jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

今月のオススメ図書

今月は、所蔵資料から2冊をご紹介します。

『これからの国際協力 私たちが望む未来のために』

高須直子、山形辰史 編

 ロシアによるウクライナへの侵攻やイスラエルとハマスの武力衝突、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大、深刻化する気候変動―激動する国際社会のなかで大きく変わっていく、これからの「国際協力」。私たちはどのような課題と向き合い、国際協力を通じて、どのような社会の実現を目指すべきなのでしょうか。
 本書では、「国際協力」を「貧しく脆弱な人々や支援を必要とする人々のために、そして持続可能で公正かつ包括的であり平和で繁栄した社会をつくるために、主に開発途上国や低所得国で行われる活動」と位置づけたうえで、暴力、貧困と不平等、保健と感染症、環境と開発、といったさまざまな課題を解説。国際協力の多様な担い手についても紹介し、協力の歴史と最近の潮流を踏まえて、未来を描きます。
 SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限まで、あと5年。2030年以降の新たな目標・ポストSDGsの議論も始まります。より「望ましい」社会を、すべての人が「自分にとって価値がある生」を生きられる世界をつくるための協力の形を、私たち一人ひとりが考えていくヒントになる一冊。

『脱成長と食と幸福』

セルジュ・ラトゥーシュ 著  中野佳裕 訳

 脱成長論の第一人者として著名なフランスの経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュによる、人新世の「幸福論」。際限のない経済成長と物質的な豊かさを目的とする社会は持続不可能であり、もはや近代の目標であった「最大多数の最大幸福」を生み出さなくなっているとし、幸福と食の観点から、「脱成長しながら豊かに食べてゆく」オルタナティブな社会、「節度ある豊かさ」で生きのびる技法について論じます。
 経済成長の飽くなき追求とグローバル化した過剰消費システムによって社会や地球環境にもたらされる多くの問題。「経済」から抜け出し、「限度の感覚」を取り戻す―脱成長が目指す自立共生的で持続可能な「節度ある豊かな社会」とは具体的にどのような社会で、いかにして実現されうるのでしょうか。
 「本当の富」とは。「豊かさ」とは。そして、「幸福」とは。「成長」の質や概念そのものが問い直されている今、山積する課題をあらためて認識し、社会のあり方を考えるきっかけを与えてくれる一冊です。