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JICA九州 大学生インターン潜入レポート(9)

~教師海外研修事後インタビュー~ 熊本県立熊本農業高等学校 鳥江太介 先生

こんにちは!
JICA九州センター大学生インターンの中村有李です。
何度かの事前研修を経て、8月10日から8月17日にかけてベトナムで行われた教師海外研修。帰国後の先生方にインタビューさせていただきました!

▽今回インタビューさせていただいたのは?

熊本県立熊本農業高等学校 鳥江 太介 先生

1.教師海外研修に参加した理由やきっかけ、今回の研修目標は何ですか?その目標は達成できましたか?
 JICA派遣経験のある先輩教師や、過去に教師海外研修に参加された先生方から詳しい話を伺い、ぜひ自分も参加したいと強く思い応募しました。これまで19年間、農業教科の教員として作物栽培や学校農業クラブ活動を通じて地域農業や産業人材の育成に携わってきました。近年、県内ではベトナム人技能実習生の受け入れが増加し、農業分野でも重要な担い手となっていますが、雇用側とのトラブルも見られ、相互理解の必要性を感じていました。また、TSMCの進出により国際的な人材交流が進む中、生徒たちが将来多国籍の職場で働く可能性も高まっています。今回の研修では、ベトナムの文化・農業・教育について理解を深め、生徒に国際理解の意義を伝えることを目指しました。実際に現地を訪れ、想像通りのベトナム、想像と異なるベトナム、そして想像を超えたベトナムを肌で感じることができ、体験することの重要性を改めて実感しました。

日越大学訪問(中段左から3人目が鳥江先生)

2.研修中、印象に残っていることは何ですか?
 特に印象に残ったのは、ダナン病院で家族が病院内で寝泊まりしている様子です。家族や親戚を大切にする国民性が強く感じられる場面でした。また、少数民族との交流では、伝統食や踊りなど、貴重な体験をすることができました。昔の日本を思い起こさせるような雰囲気があり、食材や味付けも日本風でとても美味しかったです。自然の中でのサイクリングも非常に気持ちよく、心に残る活動となりました。

ダナン病院での院内見学

病院関係者の方に話を伺う

3.研修に行く前と、行った後で変化はありましたか?
 現地の人々のエネルギー、大らかさ、柔軟な国民性から多くを学びました。同じニュースを見ても、外からの視点で日本を見るようになり、視野が広がったと感じています。また、マイノリティの気持ちについて体験を通して理解することができ、近隣に住む外国人にも自然と関心を持つようになりました。
 ベトナム料理が非常に美味しく、たくさん食べたにもかかわらず体重が減ったのは驚きでした。帰国後もハーブや野菜を好んで食べるようになり、近所のベトナム食材店で空心菜やヌックマムを購入し、家族に紹介しながら料理を楽しんでいます。ブラックコーヒーしか飲まなかったのに、甘いベトナムコーヒーを好むようになったのも大きな変化です。スーパーでは冷凍食品の生産地にも目が向くようになりました。

教材探しで訪れた書店で、親切な店員さんが案内してくれた

ハノイ市内の公立中学校での交流

4.生徒たちに伝えたいことはどのようなことですか?どのような授業を行う予定ですか?
 海外を知ることは、日本を知ることにつながります。特に、私たちの「食」は海外とのつながりによって成り立っており、そこから広がる学びは非常に多面的です。今後の授業では、ベトナムをはじめとする外国の農業や食文化を起点に、環境・文化・歴史・教育・SDGsなどのテーマを多角的に理解することを目指します。フォトランゲージや調べ学習を通じて問いを立て、自ら考える探究的な学習態度を育てていきます。また、栽培や交流体験を通じて、農業・食料生産と社会とのつながりを実感させるとともに、「豊かさ」や「幸せ」とは何かを考え、自分自身の生き方や社会のあり方に目を向ける機会を提供したいと考えています。食をきっかけに、その他の分野とのつながりを考えさせる授業を展開し、生徒たちが国際理解を「自分事」として捉えられるような教育実践を進めていきます。

少数民族の村で伝統料理をいただく

5.この研修を一言で表すなら?
 「見つめ直す」研修でした。研修中に自宅が豪雨災害で浸水被害を受け、家族は無事でしたが、対応に多くの時間と心を割くことになりました。そのため、研修内容を100%受け止めきれなかったことが悔やまれます。できることなら、もう一度最初から体験したいと思うほどです。今回の研修は、自分自身を見つめ直し、地域や日本を見つめ直す時間を持つことができた貴重な経験でした。この経験を、今後は地域や人のために活かしていきたいと思っています。

6.その他、感想や今後の展望など伝えたいことがありましたらお教えください。
 このような貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。今回の研修を通じて、ベトナムの農業や教育、生活、文化を実地に学び、来日する技能実習生の背景への理解を深めることができました。この学びを活かし、生徒には食を通じた国際理解を「自分事」として捉えられる授業を展開していきたいと考えています。今後は地域のベトナム人との交流や教員間での知見共有を通じて、国際理解教育の視点を広げ、生徒がグローバルな視点を持って未来を切り拓く力を育むことを目指します。

教師海外研修について詳しくは以下のリンクから↓

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