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- スポーツ×地域×国際協力 への思い:ロアッソ熊本 古賀亮様へのインタビュー
【新入職員 国内OJT熊本出張インタビュー(1)】
[古賀亮さん(写真中央)プロフィール]
大学卒業後JICA海外協力隊(当時は青年海外協力隊)に参加し、1998年~2000年に稲作隊員として、2001年~2002年には村落開発普及員としてコートジボワールにて活動。また、2003年~2005年には村落開発普及員としてニジェールにて活動。その後、サッカーだけでなく地域をスポーツの力で盛り上げていこうという、Jリーグの理念に共感し、アスリートクラブ熊本(以下、ロアッソ熊本)に入社。現在はロアッソ熊本のホームタウン推進部部長として、チームのリソースを使い地域課題の解決に取り組まれている。
JICA海外協力隊をご経験後、地域の多文化共生など様々な地域貢献活動に取り組んでいらっしゃるロアッソ熊本の古賀亮さんに、JICA新入職員4名がインタビューさせていただきました。ロアッソ熊本での活動について、協力隊時代の思い出について、古賀さんにお話しいただきました。
【ロアッソ熊本の活動について】
—はじめに、ロアッソ熊本が行っている社会貢献活動について教えてください。
JICA九州と共同して、熊本県内に在住の外国人を試合観戦に招待するイベントを行いました。在住外国人の地域理解や異文化理解の促進に加え、多文化共生について展示を行ったり、多国籍料理の屋台を出店したりして、来場者に多文化共生について関心をもってもらうきっかけとなりました。
その他には、「フードドライブ」という取り組みを行っています。ロアッソ熊本の試合を観戦しに来られる方々に、家庭で余っている食材を持ち寄っていただき、子ども食堂など支援が必要な人に届ける取り組みです。
また、「ロアッソ・ウェルネス・プログラム」も実施しています。50歳以上の方々を対象に、運動機能や健康意識の向上、運動習慣・仲間づくりの場を提供することを目的とし、参加者が選手とともにウォーミングアップからトレーニングまで行います。これまでの介護予防のイメージを変える新しい健康プログラムであり、このようなプログラムへの参加者は大多数が女性であることが多いですが、ロアッソ熊本が参画することで、サッカーを入口として多くの男性にもご参加いただいています。
—活動において、地域への貢献が重視されていると感じました。地域貢献へのモチベーションについて、お話いただけますか?
ロアッソ熊本は、地域で育ってきたチームなので、地域に還元しようという思いはもともとあります。プロ野球と同様に、地域貢献はJリーグのチームにとって当たり前になっていて、例えば鹿児島ユナイテッドFCによるウミガメの保護活動や、大分トリニータによる農業体験交流会など、様々な地域貢献活動を行っています。その効果でスポンサーがついたり、新たなファンを開拓できたりと、チームへのメリットもあります。
【JICA海外協力隊時代について】
—古賀さんは大学卒業後すぐにJICA海外協力隊に参加されていますよね。新卒で協力隊に挑戦しようと思われたのはどうしてですか?
中学高校時代、テレビでエチオピアの飢餓問題の特集を見て、飢餓問題に対して農業分野で貢献したいと思い、大学では農学部へ進学しました。そこで、大学の先輩からJICA海外協力隊の存在を教えてもらい、就職活動の際は海外協力隊一本で考えていました。農業改良普及員の資格を取得し、現場で農作業ができるゼミを選び、4年生時には西表島で熱帯稲作の研究を行い、卒業論文を書きました。
—JICA海外協力隊時代に、心に残っている思い出はありますか?
「貢献したい!」という気持ちを持って赴任先に行ったところ、「お前は研修生だろ」と言われたことが印象に残っています。赴任地で適応するためには、自分に折り合いをつけることが重要だと思います。挫折もしましたし、「こんなはずじゃなかった」と思ったこともありますが、100年以上も続いている現地の人の生活を変えることは、少し来て暮らしただけの人にはできません。協力隊の同期との手紙のやり取りの中で、このような経験や教訓を綴って、お互い励ましあっていました。同期とのつながりに救われていたと思います。つながりの大切さに気が付いたり、やれることから取り組む姿勢が身についたりと、非常に重要な経験になりました。
【古賀さんの思いや活動のモチベーション】
—社会貢献活動には、多くの人の協力が必要だと思います。古賀さんは周りをどう巻き込んでいらっしゃいますか?
「巻き込む」は後からついてくるのだと思っています。いきなり大きなことはできません。始めるときには、やれることから小さく始め、活動を発信していると、賛同した方から連絡をいただけるようになります。小さなことから始めること、発信していくことは重要かもしれません。
—国際協力におけるスポーツの役割について、どのようにお考えですか?
スポーツの特徴として、切り口がわかりやすいこと、多くの人を巻き込みつなげる「アンプとボンド」の効果があることがあると思います。協力隊で派遣されていたコートジボワールもサッカー大国でした。途上国との関係づくりのきっかけにもなりますよね。
問題の本質的な改善に至らないという点についてはもやもやする気持ちもありますが、ぼくたちはサッカー屋さんなので、ぼくたちに解決できなくても、国際協力への気づきとなるきっかけを作り、人と人を繋ぐことができると思います。
また、持続可能性が無いとサッカーもできないので、地域の活力を高める多文化共生は長い目で見ても重要だと思っています。
ロアッソ熊本の事務所は、貴重な品々の宝庫でした!
【新入職員からの感想】
・地域の方々に愛されるチームづくりに真剣に取り組まれているお姿がとても素敵でした。介護予防の体操プログラムを企画しても通常では介護予防に興味がある方しか集まらず、本当に必要な方に参加してもらえない中、サッカーチームがそれを主催することでサッカーを入り口に興味を持って参加する人が増えるというお話がとても興味深かったです。これは国際協力にも通じるところがあり、スポーツやアートはなかなか国際協力の協力内容として主流にはなりづらいものの、その反面国際協力に関心を持ってもらうきっかけになりうるものです。とても勉強になりました。貴重なお話をありがとうございました。(磯野:企画部 総合企画課)
・大きなことはできなくても、小さなことをひとつずつ積み重ねていく。アートもスポーツも、根本的な問題の解決にはならないかもしれないけれど、様々な人に興味をもってもらうきっかけになる—そんな古賀さんの言葉に勇気づけられました。私も目標をもって、小さなことを大きく繋げていきたいと思いました。(岸野:人間開発部 保健第一グループ 保健第一チーム)
・古賀さんのお話を伺い、「協力隊経験の社会還元とは何か」と改めて考えさせられました。協力隊経験の社会還元と聞くと、起業などキラキラすることを想像しがちでしたが、古賀さんの地域への貢献も、協力隊経験の社会還元の一例として無視できないと思います。(長谷川:青年海外協力隊事務局 参加促進課)
・古賀さんのスポーツチームにとって、地域の力、地域に応援してもらうことが重要で、地域で生活する外国人との繋がりも重視しているという話が印象的でした。青年海外協力隊を経験し、長年スポーツをされてきた古賀さんだからこそのお仕事をされていて、また大変素敵なお人柄でファンも多いと伺い、私もしっかり仕事に励みながら応援されるような人になりたいと思いました。(山﨑:国際緊急援助隊事務局 緊急援助第二課)
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