【島根県:実施報告】島根県立松江東高校で「地域の魅力と課題を進路につなげて考える」出前講座を実施しました
2026.03.31
生徒の皆さんも地域の課題を自分事にして聞いてくれました
島根県立松江東高等学校にて、島根県JICAデスクによる出前講座「しまねでの活動を通して見えてきた地域の魅力と課題―高校生に気づいてもらいたいこと―」を実施しました。本講座では、様々な文化・地域との関わりの視点を土台にしながら、地域産業、観光産業、そして意外と身近な海外とのつながりという三つの軸から、島根の魅力と課題を見つめ直し、それを自分自身の進路や今後の学びにどう結びつけられるかを高校生の皆さんと一緒に考えました。
講座の冒頭では、「島根は住みやすいか」「地域の課題は自分の進路にも関係があるか」といった問いを用いたアイスブレイクを行い、同じ地域に暮らしていても、見えている景色や感じ方が一人ひとり異なることを確かめました。そのうえで、違いを対立としてではなく、問いや学びの入口として受け止めることの大切さを共有しました。異なる文化や多様な考えを受け入れる姿勢は、特別な誰かのためだけのものではなく、異なる背景をもつ人びとがともに暮らす地域社会を、よりよくしていくための視点であることを伝えました。
地域産業のパートでは、宍道湖のしじみ、出雲そば、石州瓦といった身近な例を取り上げ、私たちの暮らしの中にある商品やサービスが、製造、物流、販売、広報など、さまざまな仕事の連なりによって成り立っていることを紹介しました。また、人手不足という目に見えやすい課題の背後には、技能継承やルール共有、情報の見える化といった「伝わる仕組みづくり」の重要性があることにも触れました。その上で、やさしい日本語、図解、チェックリストなどを活用する、といった工夫は、外国人住民に限らず、初めてその分野に関わるすべての人にとって役立つ設計であることを説明しました。地域の産業振興とどんなバックグラウンドをもった人でも生きやすい社会づくりの視点は、実は深くつながっていることを知ってもらうことができたのではないでしょうか。
観光産業のパートでは、松江城、堀川遊覧、宍道湖の夕日、玉造温泉などの地域資源を例に、「なぜ価値があるのか」を自分の言葉で説明できることの大切さを考えました。観光は、接客だけでなく、情報設計、交通、デザイン、編集、発信など、様々な仕事が組み合わさる総合的な産業です。とりわけ市街地においては、移動方法の分かりやすさ、雨の日の代替案、案内文の読みやすさなど、「魅力がない」のではなく「届いていない」ことで機会が失われてしまう場面が少なくありません。講義では、こうした課題を「不便の発見」から「改善のアイデア」へと変えていく視点を共有しました。
講義の後半では、学校、スーパー、飲食店、介護現場、SNSなど、私たちの日常の中にすでに多様な人・モノ・情報が行き交っていることを確認し、「海外は遠い場所」ではなく「身近な暮らしのなかにある存在」として捉え直しました。異文化を知る、ということは特別な優しさの話ではなく、誰もが参加しやすく、情報にアクセスしやすく、安心して関われるように地域の仕組みを整えていくことでもあります。そのために必要なのは、語学力だけではなく、相手を理解しようとする想像力、短く分かりやすく伝える力、そして違う立場の人と一緒に考えていく力です。
本講義では一貫して、高校生活の中で培う「聞く」「要約する」「問いを立てる」「伝わる形にする」といった力が、地域の現場で大きな価値を持つことをお伝えしました。進路選択は、職業名を知ることだけではなく、自分の得意なことが地域や社会のどの場面で活かせるかを見つけていく営みでもあります。生徒の皆さんには、地域の魅力を言語化し、課題を問いに変え、小さく試して改善するという姿勢が、これからの学びや進路選択を豊かにしていくことを共有しました。
JICAは今後も、国際協力の現場で培われた視点や実践知を地域に還元しながら、次世代の学びにつながる機会づくりに取り組んでまいります。
(記:島根県JICAデスク)