【開発教育支援事業:実施報告】ラオスでの学びを教室へ!-2025年JICA中国・四国 教師海外研修 授業実践報告会-
2026.03.31
JICA中国・四国センターが主催する「教師海外研修」プログラムにて、中国・四国地方の教員10名が2025年8月にラオス人民民主共和国を訪問しました。ラオスでは、現地で活躍するJICA海外協力隊員の活動現場を訪問し子どもたちと交流したり、JICAが実施しているプロジェクトの現場や国際協力の取り組みを視察しました。帰国後は、ラオスで考えたことや、現場で感じた想いを日本の子どもたちに伝えるためにそれぞれの学校で授業実践を行いました。
2026年1月24日(土)には岡山市内にて、各自が実践した授業の内容や成果、児童生徒の変容などについての内部報告会を、翌25日(日)には広く一般の方々を対象に、実際に研修参加教員自身が実施した授業を模擬的に行う公開型の報告会を実施しました。
ラオスで同じ場所を訪れ、同じ話を聞き、同じ経験をしても、校種・学年、担当教科などによって先生たちが着目したテーマや課題はそれぞれ異なっていました。しかし、現地での多くの体験から、児童生徒たちに何を伝えたいのか、どのような方法なら伝わるのかを悩み、熟考されたのは参加教員全員共通だったようです。ラオスの現状を知って終わり、ではなく、児童生徒の主体的な学びを促すためにはどうしたらよいか。先生方それぞれが工夫を凝らした授業実践の様子を共有してもらいました。
ある小学校の先生は、自身が関心のあった「水問題」をテーマに授業を行いました。ラオスでは地域によって安全な水を安定的に使うことが難しい現状があります。研修で訪問した村の人々が濁った雨水を生活用水として利用している話に、児童はとても衝撃を受け、強い関心を示したようです。授業では、日本では当たり前に使っている水が実は貴重な資源であることをSDGsの目標と関連付けながら、自分たちにできることは何か?を考えたそうです。具体的なアクションを考える活動を取り入れることで、自分たちの日常や学校生活を見直すきっかけとなった、と報告されました。
また、ある中学校の先生は「不発弾」をテーマに授業を行いました。ラオスには、50年以上前のベトナム戦争の影響により現在も多くの不発弾が残されており、今もなお農業や人々の安全な暮らしを妨げる大きな要因となっています。はじめは「大変そうだ」「かわいそう」という素朴な感想を述べていた生徒も、学習を進めるうちに「なぜその状況が続いているのか」「どのような支援が必要なのか」と問いを発展させ、構造的に課題を捉える姿が見られたといいます。
授業を考える上で、先生方は「扱うテーマはあくまで『自分』が感じたラオスである」ことを意識されていたようです。児童生徒には、授業で聞いたことがラオスの“すべて”ではないということをふまえて、ラオスの様々な課題を「ジブンゴト」として考えてほしい、と多くの先生が目標を掲げていました。そして、教員が教師海外研修で得た経験や気づきを、児童生徒に単なる知識として伝えるのではなく、学習者自身が考え、行動につなげていく学びへと発展させることの重要性を、先生方は再認識されていたようでした。
三者三様の授業実践の仕方に、先生方はお互いに刺激を受けたようです
授業を受けた児童の反応(成果物)を紹介しながら発表してくれました
児童生徒になりきって、授業の一部を体験しました。
1月25日(日)には、教師海外研修での経験や授業実践の内容を広く一般の方々にも知っていただくため、公開型の報告会を実施しました。今年度のラオス研修に参加された先生方は、中四国各地から参加された学生や教員、教師海外研修の過去参加者を前に、現地での学びや授業実践の成果を発表しました。
はじめに、7名の先生方がラオスの国の概要や研修で訪問した場所などを説明しました。その後、報告会参加者にもラオスを取り巻く現状や開発途上国の課題、外国と日本とのつながりを考えてもらうため、小学校・中学校・高校の教員による多様な実践成果を模擬授業形式で報告しました。
最初に登壇した高松市立円座小学校の四宮健先生は、「自分たちのあたりまえ」を問い直すきっかけ作りとして自身が考えたアクティビティを紹介しました。参加者は配られたカードの役柄に成りきり、飲食や服装の考え方が異なるというシチュエーションを疑似体験する中で、自分とまわりの人との「あたりまえ」は異なるということ、多様な価値観が存在する社会で大切にしなければいけないことなどについて、理解を深めていきました。四宮先生は「多文化共生」や「多様性」といったキーワードにも触れながら、実際の授業の様子や児童の変容についても報告されました。
道徳科の授業を国際理解と関連付け、自身の専門科目である社会科と掛け合わせることで、生徒自身の価値判断を深める授業を展開したのは、徳島県神山町神山中学校の塚本拓也先生です。この日は生徒たちも実際に取り組んだ、ラオスの課題をふまえて現地での新たなODA(政府開発援助)プロジェクトを考えてみる、という授業を紹介しました。実際の授業では、「ICT×教育×給食」プロジェクトや「通信網の整備」といった、中学生ならではの視点を取り入れた多彩なアイデアが出たようです。また、生徒は後日JICAラオス事務所のスタッフに自分たちのアイデアを発表し、フィードバックを受けたことで、「なぜこのような課題があるのか」「なぜこのプロジェクトが必要なのか」といった具体的な問いを持つようになり、主体的に考える力の育成につながった、と、塚本先生は話してくれました。
高校の部で模擬授業を行った山口県防府西高等学校の神田橋知成先生は、理科、特に地質学が専門です。ラオスでの学びを活かした授業を、自身の担当教科の中で実践されましたが、国際的なテーマと関わりの少ない理科の時間に、生徒たちの関心や学びを促す授業をどう展開するか、苦労されたそうです。そのような中でもラオスで撮影した山や空といったリアルな写真を提示することで、生徒の興味を引き付けたそうです。普段理科で学んでいる知識や現象とラオスの風景を比較することで、生徒が自分自身で気づきを得られるように工夫を凝らした授業について、ワークシートや資料を提示しながら発表されました。
今回の報告会では質疑応答やグループ内での意見交換が活発に行われ、報告会に参加された方にとっても大きな学び合いの場となっていました。さまざまな形の授業実践に触れることで、この報告会にご参加下さった教育関係者の方にとっては、ご自身の授業づくりのヒントにもなったのではないでしょうか。
2025年度JICA中国・四国教師海外研修はこの日ですべてのプログラムが終了しましたが、ラオス研修で多くの気づきと学びを得た10名の先生方が、これからも世界と地域をつないでくれることを、そして子どもたちの未来を切り拓く力を育組んでくださることを、心から期待しています!
(報告:島根県JICAデスク)
香川県高松市立円座小学校の四宮健先生
徳島県神山町神山中学校の塚本拓也先生
山口県立防府西高等学校の神田橋知成先生