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【島根県海士町:実施報告】地域の物語を地図に込めてー JICA海外協力隊グローカルプログラム実習生・田部さんが海士町での実習を修了

2025.12.23

島根県隠岐郡海士町では、2022年1月からJICA海外協力隊派遣前研修「グローカルプログラム」を実施しています。

2025年10月10日に来島された、JICA海外協力隊2025年度3次隊としてセネガル共和国にPCインストラクターとして派遣予定のグローカルプログラム実習生・田部 純奈(たなべ じゅんな)さんが、75日間にわたるプログラムを修了しました。
田部さんは、海士町観光協会に所属し、観光案内所での窓口業務に加え、町内の観光マップ制作に取り組みました。

観光協会では観光案内マップの充実化を図っており、より多くの地域の魅力を知ってもらいたいという思いのもと、これまでにも過去のグローカルプログラム実習生によって2つの地域マップが制作されてきました。
今回、田部さんはその取り組みを引き継ぎ、海士町北部に位置する宇受賀(うづか)地区のマップ制作を担当しました。

まずは地区を知ることから始まったマップづくり

宇受賀地区のマップ制作にあたり、田部さんは「まずは地区について知ろう」と考え、実際に地区を訪れ、地域の方々と話を重ねました。その中で、田部さんは地域住民が集うグラウンドゴルフに参加するようになり、日常の交流を通して宇受賀地区への理解を深めていきました。

宇受賀地区は、島内でも田んぼが広がる風景で知られています。活動当初、田部さんもその「景色の美しさ」に強く惹かれていましたが、地域の方々との交流を通して、「この景色は、宇受賀の皆さん一人ひとりの記憶や思いの積み重ねによって形づくられている」ということに気づいたといいます。

そこで、単に絶景スポットを紹介するマップではなく、地域の人々の思い出や物語を感じながら歩けるマップとして制作を進めました。

マップ制作で最も苦労した点について、田部さんは「デザイン」を挙げています。
「宇受賀地区の皆さんから聞いたお話を、どうマップで表現するか」「伝えたいことはたくさんあるけれど、文字が多すぎると手に取ってもらえないのではないか」。試行錯誤を重ねながら、地域の魅力が伝わる表現を模索しました。

田部さんが作成したマップは、現在観光協会により印刷手配が進められており、出来上がり次第、観光案内所の窓口に設置される予定です。

地域とのつながりが生んだ実習の成果

グローカルプログラムの最終報告会では、宇受賀地区のマップ制作を中心に、実習での活動内容や地域の方々とのエピソードが紹介されました。
受け入れ先である海士町観光協会からは、「積極的に活動する中で海士町・宇受賀の魅力を発見し、マップとして形に残してくれたことが嬉しい。地域に溶け込む力は、海外協力隊派遣中も必ず活きるだろう」とのコメントが寄せられました。
また、マップ制作に協力した地域の方からは、「いつも笑顔で活動していた姿が、周りにエネルギーを与えていたと思う」という声もいただきました。
会場からの「宇受賀地区で一番お気に入りの場所は?」という質問に対し、田部さんは「グラウンドゴルフで、地元の皆さんとお話ししている時間が一番好きです」と答え、「このマップが、海士町の方々と観光協会の“つなぎ目”になれたら嬉しい」とも語っていました。

海士町での学びを胸に、セネガルへ

海士町での実習を通して、何気ない日常の楽しさや、地域の人とのつながりの濃さを実感できたという田部さん。
一方で、自身の地元での暮らしを振り返る中で、「人に会いたいから場所を訪れる」のではなく、「物を買うこと」を重視した、物質的なつながり中心の生活をしていたことにも気づいたといいます。改めて地元に帰った際は、地域の魅力を発見していきたいと語りました。

海士町で過ごした時間は、地域の人々との出会いや学びを通して、田部さんにとって大きな力となりました。その経験は、これから向かうセネガルでの活動においても、必ず生かされるはずです。

海士町で培った視点と姿勢を胸に、新たなフィールドで挑戦する田部さんを、心から応援しています。

観光協会窓口で働く田部さん

作成した観光マップの表紙

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