました。さらに、海士町の高校生と連携した交流やスポGOMI活動(スポーツゴミ拾いの略で、チーム対抗でゴミ拾いを楽しむイベント)、絵画制作など、国境を越えた取り組みも行いました。
活動を振り返り岸さんは、「よそものだからこそ、慣習にとらわれずにできることがあった」と語ります。階級社会の中では、当事者同士では越えにくい壁もありましたが、外から来た存在だからこそ立場を超えて関われた場面もあったといいます。
「目に見える成果は分かりにくいけれど、子どもたちが将来ゴミについて考えるようになってくれたらうれしい」と、活動に込めた思いを語ってくれました。

女性のエンパワメントを支えるコミュニティ開発

須藤さんはコミュニティ開発の職種でグアテマラに派遣され、4人の子どもがいる家庭にホームステイをしながら、家族の一員として温かく迎えられた生活を送ったそうです。
現地ではNGOに所属し、女性のエンパワメントを支援するため、生活改善アプローチや金融教育のワークショップを実施しました。地方では「女性は家の仕事をするもの」という価値観が根強く残るなか、女性の自立的な生活のために必要なことを一緒に考える取り組みを続けました。
初めは「物がない」「インフラが整っていない」など、外的要因にばかり目が向きがちでしたが、海士町でも学んだ「ないものを探すのではなく、あるものを見る」視点を共有し、大切にしたい価値や身近な資源に目を向けてもらうことを進めました。
その結果、家の整理整頓をするようになった女性や、人前で発表することに自信がついた参加者もおり、大きな変化の手応えを感じられたといいます。

海士町で培った経験が、世界で生きる

JICA海外協力隊としての活動を終えた3人から、それぞれが現地で悩み、考え、仲間と向き合いながら、一歩ずつ挑戦を積み重ねてきた経験談を聞き、参加者もうなずきながら耳を傾けていました。また、海士町で学んだ、「ないものはない」という精神や価値観が、それぞれの国での活動につながったと聞き、「海士での経験が世界のどこかで活かされているのがうれしい」という声もありました。

3人が次のステージに進むうえで、これらの経験と再会が力強い励ましとなることを願っています。

表敬訪問にて

帰国報告会には多くの方が参加してくれました

海士町で一番好きだったご飯屋さんで思い出話に盛り上がるひと時

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