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今月のオススメ図書

今月は、所蔵資料から2冊をご紹介します。

『TAMPOPOの綿毛が風に飛んでいく ブラジルろう者「当事者主体」の奮闘の軌跡』

盛上真美、吉田憲 著

 JICAが開発途上国の発展のために行ってきた事業を振り返る「プロジェクト・ヒストリー」シリーズ。第41巻となる本書では、2008年から2013年までブラジル東北部ペルナンブコ州で実施された、NPO法人DPI日本会議による草の根技術協力事業「ろう者組織の強化を通した非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育」(通称TAMPOPOプロジェクト)の軌跡をたどります。
 貧困地域であり、障害を持つ人の割合が高いペルナンブコ州。保健・セクシュアリティに関する教育を受ける機会や正しい情報へのアクセスが限られている障害者が健康上のリスクにさらされるなか、国際的な障害当事者団体DPI(Disabled Peoples’ International)の日本国内組織であるDPI日本会議は、ろう者(聴覚障害者)をはじめとする非識字層の障害者へのHIV/AIDS予防啓発活動を開始します。
 活動の担い手となるのは、ろう者自身。現地のろう者グループが自ら研修を受け学んだ内容を「当事者」の目線で工夫してわかりやすく伝える取り組みは画期的なプロジェクトとして注目を集め、たんぽぽの綿毛が風に乗って飛んでいくように広がっていきました。
 「当事者主体」であることを大切にし、プロジェクトマネージャーとして障害当事者のエンパワメントに奮闘した盛上真美さんの熱い想いが綴られた一冊。

『わたしたちの地球と気候変動 過去を知り、未来を守る』

森田香菜子 監修  ミヤタジロウ、デュフォ恭子 絵

 ゲリラ豪雨に極端な大雨、記録的な台風、干ばつ、洪水、猛烈な熱波や寒波―世界各地で頻発する異常気象とそれに伴う災害。地球温暖化の進行が一因とされる気候変動によって、自然環境や私たちの暮らしに深刻な影響が現れはじめています。温暖化と気候変動はなぜ起こり、このまま進むと地球はどうなってしまうのでしょうか。どうすれば、私たちの未来を守ることができるのでしょうか。
 本書は、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2021~2023年に発表した「第6次評価報告書」を踏まえて、イラストとともに気候変動をわかりやすく解説する科学絵本。地球の気候の歴史や温暖化の理由、気候変動の具体的な影響などを見ていきながら、気候変動を抑えたり、懸念される負の影響を減らしたりする方法、また国や地域、企業、そして私たち一人ひとりが担う役割についてといった、これからの社会のあり方を考えます。
 すべての生きものが安心して暮らせる未来ために。早急な取り組みが必要とされる気候変動の問題に関心を持ち、「自分ごと」として考えるための一冊です。