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JICA九州 大学生インターン潜入レポート(5)

~教師海外研修事後インタビュー~ 福岡市立福岡きぼう中学校 明石浩司 先生

こんにちは!
JICA九州センター大学生インターンの中村有李です。
何度かの事前研修を経て、8月10日から8月17日にかけてベトナムで行われた教師海外研修。帰国後の先生方にインタビューさせていただきました!

▽今回インタビューさせていただいたのは?

福岡市立福岡きぼう中学校 明石 浩司 先生

1.教師海外研修に参加した理由やきっかけ、今回の研修目標は何ですか?その目標は達成できましたか?
 私は社会科教員として、九州で初めて設立された夜間中学校である「福岡市立福岡きぼう中学校」に勤務しております。国籍や年齢を問わず、中学校で教育を受ける機会のなかった生徒に対して、毎日授業内容を工夫しながら授業を行っています。
 私はもともと国際協力に関心があり、開発途上国の発展に貢献したいという思いを抱いてきました。しかし、これまで実際にその経験をしたことがなかったため、思いを十分に伝えることができませんでした。また、社会科の授業の中でSDGsを取り扱うことが多いのですが、「人や国とのつながり」を実感する機会が乏しいと感じていました。そこで、これまで培った能力を活かす場を求め、自分の知識や技術を他国や地域の人々と共有することで、相互理解を深め、互いに成長できるのではないかと考え、今回の研修への参加を希望いたしました。

世界遺産の街・ホイアンのシンボル「日本橋」にて(前列左が明石先生)

2.研修中、印象に残っていることは何ですか? 
 どの地域もわたしたちをあたたかく出迎えてくれてとても感動しました。その中でも、ムオン族とカヨン族の皆様との交流は特に心に残りました。サイクリングで目にしたサトウキビ畑やザボンの実、アカシアの木々、道路脇で手を振ってくれた人々の姿は、大人の夏休みのような温かい思い出となりました。ムオン族の皆様からはドラの音とともに歓迎を受け、風通しの良い高床の家での食事やサトウキビジュースを楽しみ、家族のように迎えていただきました。カヨン族の村では、観光が始まって間もない中で、日常生活や子育ての価値観を伺い、村人が互いに支え合って暮らしている姿に心を打たれました。伝統舞踊やアクセサリー作りを体験し、たくさんの笑顔に囲まれた時間はかけがえのないものでした。
  この交流を通じて、地域の文化や暮らしを大切にしながら観光を取り入れるCBT(コミュニティーベースドツーリズム)の意義を実感しました。人々の温かさとおもてなしに深く感動するとともに、持続可能な地域づくりの大切さを強く感じました。

ムオン族の方々によるウェルカムゴングでの歓迎

カヨン族の民芸品づくり体験

3.研修に行く前と、行った後で変化はありましたか?
 ベトナムに行く前は、「フォーや生春巻きといった料理の国」という程度のイメージしかなく、どこか遠い国のように感じていました。ところが実際に訪れてみると、その印象は大きく変わりました。街のいたるところで日本の企業や製品を目にし、日本語を学ぶ学校や看板も多く見られ、ベトナムと日本の強いつながりを肌で感じることができたのです。
 最初に訪れたハノイでは、圧倒的なバイクの多さに驚かされました。信号が青になると、一斉に押し寄せてくるバイクの波。四方八方からクラクションが響き、街全体が生き物のようにうねっていました。初めはその迫力に戸惑いましたが、次第にそれもハノイの活気そのものの象徴だと感じられ、街のエネルギーにすっかり魅了されました。ダナンでは、ハノイとはまったく違う風景が広がっていました。きらめく太陽の下、どこまでも続く白い砂浜とコバルトブルーの海。波打ち際を歩けば潮風が心地よく、思わず時間を忘れてしまうほどでした。
 旅の途中で出会った人々の温かさも忘れられません。道に迷えば笑顔で案内してくれたり、食堂では片言の日本語で親しげに話しかけてくれたりと、どこに行っても人の優しさに触れることができました。
 にぎやかな街のエネルギーと、リゾート地の穏やかな風景、そして人々の温かい心。そのすべてが合わさって、ベトナムは「また必ず訪れたい」と思わせる特別な場所になりました。

バス車窓からのハノイ市内。多くのバイクが信号待ち

4.生徒たちに伝えたいことはどのようなことですか?
 今回の研修目標は、「ベトナムと日本(特に福岡市)との多様な関係に着目し、その特徴や課題を通して、社会科の一過性で終わらせないシステム思考を伴う『問い』を多くつくること」でした。ベトナムは日本とのかかわりが深く、「持続可能な社会の実現」を考えるうえで欠かせない国です。しかし、教科書にはほとんど取り上げられておらず、その学習機会は限られています。そこで、地理的分野では「ベトナムはどのように経済成長を遂げたのか」、歴史的分野では「江戸幕府の成立と対外関係の変化」の中で「ホイアンにあった日本人町で暮らしていた日本人の足跡は今も残っているのか」、公民的分野では「世界と協力する日本」の中で「JICAによってベトナムはどのように発展したのか」といった問いを今立てています。他にもまだまだ多くの問いができそうです。これにより、生徒が社会科により深く興味をもち、主体的に学ぶ姿につなげたいと思います。
 さらに、総合的な学習の時間においては「国際理解」をテーマに、ベトナムをはじめ多様なルーツを持つ生徒同士で意見交換を行い、それぞれの国の良さを再発見する機会を設けたいと思います。技術・家庭科の時間には調理実習でフォーをつくり全員で試食したりするなど、教科横断的な学習にも発展させたいと考えます。

ホイアン旧市街視察

5.この研修を一言で表すなら?
 ベトナムでの研修を一言で表すならば、「出会いの研修」 です。
 都市の活気と成長力、国際協力による教育・医療支援の現場、少数民族との交流、そして世界遺産としての歴史的景観との出会いを通じて、ベトナムという国をあらゆる面からとらえ、教育活動に活かせる視点を得ることができたと思うからです。

公立中学校での交流

ムオン族の村にてサトウキビジュースをいただきました

教師海外研修について詳しくは以下のリンクから↓

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