【島根県海士町:実施報告】JICA海外協力隊グローカルプログラム修了生2名が海士町へ帰国報告 ~ソロモン諸島とブラジルでの活動を振り返る~
2026.06.16
島根県隠岐郡海士町では、2022年1月よりJICA海外協力隊の派遣前研修「グローカルプログラム(GP)」を実施しています。
このたび、2023年10月から12月まで海士町でGP実習生として活動していた鰕名拓也(えびな たくや)さんと久保田修世(くぼた しゅうせい)さんの2名が、2年間のJICA海外協力隊としての活動を終え、2026年5月28日に海士町を訪問しました。帰国報告会では、それぞれの派遣国であるソロモン諸島とブラジル連邦共和国での活動や現地での暮らしについて報告を行いました。
ソロモン諸島でPCインストラクターとして活動した鰕名さんは、首都ホニアラにあるドンボスコ職業訓練校に配属され、工業系学科の学生にAutoCADやパソコン操作を指導しました。
現地ではパソコンのキーボードやマウスが不足しているなど、日本の職場とは異なる環境に直面した上、赴任当初は現地の言葉でのコミュニケーションにも苦労する場面もあったといいます。そのような中、授業ではプロジェクターを活用し、画面に操作手順や図面を映し出すことで、言葉だけに頼らず指導を行うことができたといいます。また、Excelの関数を教える以前に、基礎的な計算力が十分でない学生がいることに気がつき、一人ひとりの実情に合わせて指導内容を工夫しました。
報告会では、ツナ缶が日常的に食べられていることや、信号機の代わりに円形交差点のラウンドアバウトが設置されていること、ビートルナッツを噛む文化など、現地ならではの暮らしについても紹介されました。さらに、当日は、ソロモン諸島の正装として親しまれている「アイランドシャツ」を着用して報告を行いました。このシャツは、学校での授業や式典など、さまざまな場面で着用されているそうで、衣装からも現地の文化を紹介する一幕となりました。
活動を振り返り、鰕名さんは「海士町でのGP実習中は自分のやりたいことを中心に考えていたが、ソロモン諸島では現地の人たちと同じ目線で生活し、同じことを経験したいと思うようになった」と語りました。一方で、「もっと自分から挑戦してもよかったかもしれない」と振り返る場面もありました。
ブラジル・サンパウロ州のイタペチ農事文化協会で地域住民の方に向けたバドミントン指導の隊員として活動した久保田さんは、週6回のバドミントン指導に加え、学校やイベントで体験会を開催し、競技の普及に取り組みました。
ブラジルはスポーツが盛んな国として知られていますが、バドミントンの知名度は依然として低く、競技自体を知らない人も少なくないといいます。そのため、久保田さんは競技指導だけでなく、まずはバドミントンを知ってもらうことを目的とした普及活動にも力を入れました。
活動の中で苦労したことの一つが、子どもたちとの向き合い方でした。練習前にその日のメニューや練習の狙いを説明しようとしても、最後まで話を聞かずに練習を始めてしまう子どもたちも多く、指導方法に悩むことがあったそうです。そうした中でも粘り強く指導を続けた結果、指導に通っていた小学校の体育授業にバトミントンが取り入れられるようになりました。バトミントンの知名度が高くない地域において、学校教育の中で継続的にバドミントンへ触れる機会が生まれたことは、大きな成果となりました。
赴任当初は、車上荒らしや、防弾車の利用が必要であるといった治安面の話を耳にし、不安を感じることもあったそうです。一方で、日本人移住者の歴史が色濃く残る地域で活動し現地を知るようになると、神社や餅つき、灯籠流しなど日本文化に触れる機会も多くありました。病院などで日本語の表記を目にすることもあり、「ここは本当にブラジルなのだろうか」と感じることもあったと話しました。
報告会では、サンパウロ州には世界最大の日系コミュニティがあり、日本人移住の歴史や日系社会の現在についても紹介されました。日系ブラジル人の歩みを振り返る場面では、参加者も熱心に耳を傾けていました。 また、久保田さんが任地から持ち帰ったコーヒー豆の試飲やブラジルのお菓子も振る舞われ、参加者は現地の味を楽しみながら交流を深めました。
派遣期間中も、2人と海士町とのつながりは続いていました。
鰕名さんは、任地のソロモン諸島からオンラインで隠岐島前高等学校の生徒たちと交流し、現地での活動や暮らしについて紹介され、生徒たちにとって、海外で活動する協力隊員の姿や異文化での生活を知る貴重な機会となりました。
また、久保田さんはブラジルからコーヒー豆を海士町へ送って下さいました。その豆を挽いたコーヒーは、島内のイベントなどでふるまわれ、参加者にブラジルの味を楽しんでもらうとともに、久保田さんの活動を紹介する機会にもつながりました。
グローカルプログラムをきっかけに生まれた海士町とのご縁は、JICA海外協力隊として派遣されていた期間中も途切れることなく続いていました。今後も、それぞれの場所でご活躍されるお二人と海士町のつながりが続いていくことを楽しみにしています。
アイランドシャツで報告会を行う鰕名さん
ブラジルやソロモン諸島から持ち帰ったお土産たち
表敬訪問で大江町長に活動報告をする様子