【実施報告:山口県】2025年度 JICA中国・四国 教師海外研修 授業実践in山口県立防府西高等学校
2025.12.25
日本とラオスの太陽高度の違いについて、計算式を考える授業
2025年10月24日(金)、山口県立防府西高等学校3年生の選択授業「地学基礎探究」1限目・2限目にて、2025年度JICA中国・四国の教師海外研修プログラムに参加しラオスに渡航された神田橋知成先生による授業実践が行われました。
授業に出席した生徒39名は、2年生から地震・火山学、気象学、天文学、地質学などを学んでおり、今年度に入ってからは、日本ジオパークに認定されている山口県美祢市の「Mine秋吉台ジオパーク」専門家による出前講座を通して、秋吉台がジオパークに認定された歴史や産業との関わりについて理解を深めてきました。そして、神田橋先生は、夏休みのラオス海外研修を経て、これまでの授業に国際的な視点を盛り込むことによって、生徒の自然環境の多様性への理解がより深まると考えました。また、地球で起きている複合的な課題を解決するために、視点を変えてみることも学んでほしいと感じ、ラオスと日本の違いを地学の視点から科学的に説明する授業を計画されました。
1限目の授業では、山口県とラオスのカルスト地形を例に挙げ、様相が異なる理由をグループに分かれて考えました。グループ内で取り組む課題は3つあり、自分の得意分野を活かして担当を持ちます。数学が得意な生徒は、ラオスと日本の緯度を調べて太陽高度の違いを計算する課題A、社会が得意な生徒は、年平均気温と年間降水量、気候区分を調べて、主要産業や生活環境の特徴を分析する課題B、理科が得意な生徒は、岩石が化学反応を起こして風化する地域の特徴と、具体的な地域名を挙げる課題Cにわかれ、それぞれ調べ学習を行いました。そして、調べた結果を最初のグループに戻って、他の課題を担当した生徒に共有し、3点の関連性に触れながら、自然環境の多様性の要因について、一人一人が科学的に説明できるようワークシートに記入しました。
2限目は、今年の猛暑日数など、生徒一人一人が生活している中で地球温暖化が進んだと感じた最近の出来事を振り返りました。また、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が増加することにより、地球が受ける具体的な影響を考える際には、生徒から、豪雨や農作物の不作、台風の増加といった事例があがりました。そして神田橋先生は、ラオスと日本の地形や気候、暮らしの違いについて、現地で撮影した写真を用いながら防府市と比較して説明を行い、このまま地球温暖化が進行して気候変動が続けば、農業に従事する人々の暮らし・生活環境などにどう影響があると思うか、生徒に問いかけました。今後も神田橋先生の授業では、一人あたりの二酸化炭素排出量を比較しながら、具体的にどのような国が影響を受けやすく、どのような国が気候変動の要因を作り出しているのかなど、気候変動に潜む「格差」について考える授業が行われていく予定でます。
これからも、生徒の皆さんには神田橋先生の授業を通して、私たちが住む地球を守り、次世代に残していくために、1人1人が具体的にできることを考え、実践する視点を身につけていって欲しいと思います。
(報告:山口県JICAデスク)
ラオスと日本のカルスト地形の様相を比較
課題Aでは、計算式を用いて太陽高度を比較
課題Bでは、年平均気温と年間降水量の比較
課題Cでは、化学的風化とカルスト台地の形成メカニズムを調べる
ラオスと日本どちらの生活か考えながらカードを並べ替えている生徒たち
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