JICA 大学生インターン日記(2)

陶芸で世界をつなぐ

 2月20日-29日にかけて草の根技術協力事業『ベトナム国バクニン省フーラン村陶器生産者生活向上計画』の本邦研修が行われました。今回は2月27日(火)の「現地の食材を活かした料理と料理に合わせた陶器の使い方学習」において福岡県東峰村での視察に同行し、ベトナムからの研修員と有限会社鬼丸雪山窯元の鬼丸代表にお話を伺いました。

鬼丸さんにとっての国際協力事業「材料とヒト」
 日本で最も美しい村の一つである東峰村は小石原焼き、高取焼で有名です。一方、ベトナムのフーラン村は水瓶や甕具などの伝統的な陶芸技術をもっています。しかし、フーラン村には独自の原材料や陶芸技法がありながらも大量生産・消費がすすみ、その価値が十分に評価されていないのが現状です。鬼丸さんは本プロジェクトにおいて、原材料やそこから作られる陶器の貴重さを気づかせ価値のあるものとして普及させることを目標としました。また、国際協力において信頼関係を構築することも大切で、本プロジェクトもベトナムと日本との交友関係に良い影響を与え現地のメディアでも紹介されたそうです。

日本の職人作

ベトナムからの研修員作

 その中でも今回の「現地の食材を活かした料理と料理に合わせた陶器の使い方学習」では私たちの暮らしに必要不可欠な食文化と陶器との結びつきについて学びました。九州の料理人の方々と調理をし、彩りや余白を考えながらそれぞれの料理に合った陶器に盛り付けをしました。

料理人の盛り付けを見つめる研修員たち

 今回インタビューをさせていただいた研修員は、フーラン村で陶芸を始めて8年になるPham Van Tuanさんと陶器の販売店を営んでいるLyさんです。

調理をするPham Van Tuanさん(左から2番目)とLyさん(右)他

このプロジェクトに参加したきっかけは何ですか?
 ―フーラン村にも伝統的な陶器がありますがお米を入れる壺や装飾として置くもののようにどれも大きくて、日常的に使える小さな器などがあまり作られていません( Pham Van Tuanさん)。日常的に気軽に使用できる大きさのものを普及させて、日本の陶器のようにフーラン村でも高級品としての価値を見出したいと考えました( Lyさん)。

ベトナムで長年陶芸をされているとのことですが、日本で何か違いを感じましたか?
 ―ベトナムでは個人で取り組みますが、日本では専門家がチームになって行っているのが印象的でした。また、フーラン村では地域で展示会をすることがないため自分の作品を客観的にみてほかの人のアイデアを取り入れることが難しいです。展示会の開催によって作品や意見を共有することができるはとても良いことだと思います。また、一般の方に向けても公開することで陶器を広められますし、陶芸家にとっても良い刺激になると考えます( Pham Van Tuanさん)。

今後本プロジェクトで学んだことをどのように活かせると思いますか?
 ―当初は小さい器、高級品としての陶器を作るための技術を学ぶことを期待していました。しかし実際にこのプロジェクトに参加して陶芸技術だけではなく料理との深い関係性についても学びました。色や使用目的に合わせた陶器を作成・使用することで特別な価値が生まれることに気が付いたので、ベトナムに帰ってもこのことを心がけようと思います( Lyさん)。また、今回参加していないフーラン村の人にはまたの機会にぜひ参加してほしいですね( Pham Van Tuanさん)。

料理人を参考にして盛り付けをする研修員

 研修員の方にお話を伺ったのは初めてだったのですが、JICAの国際協力事業では人材育成の面で大いに貢献していることを実感しました。日本から現地に出向いて研修を行うことも重要ですが、本邦研修として現地の人に日本を訪れてもらうからこそ伝わる日本の職人の働き方や意識を研修員がしっかりと読み取って集中していたのが印象的でした。「ベトナムに来たら私たちのところに遊びにおいで」と言ってくださったのでいつか訪問して本プロジェクトを通しフーラン村の陶芸文化がどのように変化するのかを拝見したいです。陶芸という新しい観点からの国際協力で勉強になりましたし、日常の何気ないものでも誰かの問題を解決することができるかもしれないという可能性を感じました。

参考:「ベトナム国バクニン省フーラン村陶器生産者生活向上計」事業概要
事業提案書要約

(JICA九州インターン:佐竹結)