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【海士町:実施報告】海士町で活動したグローカルプログラム修了生3名が帰国報告会を開催

2026.04.08

島根県隠岐郡海士町では、2022年1月よりJICA海外協力隊の派遣前研修「グローカルプログラム」(以下GP)を実施しています。

このたび、2023年7月から9月まで海士町でGP実習生として活動していた芦澤さん、岩井さん、夏目さん、3名の隊員が、2年間のJICA海外協力隊の活動を終えて、2026年3月5日、海士町へ帰国表敬に訪れました。報告会では、ガーナ、ブータン、マダガスカルそれぞれの民族衣装を身にまとって登壇しました。会場にはGP実習時代に交流のあった町民の方々などが集まり、派遣国で試行錯誤を繰り返しながら活動してきた3名の話に耳を傾けました。

「壊れるから使わせない」状況を打破。実践が生んだ学びの循環と心の変化

芦澤 和(あしざわ わたる)さん:派遣国:ガーナ共和国/職種:PCインストラクター
芦澤さんが配属されたのは、全校生徒2700人を抱えるガーナの公立高校でした。ICT教育が推進されているはずの現場でしたが、授業担当の先生たちは「生徒が壊すから」という理由でパソコンを触らせずに授業を実施しており、せっかくの機材が宝の持ち腐れとなっていたそうです。
芦澤さんは実際に生徒に触らせ、実習中心の授業を展開しました。すると、最初は騒がしかった生徒たちが集中し始め、自発的な質問が飛び交うようになりました。早く課題を終えた生徒が他の生徒を助ける「教え合い」の循環も生まれ、教室の空気は一変しました。
学校が半年間休みになるガーナ特有の長期休暇中は他校を巡回してICT教育をサポートしたり、動画教材を作成したりしていたとのこと。なかには、訪れた学校の指導者が不在で自分が教壇に立って教えることもあったそうです。
芦澤さんは海士町と海外協力隊、二つの活動を経て、「新しいことに挑戦する抵抗がなくなった。人と人とのつながりが次のチャレンジを後押ししてくれると確信できた」と、自身の成長を振り返りました。

国家課題への挑戦。遠く離れた地でも、心は常に海士町と共に

岩井 厚樹(いわい あつき)さん:派遣国:ブータン王国/職種:コンピューター技術
ブータン農業省に所属した岩井さんは、若者の海外移住による農業の衰退という国家課題に対し、政府が進める「スマート農業」のテコ入れを技術面から支援しました。
ブータンでの任期中、岩井さんは常に海士町とのつながりを大切にしていました。ブータン探究の一環で現地を訪れた隠岐島前高校の生徒たちとの意見交換や、現地の文化イベント「Japan Week」にて、ブータンに派遣されている海士町とゆかりのある隊員たちや、現地ブータンの方たちと海士町名物「キンニャモニャ踊り」を披露しました。
岩井さんは自身の変化を、「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態や、ままならない状況を抱え直す力)の幅が広がった」、 「“最短・最速・最適解”を求める姿勢から、たとえ遠回りであっても、地域の人々に寄り添う道を選べるようになった」と語ります。日本から遠く離れたブータンの地にあっても、海士町での経験を指針とし、町との縁を途絶えさせることなく活動を続けた2年間でした。

「黒子」として支えた教育現場。混乱する社会で見出した「教育」の使命

夏目 明咲(なつめ あさき)さん:派遣国:マダガスカル共和国/職種:青少年活動
マダガスカルの教育事務所に所属し、地域の小学校や保育園を巡回した夏目さん。そこには、教員1人が50人の生徒を教えるのが当たり前という、教員の負担が重い現実がありました。夏目さんは海士町でのGP実習で学んだ「自分が黒子になって地域を盛り上げる」という姿勢を胸に、直接指導するだけでなく、先生方をサポートしながら「未来への種まき」に徹しました。2年目には子どもたちが主体となって授業を進めるまでになり、海士町と現地の学校を結ぶオンライン交流会も実現させました。
しかし、活動の裏側では過酷な現実にも直面しました。現地滞在中に大統領選挙が行われ、目の前で激しい暴動やデモが勃発。「なぜこんな理不尽なことが許されるのか」と、社会の不当さに激しい憤りを覚えたといいます。 この理不尽さを打破するには改めて未来を育てる子どもたちへの教育が重要だと強く思ったそうです。2年間の活動を通して、「子どもたちに夢や目標を持つことの大切さが伝わっていれば嬉しい」と発表を締めくくりました。

つながり続ける「海士町」と「世界」

報告会には、海外協力隊員たちと直接は面識のない町民の方も多く足を運んでくださりました。会場を訪れたある方は、「(GP実施時代の)夏目さんの活動を知っている人から、夏目さんがいかに頑張っていたかという話をたくさん聞いていました。今日、ようやくご本人に会えてうれしいです」とコメントを寄せてくれる場面もありました。

2年間の海外活動を終え、3名はこれからそれぞれの場所で新たな一歩を踏み出します。海士町で培った地域への寄り添いと、協力隊活動で得た多角的な視点を糧に、次のステージでも活躍し続けることが期待されます。海士町という共通の拠点を持ちながら、3名の挑戦はこれからも続いていきます。

議会会場で発表する3名

報告会には多くの方たちが参加してくれました。

当時の活動場所でお帰りなさい会を実施

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